6.柱の設計 |
Q6−1. |
「荷重|偶発(レベル2地震動)」画面の「柱の塑性化」の設定は計算へどのように影響するのか |
A6−1. |
(1)「期待する」と「期待しない」
設計を行う上で、塑性化を期待する部位を「設計者」が決定する(明確にする)必要があるため選択としています。
水平変位の照査については両者で計算上の違いはありません。
(2)「許容しない」
ダム湖に架かる橋の橋脚のように地震後の点検や修復が著しく難しい場合を想定しています。
上記の(1),(2)より、現在はH29道示X(P.176)の図-解8.3.2と「荷重|偶発(レベル2地震動)」画面の「柱の塑性化」の選択より水平変位の制限値を決定しています。
最終的に適用される制限値は、計算書の「結果詳細|柱の設計(偶発(レベル2地震動)に対する照査)|結果一覧」の「δa」をご覧下さい。
・破壊形態が曲げ破壊型以外または柱の塑性化を「許容しない」としている場合
水平変位の制限値を式(8.4.1)の「δyEd」とします。
・破壊形態が曲げ破壊型かつB種の橋の場合
水平変位の制限値を式(8.4.2)の「δls2d」とします。
・破壊形態が曲げ破壊型かつA種の橋の場合
水平変位の制限値を式(8.4.6)の「δls3d」とします。
せん断力に対する照査では下記の通り制限値を決定しています。
・「期待する」:正負交番作用による補正係数ccを考慮した「Ps」を用います。
・「期待しない」又は「許容しない」:正負交番作用による補正係数ccを1.0とした「Ps0」を用います。 |
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Q6−2. |
「Pa≧khc・W」の照査が行われない |
A6−2. |
「Pa≧khc・W」の照査を行うことはできません。
H29道示では、H24道示以前の水平耐力による照査から水平変位による照査へ変更されました。
具体的には、要求される耐荷性能に応じて下記の照査を行います。
耐荷性能1(A種の橋)
δres≦δa(水平変位の照査)
Pres≦Psd(せん断力の照査)
耐荷性能2(B種の橋)
δres≦δa(水平変位の照査)
Pres≦Psd(せん断力の照査)
δR≦δRa(残留変位の照査)
構造細目(共通)
Pa≧0.4c2z・W(水平耐力の下限値照査)
ここに,
δres:水平変位(mm)
δa :水平変位の制限値(mm)
δR :残留変位(mm)
δRa :残留変位の制限値(mm)
Pres :せん断力(N)
Psd :せん断力の制限値(N)
c2z :レベル2地震動の地域別補正係数
W :等価重量(N) |
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Q6−3. |
杭基礎連動時において、「基礎の設計・3D配筋(部分係数法・H29道示対応)」側で偶発(レベル2地震動)に対するフーチング照査が行われない |
A6−3. |
杭基礎連動時は、「二柱式橋脚の設計計算・3D配筋(部分係数法・H29道示対応)」側で偶発(レベル2地震動)に対するフーチング照査を行います。
従いまして、基礎側で計算実行し、二柱式橋脚側の結果確認及び計算書でご確認下さい。
※「橋脚の設計・3D配筋(部分係数法・H29道示対応)」と仕様が異なります。 |
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Q6−4. |
柱ごとに上部工反力や分担重量を設定することは可能か |
A6−4. |
可能です。
本製品では、柱ごとの上部工反力やその他作用力、分担重量等の入力に対応しています。
<注意点>
震度連携時、ES・F3Dエクスポート時は、左右柱の水平変位は同一としてモデル化します。
従いまして、左右の上部工が別々に挙動する(振動特性が異なる)ようなモデルはサポート外となります。 |
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Q6−5. |
二柱式橋脚における柱の設計はどのような照査を行っているのか |
A6−5. |
本製品では、各柱を単柱としてそれぞれの作用状況に応じて下記の照査を行います。
■永続/変動/偶発(衝突)作用が支配的な状況に対する照査
・耐荷性能照査(限界状態に応じた曲げモーメント、軸力、せん断力に対する照査)
・耐久性能照査(内部鋼材の防食、部材の疲労)
■偶発(レベル2地震動)作用が支配的な状況に対する照査
・耐荷性能照査(水平変位≦水平変位の制限値、せん断力≦せん断力の制限値)
・Pa≧0.4・C2z・W(構造細目) |
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Q6−6. |
柱の耐力に大きな余裕があるかの判定が「Pa≦1.5khc・W」で行われていないようである。
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A6−6. |
「P≧1.5・khc・W」を用いて耐力の余裕判定を行う場合には、下記スイッチを「P≧1.5・khc・W」と設定して下さい。
・「考え方|偶発(レベル2地震動)」画面の「はり・フーチング・基礎|杭基礎プログラムとの連動時|柱の耐力に大きな余裕があるかの判定方法」
※初期状態では、「直接指定」として「荷重|偶発(レベル2地震動)」画面の設定を用います。
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Q6−7. |
柱のねじりモーメントに対する照査に対応しているか。
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A6−7. |
H29道示W(P.97)の解説Aより、柱のねじりモーメントに対する照査に対応しております。 具体的な照査内容につきましては下記をご覧ください。
・H29道示V(P.116)の(6)
・H29道示V(P.142〜)
柱のねじりモーメントに対する照査を行う場合は下記の項目を設定して下さい。
1.「荷重|永続/変動/偶発(衝突)」画面を開きます。
2.ねじりに対する照査を行いたい荷重ケース画面を開きます。
3.開かれた画面で「柱のねじり照査」をチェック(レ)します。
4.同画面で「上部工反力|RMt」で部分係数を考慮した値を入力します。
※ここで入力されたねじりモーメントを照査に用います。
5.「部材|柱帯鉄筋」が未確認状態(ボタンが赤表示)となりますので同画面でねじり「照査用設定」を入力して下さい。
※道示Vの5.4.1及び5.7.3で係数や幅及び高さが明確にされていない断面形状は設計者の判断により計算に用いる値を直接指定いただく必要があります。
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Q6−8. |
柱の設計(偶発レベル2地震動)でせん断破壊型の場合に総合判定がNGとなる。 |
A6−8. |
現在は、H29道示Xの下記の解説より、塑性化を期待した設計で、曲げ破壊型とならない場合は「NG」としています。
・(P.181)の下から5行目の解説
・(P.183)の(4)の解説
せん断破壊型を許容し「OK」と判定する場合は、下記の項目で柱の塑性化を「期待しない」としてください。
・「荷重|偶発(レベル2地震動)」画面の「柱の塑性化」
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Q6−9. |
柱の偶発(レベル2地震動)に対する照査において、柱基部に初期断面力(水平力、曲げモーメント)を作用させることは可能か。 |
A6−9. |
下記の予備計算機能を用いることで、初期断面力として曲げモーメントのみ考慮することが可能です。
1.「考え方|保有耐力法」画面の「柱(基本条件)|予備計算|軸力、モーメントを直接指定する」をチェック(レ)します。
2.「予備計算|軸力、モーメント」画面で基部(i=0)のモーメントを調整します。
※最終的に基部に作用する曲げモーメントの合計値を設定して下さい。
※水平力については対応しておりません。
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Q6−10. |
各照査に用いる上部工死荷重反力の入力方法について教えてほしい。 |
A6−10. |
「初期入力」画面の上部工死荷重反力RD」は両柱の合計値を設定します。
また、「永続/変動/偶発(衝突)」画面において、柱ごとの死荷重反力RDの入力を行うことができます。
なお、上記画面の入力値につきましては、永続/変動/偶発(衝突)及び偶発(レベル2地震動)の照査に共通して用います。
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Q6−11. |
柱のレベル2地震時のせん断照査において、せん断耐力を求めるときのせん断スパンの考え方を変更できるか。 |
A6−11. |
「考え方|偶発(レベル2地震動)」画面−「柱(基本条件)」タブ−「せん断耐力算出時|せん断スパン」で下記範囲を設定することができます。 ・基部から上部工作用位置 ・基部から橋脚天端
詳しくは、「考え方|偶発(レベル2地震動)」画面ヘルプの「・せん断耐力算出時」をご覧ください。
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Q6−12. |
「khmin」の入力は何に用いられるのか。 |
A6−12. |
「khmin」は、H29道示X4.1.6(6)の考え方を反映する場合に設定を行います。 計算上は、「kIh,kIIh」が「khmin」を下回る場合、「khmin」が適用されます。 ※震度算出との連携時は、震度側で算定された同一振動単位内の最大値が反映されます。 ※設計対象としている橋脚の「kIh,kIIh」をそのまま適用したい場合は、「khmin」を「0.00」として下さい。
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Q6−13. |
せん断照査に用いるScにおいて、軸方向圧縮力を考慮できるか。 |
A6−13. |
本製品では、H29道示W(P.80)(1)1)の下記の解説より、せん断照査において軸方向圧縮力の影響を考慮しておりません。 ・H29道示W5.2.7(1)1)解説:ただし、橋脚や橋台、フーチング等において軸圧縮応力度があまり大きくない場合は、簡略化のため、V編式(5.8.3)における第二項を零とし、軸方向圧縮力の影響を無視してもよい。
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Q6−14. |
荷重状態「1.0(D+L)」において、耐荷性能照査が行われないのはなぜか。 |
A6−14. |
荷重状態「1.0(D+L)」は、H29道示の下記の照査に用いる荷重状態としてご用意しているため、耐荷性能照査は行っておりません。 ・部材設計における耐久性能の疲労に対する照査(H29道示V(P.187 (2)) ・安定計算における基礎の変位の制限に対する照査(H29道示W(P.167) (3) 2)及び(P.201))
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Q6−15. |
偶発(レベル2地震動)に対する照査で、ひび割れ水平耐力が負となる警告が表示されるが問題ないか。 |
A6−15. |
死荷重のみが作用する状態で、計算上ひび割れが発生しているため警告としていますが、最終的な判断は設計者に委ねています。 例えば、上記のひび割れが有害なレベルと判断される場合は対策を行う必要があると考えます。 ※H24道示W(P.165)の(1)、H29道示W(P.97)の(4) 1)も参考にして下さい。
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Q6−16. |
柱に雪荷重(雪崩の影響による水平力)を考慮することは可能か。 |
A6−16. |
可能です。 例えば、橋軸方向に作用する雪荷重を考慮する場合は、下記の手順で設定を行ってください。 1.「荷重|オプション荷重」画面の「任意荷重、その他作用力を使用する(永続/変動/偶発(衝突)のみ)」をチェック(レ)します。 2.「荷重|水平方向任意荷重(橋軸方向)」画面にて、荷重種別を「SW」として雪荷重を設定します。 3.橋軸方向の該当する適用ケースをチェック(レ)してください。
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Q6−17. |
永続/変動/偶発(衝突)における温度差の影響TFの入力方法を教えてほしい。 |
A6−17. |
「荷重|永続/変動/偶発(衝突)ケース」画面の「上部工反力|入力方法」の設定に応じて下記の通り設定してください。
- 「詳細入力」
各ケース毎に「荷重|永続/変動/偶発(衝突)ケース」画面から開かれる「上部工反力詳細入力」画面で設定ください。
- 「一括入力」
「荷重|永続/変動/偶発(衝突)」画面−「上部工反力一括入力」で設定された「TF」が各荷重ケースに反映されます。
なお、各荷重ケース画面の「温度差の影響TF|作用方向」に応じて、自動的に正負を考慮した「TF」が反映されます。
- 下向き:正値
- 上向き:負値
- 「集計値入力」
荷重係数及び荷重組合せ係数を考慮し別途算定された上部工反力合計値をRex(必要に応じてRM)に設定ください。
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Q6−18. |
計算実行時に「警告:軸方向鉄筋比が2.5(%)を超える断面が存在します。」と表示される。 |
A6−18. |
H29道示X(P.184〜)を参考に、下記の条件に該当する場合は計算確認時に警告メッセージを表示するようにしております。
この場合の適用性(塑性ヒンジ長や水平耐力・水平変位の考え方)については設計者の判断となります。
- 軸方向鉄筋比が2.5%を上回る(塑性化の影響を考慮する領域の充実断面部のみ)
- 横拘束鉄筋比が1.8%を上回る
- 柱基部の軸圧縮応力度が3(N/mm2)を上回る
なお、H29道示X(P.184)の条文とH29道示X(P.190)解説文の10行目より、「適用範囲」と「実験的に検証されている条件」が異なっています。
この点について、どのような扱いにするか検討しました結果、範囲として規定されるものは、コンクリートの設計基準強度のように「21〜30」と記載されていると判断しています。
以上より、軸方向鉄筋比については、上限値2.5%を上回る場合にのみ計算時に警告を表示する仕様としています。
※H29道示X(P.190)14行目以降の解説も参考にしています。
「実験的に検証されているのは〜(中略)〜であるが、評価方法の適用範囲と示方書に規定されている材料の範囲を踏まえて、適用範囲を条文のように規定されている。」
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Q6−19. |
計算書の「柱の設計(偶発(レベル2地震動))|水平耐力及び水平変位|各着目点に作用する軸力、モーメント」の内訳について教えてほしい。 |
A6−19. |
「軸力」および「主荷重によるモーメント」の項目は、下記の荷重の集計値を表示しています。
■軸力
・柱の自重
・「荷重|永続/変動/偶発(衝突)」画面の「上部工|死荷重反力RD」
・「荷重|橋脚天端に作用するその他死荷重」による鉛直力
・「荷重|柱に作用するその他死荷重」による鉛直力
■主荷重によるモーメント
・「荷重|保有耐力法ケース」画面で設定している「上部工反力|死荷重偏心モーメント」
・「荷重|保有耐力法ケース」画面で設定している「上部工反力|死荷重水平力」によるモーメント
・「荷重|橋脚天端に作用するその他死荷重」によるモーメント
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Q6−20. |
「部材|帯鉄筋」画面−「主鉄筋が多段配筋(全周配置)時の帯鉄筋取り扱い」のスイッチが計算に反映されない。 |
A6−20. |
本スイッチは、全周2段配筋など、外周帯鉄筋が2本以上配置される場合に適用されます。 例えば、矩形断面で橋軸方向2段配筋、橋軸直角方向1段配筋の場合、橋軸方向2段目の帯鉄筋は「たな筋」扱いとなり、本スイッチは適用されません。 ※「たな筋」については上記画面ヘルプの「■中間帯鉄筋」の「たな筋については、こちらをご覧ください。」の「こちら」より開かれる項目をご覧ください。 ※「たな筋」の計算上有の扱いは、「部材|柱帯鉄筋」画面の「中間帯鉄筋|たな筋」で選択して下さい。
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Q6−21. |
永続/変動/偶発(衝突)照査における断面力の算出過程を確認したい。 |
A6−21. |
下記方法で、断面力算出過程を出力できます。 1.計算書「結果詳細」の「出力項目の設定」画面で、[詳細設定]ボタンを押下します。 2.「出力項目の設定(詳細)」画面で、「荷重ケース毎の断面力の算出過程を出力する」をチェックして下さい。
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Q6−22. |
偶発(レベル2地震動)の計算結果において、終局位置の判定が「OK(警告)」と表示されるのは問題ないか。 |
A6−22. |
本警告は、基部が終局状態に達するが、基部以外がひび割れ状態または降伏状態に達する場合に表示しています。 この場合、H29道示X(P.184〜)の考え方が適用できるか否かが不明なため、念のため警告としています。 計算理論及び結果への影響はなく、道示等の規定によるものでもありませんが、最終的な適用については設計者に委ねています。
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Q6−23. |
柱が塑性化しているかどうかの判定方法を教えてほしい。 |
A6−23. |
最大応答塑性率がμr>1.0となる場合に塑性化すると判断することができます。 μrは、計算書の「結果詳細|左柱の設計(偶発(レベル2地震動)に対する照査)」の下記項目で確認可能です。 ・「結果一覧」 ・「残留変位による判定(B種橋)」
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Q6−24. |
構造物特性補正係数csはどこで確認すればよいか。 |
A6−24. |
H29道示では、部分係数設計法による水平変位の照査への移行に伴い、抵抗側(水平変位の制限値)の各種係数でその影響が考慮されています。 そのため、補正係数csは計算しておらず、結果を確認することもできません。 併せて、下記の解説も参考にしてください。 ・H29道示X(P.180)(1)から(3) の3行目〜9行目 ・H29道示X(P.181)の下から9行目〜下から6行目
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Q6−25. |
水平変位の制限値の塑性率μls2dという結果があるが塑性化しているかの判定に用いるのか。 |
A6−25. |
μls2dは、橋脚の耐力に大きな余裕があるかの判定に用いる塑性率となります。 塑性化の判定には、一般に最大応答塑性率μrが用いられます。
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Q6−26. |
永続/変動/偶発(衝突)における偏心モーメントを直接指定したい。 |
A6−26. |
下記いずれかの方法で設定してください。
■偏心距離を指定する
1.「荷重|永続/変動/偶発(衝突)」画面より、各荷重ケース画面を開きます。
2.「上部工反力」の「詳細入力」ボタンを押下します。
3.開かれた画面で、鉛直力×偏心距離が偏心モーメントとなるように入力して下さい。
■偏心モーメントを直接指定する
1.「荷重|永続/変動/偶発(衝突)」画面より、各荷重ケース画面を開きます。
2.「上部工反力|入力方法」を「集計値入力」とします。
3.同項目の「RM」で偏心モーメントを入力して下さい。
※荷重係数及び荷重組合せ係数考慮後の値として下さい。
※一括入力の設定値は反映されないため、一括入力の荷重を含めた集計値を入力して下さい。
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Q6−27. |
曲げモーメントの制限値が「RC断面計算(部分係数法・H29道示対応)」と異なる。 |
A6−27. |
μls2dは、橋脚の耐力に大きな余裕があるかの判定に用いる塑性率となります。 塑性化の判定には、一般に最大応答塑性率μrが用いられます。
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