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Vol. 22

VRについては、その後も多くの話題が集まっていますが皆さんは実感として「VRは確実に普及してきている」とお考えでしょうか?それとも、「思った以上に普及が遅れている」あるいは「機能的に進展がなく期待外れ」などネガティブな見方をされているでしょうか?

■執筆者 町田 聡(まちだ さとし)氏 プロフィール
アンビエントメディア代表 コンテンツサービスプロデューサー。プロジェクションマッピング、デジタルサイネージ、AR、3DメディアのコンサルタントURCF アドバイザー、(財)プロジェクションマッピング協会 アドバイザー。著書に「3D 技術が一番わかる」技術評論社、「3D マーケティングがビジネスを変える」翔泳社 などがある。弊社非常勤顧問。(財)最先端表現技術利用推進協会 会長。
  Twitter:http://twitter.com/machida_3ds
  facebook:http://facebook.com/machida.3DS
  HP: www.ambientmedia.jp

見渡せばVR元年(4)〜スタンドアローンVRデバイス〜

私の周辺では、当然これからがVRの本格普及の段階という人たちが主流ですが、一部では期待していたほどではないという意見も出始めています。ただ、セミナーや展示会でVR体験会をして感じるのは、まだまだ体験したことがない方がほとんどで、業界以外の方への周知はこれからと感じています。
今回はVRカテゴリでいうと「スタンドアローンVR」または、「PCレスVR」とも言われるカテゴリについてみていきます。

■VRデバイスのカテゴリ分類

ここでVRデバイスのカテゴリ分類をおさらいしておきましょう。
VRにつきものの、ゴーグル型のHMD(Head Mounted Display)を付けている姿を外から見ると、皆同じに思えてしまいがちですが、実はその仕組みにはいくつかのタイプがあります。
大別すると図1にあるように、スマホ系、スタンドアローン系、セパレート系、シアター系の4つのタイプに分けることができます。
それぞれ図1に示すような特徴があり、その特徴を理解した上で利用する必要があります。

カテゴリ
スマホ系
スタンドアローン系
セパレート系
シアター系
メリット ・デバイスが普及済み
・持ち運びどこでも体験
 できる
・コストが安く大量配布が
 可能
・配線が不要
・起動終了操作が
 ない
・コンテンツ差し替え
 が容易
・高画質リアルタイムCGが可能
・対応センサーが豊富
・ある程度歩ける
・装置を装着する必要がない
・大勢で同時に体験できる
・年齢制限の必要がない
デメリット ・発熱で止まることがある
・電話がかかってくる
・年齢制限がある
・ハード機能アップ
 が困難
・持ち運びに不便
・年齢制限がある
・高機能PCが必要となる
・本体との配線が必要(無線も
 ある)
・年齢制限がある
・そこに行かないと体験できない
・広いスペースが必要
・コストが高い
主な
コンテンツタイプ
配信・ライブ中心 パッケージ中心 インタラクティブ中心、
今後パッケージ視聴も
増える見込み
パッケージ中心、
今後はインタタクティブも
増える見込み
主な用途 ・イベント
・セールスプロモーション
・コンテンツ販売
・イベント
・セールスプロモー
 ション
・狭いスペースでの
 VRシアター
・ゲーム
・イベント
・有料VR体験施設
・常設ショールーム
・マンションギャラリー
・観光地ご当地シアター
コスト感 300円〜2万円程度
(数量により異なる
10万円前後 8万円程度〜30万円前後
(PC本体やゲーム機含む)
1500万円程度〜
(造作、機器、コンテンツ含む)
図1 VRデバイスのカテゴリ分類2017

■スタンドアローンのHMDデバイスは将来のPCの姿

中でも、今回取り上げる「スタンドアローン系」のVRはまだ機種も少なく体験する機会もないと思いますが、VRに必要な機能(CPU、センサー、表示装置、通信機能、メモリー、バッテリーなど)の全てがこのHMDの中に搭載されていますので、他にPCやゲーム機の本体は必要ありません。将来のPCの姿を考えると、過去にメインフレーム→デスクトップ→ノートPC→タブレットPC(スマホ含む)へと姿を変えてきたことを考えると次世代のPCとして、ウエアラブルPCやスマホの行きつく形態がHMDタイプとなることは容易に想像できます。この点ではスタンドアローン系のVRデバイスにライブカメラやシースルー機能がつけばARが可能となり、本格的なウエアラブルPCとして装着して歩き回ることができるでしょう。この使い方がまさしく未来のPCの姿なのです。
ちなみにマイクロソフトのホロレンズ(HoloLens)はシースルータイプのAR用デバイスでカメラ入力の映像を見るのではなく、透過型の部分に映像を多重化して表示して現実とCGを合成しています。


■スタンドアローンVRデバイス IDEALENS(アイデアレンズ)

今入手できるスタンドアローン型HMDの代表格が株式会社VR Japanが販売するこのIDEALENS K2です。(図2)イベントや常設で利用できる現時点で最適のスタンドアローン機種と思われます。

図2 IDEALENS K2

このほか、今後は中国のBeijing Pico Technologiy Co,.Ltd社の「pico neo」やOculusの「Santa Cruz」などPCを必要とせず単体で動作するスタンドアローン型HMDデバイスが続々と登場する見込みです。 その流れに重要な役割を果たすのがクアルコムのモバイルプロセッサSnapDragon 820でVRの機能を引き出すSDKがサポートされています。IDEALENS K2のバッテリーはコンテンツにもよりますが2.5-6時間持つので、例えば映像コンテンツの再生であれば4時間程度と想定するとイベントなどで使用する場合はローテーションを考えても2セットから3セット準備しておけば、イベント時間にもよりますが、交互に充電することで運用可能と思われます。(充電は2Aの急速充電約3.5時間)

ディスプレイ OLED 1200 x 1080 x 2画面
視野角 120度
リフレッシュレート 90Hz
遅延 17ms
ROM 32GB eMMC (OS、内蔵ソフトを含む)
RAM 3GB PDDR3
CPU/GPU Exynos 7420/Mali-T760 MP8
搭載センサー 6軸検出センサー(3軸ジャイロ+3軸加速度)、
3軸地磁気、光距離、温度
Bluetooth 4.0,3.0,2.0
Wi-Fi 2.4GHz 802.11a/b/g/n
ビデオ、オーディオ
対応形式
h264,xvidh264,xvid,vp8,MPEG4,H265,RealVideo4,MP3,MP4,
AAC,FLAC,OGG,AVI,TS,MKV,3GP,RMVB,FLV,MPEG,MOV
接続端子 micro USB 2.0端子、3.5mmヘッドフォン端子
充電 約3.5時間(2A急速充電)
電池消費時間 2.5時間〜6時間(コンテンツによる)

■IDEALENS K2の装着感


鉢巻のように頭部を締め付けることで固定するHMDが多い中、IDEALENS K2は後頭部からバネで頭部をはさむように装着します。(図3)実際に装着してみると、頭頂部は隙間があいており後頭部と前頭部がしっかりホールドされていて頭を締め付けられる感じが少なく装着感に優れているといえます。この方式は着脱もしやすいのと頭に接する部分も少なく装着でヘアスタイルが乱れることも少ないので女性には良いのかもしれません。

画像をクリックすると大きな画像が表示されます。
図3 

■IDEALENS K2の運用性

スタンドアローン系の特長でもありますが、PCやスマホなどを使用する場合に比べて電源を入れてから装着するまでの手間がほとんどかからず、人の入れ替えなどの運用性に優れています。通常PCやスマホでは電源を投入してからソフトやアプリを選択し、その後コンテンツを選択するなどアテンドする方の説明や操作が必要なことがありますが、IDEALENS K2ではバラバラに来る来場者に対しても装着しただけで電源が入りコンテンツを再生することも可能です。また、本体との接続ケーブルや電源ケーブルがないので装着はスムーズに行えます。ただし、ヘッドフォンは一体化されていないので、別途ヘッドフォンを本体にある音声出力端子に接続する必要があり、そのためのケーブルは必要となります。1台で使用する場合はBluetoothなどの無線対応ヘッドフォンを使用すればこのケーブルも不要にすることも可能です。ただし、台数が多い場合はBluetoothがうまく認識されないトラブルが起こることがあるので、有線で使用されることをお勧めします。


■同時再生やモニターなど高度な運用への対応

スマホ系やPCやゲーム系でも同様ですが、イベントや常設施設での導入となると、複数の体験者をどうさばくかという課題があります。それもバラバラに体験していただくか、あるいは同時に体験していただくか、その目的やコンテンツにより異なりますが、多くの場合は同時に体験していただくことが運用上必要となります。この場合、配線が少ないメリットを活かすためにはHMDとコンテンツのソースを無線で制御する必要がでてきます。コンテンツが映像データの場合は無線で各端末に配信することは現実的ではないので、各HMDにコンテンツを保存しておき、その再生コマンドを無線で送ることになります。IDEALENS K2でもこれらのオプションシステムがあるので図4のようなタブレットからの指示で複数のHMDの再生を制御することができます。また、今再生されている映像をタブレットに表示することで適切なところで止めて説明したり、再生するコンテンツを切り替えることができます。コンテンツを外部から切り替えられることは安全性の観点からも大変重要で不可欠なことと思われます。特に、火災など緊急時に同時にHMD装着者にたいしてメッセージを知らせる必要がある場合は有効な手段といえます。HMDとヘッドフォンを装着していると視覚と聴覚が外界と遮断されますので、このように外部から強制的に緊急事態を知らせるメッセージが表示されるなどの仕組みが最低限必要となるでしょう。

画像をクリックすると大きな画像が表示されます。
図4 HMD同時再生システム概要図

※社名・製品名は一般的に各社の登録商標または商標です。



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(Up&Coming '17 春の号掲載)

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