Q6−1. |
旧版と新版で、許容値の2倍の応力が発生しているが? |
A6−1. |
新版の『二重締切工の設計計算』は、設計マニュアルP.59から63に準じて、弾塑性法により断面力を算出します。この設計マニュアルのP.61下段にも記述の通り、旧版の考え方では実際の挙動と不一致が大きいとの指摘があり、弾塑性法を取り入れた旨が記載されています。よって、断面力が大なり小なり異なることは当然と考えるべきだと思います。
具体的に、設計マニュアルP.134の砂質土地盤の場合を例に、断面力が相当大きくなることについてレポートします。
▼旧版の場合
砂質地盤なので、一般的には、壁高の0.1H(0.1×8.0=0.8m)、よって、現地盤面から0.8m下方を仮想支点(G.L.−0.80)として、さらに、タイ材位置(G.L.+7.50m)を支点とする、スパンが約8.3mの単純ばりモデルで断面力を算出していた。
▼新版の場合
設計マニュアルP.145の計算結果からわかる通り、地盤バネの多くが塑性化し、結果的に先端付近の2.6mだけが弾性領域になっています。簡単に言えば、タイ材位置と弾性領域(弾性領域の1/2を支点と仮定)を支点とする、スパンが約13.7mの単純ばりモデルに近い状況で解いていると考えられます。
以上のように、単純ばりモデルの支点間距離が、新しい設計方法では、最悪の場合(地盤が全て塑性化した場合)、矢板先端付近と引張材(タイ材)位置となる場合も考えられることから、相応の断面力となることが十分予想されると考えられます。
余談ですが、設計マニュアルP.170には、2段タイとした場合の例が、P.134の検討例に、引き続き、検討されています。2段タイにすることで、はりモデル(2径間連続はりモデル)のスパンを狭める効果があり、結果的に、かなり断面力を抑えることを実現しています。このように2段タイ式構造にすることも、一つの対策かとも考えられます。 |
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Q6−2. |
弾塑性解析結果のバネ表示が、地盤面よりもかなり低い部分しか作用していない。地盤バネ設定について、教えて欲しい。 |
A6−2. |
弾塑性解析における地盤バネの扱いは、[ヘルプ]−[設計理論及び照査の方法]−[矢板曲げモーメント(弾塑性解析)の計算]−[弾塑性解析方法の説明]をご一読ください。基本的には、設計マニュアルP.61、62並びに仮設指針(道路土工)P.97などに示されている考え方に準じています。
設計マニュアルP.145の図1.8に弾塑性解析結果が示されています(当社提供のsample−P134で再現)。この図の弾性領域(2.6m)と示されている箇所が、ご質問と同様、地盤バネが有効に働いている箇所です。ここでも、かなり深い部分にわずかしか作用していないことがわかります。恐らく、このような傾向は、新しい設計方法では、多く見受けられるのではないかと思います。 |
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Q6−3. |
上段タイロッドの引っ張りが0となるが? |
A6−3. |
引張材の反力は、引張材をバネ支点とし、弾塑性解析から得られる支点反力です。
2段タイの構造モデルの場合、極端な場合(地盤バネが全部塑性化するなど)には、タイ材2箇所と矢板先端を支点とする2径間連続はりモデルになります。中央の支点が2段目のタイ材位置ということなります。このような場合、2段目引張材位置と矢板先端までのスパンが長いと、解析結果の変位状況にも見られる通り、2段目引張材位置と矢板先端区間で壁体が大きく外側にはらみ、2段目より上では、内側に変位するような変形になると考えられます。
恐らく、引張材のバネ特性として、引張に対しては無効(このあたりの考え方は入力画面のヘルプ参照)と考えますので、1段目が内側に変位(引張材として圧縮状態になり、機能せずに撓む状態)していることから、無効扱いとなり、反力はゼロとなります。ですから、解析モデル的には、結果的に、2段目引張材位置と矢板先端を支点とし、2段目より上が張り出している、いわゆる張出モデルに近い状況になっていると考えられます。
恐らく、設計マニュアルP.193の解析結果(表2.2 常時の高水時)も、このような状況で、上段のタイ反力がゼロで記述されているものと考えられます。よって、反力がゼロで評価されることは、十分考えられることだと思います。 |