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イメージ議論・モデル作成から見せ方検討まで
Virtual Design World Cup ワークショップ第2・3回
2011年7月22日をもってVirtual Design World Cupのすべてのワークショップが終了。仲間達とのアイデア交換から刺激を受け、講師の傘木宏夫氏(NPO
地域づくり工房 代表)からのアドバイスを吸収した学生たちは、いよいよ本格的な課題制作に着手します。
今回は、そのワークショップ第2回(6月27日)、第3回(7月22日)の模様をレポート。併せて、課題である渋谷の街とペダストリアンデッキのサンプルモデルもご紹介します。 |
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NPO 地域づくり工房 代表の傘木宏夫氏。
全3回にわたってワークショップの講師を務めた |
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まちづくりの概念
第2回となった今回のワークショップの参加者は全6名。開催のあいさつでは、課題制作におけるコンテスト参加者への刺激、アイデアの発展、Web上での共有による触発など、今回のワークショップの目的について傘木氏より学生へメッセージが伝えられました。
続いてグループ分けと自己紹介が行われ、2大学より6名の学生をミックスして3名ずつの2チームに。前回のワークショップのレビューを行いながら、渋谷のイメージを共有しました。
「今回は仮のデッキのイメージ提案を行います。この作業を通して、これからつくろうとしているものの、まちづくり上の意義やプレゼンの方法について議論していきます」(傘木氏)
各チームで議論・検討に入る前に、傘木氏より「まちづくりの概念」とワークショップの意義について簡単なレクチャーが行われました。
「まちづくりには大きく分けて上位、中位、下位のパートがあり(図1)、積み上げていくと互いに自ずとフィードバックされていくもの。そのフィードバックの過程がまちづくりにおいて非常に大切です」と傘木氏。さらに、前回の現地調査によってどんな渋谷をつくることをイメージしたか?イメージを実現するには?何の目的のためどんなデッキを作るか?などを、UC-win/RoadやVR-Cloud(TM)をつかってうまく討論・議論していくようにアドバイスされました。
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▲図1 傘木氏による「まちづくりの概念」とワークショップの意義 |
Aチームによるイメージの検討
モデルのパーツ一覧を見ながら、作成場所や形状について議論開始。「渋谷は(西側の)スクランブル交差点が危険だからなんとかしたほうがいいのでは」 「裏側(東口)が殺風景でデッキも古いから、そこにシンボルになるようなものを作った方がいい」など、設置場所に関して意見が分かれている様子。
傘木氏は学生の意見に対して、「みなさんはどんなイメージの渋谷を作っていきたいですか?目的は何かから入っていけば、自ずとデッキを作る場所も決まってきますよ」とアドバイス。
実際にパーツを置きながら、結局ヒカリエのある東口バスターミナルを場所として選択したAチーム。「コンセプトをしっかりさせるのが大事」という傘木氏のアドバイスを受けながら、検討を進めたデッキ上にものを配置し、イメージを確認しながらディスカッションしていきました。コンセプトを紙に箇条書きで挙げ、これをベースとしてプレゼンテーションの準備も進められていきました。
● A : 「ユニバーサル」チーム |
コンセプト 「人が集まるユニバーサルデザインの新たなランドマーク」
- 渋谷の街に新しいシンボルをつくる
- デッキにより表参道・青山方面へのアクセシビリティを向上させる
- ユニバーサルデザイン
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▲1 : 3つのコンセプトに基づいた発表 |
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▲2 : 全体の俯瞰、表参道・青山方面へのアクセシビリティを向上 |
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▲3 : エレベータの設置によりバス・タクシー乗り場のバリアフリーを実現、全体を覆うことで雨にもぬれずに済む |
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▲4 : ターミナル全体を覆うように面積を広くもたせて商業施設や噴水などを置き、ハチ公に代わる新しい待ち合わせ場所とすればスクランブル交差点側の混雑解消にもなる |
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Bチームによるイメージの検討
「表のスクランブル交差点と裏の東口は、人の流れも景観も対照的でした」と前回参加の学生。どちらにデッキを置くのがふさわしいかを議論しあいました。
「ヒカリエ建設中の裏側は、さびれているわけではないけど、殺風景」とAチームと同様の意見の様子。一方、対照的なスクランブル交差点については、混雑も渋谷という街の象徴として、「このままでいい」ということに。最終的に、東口にデッキを置くという意見に集約されていきました。
このようにして、両チームが選んだデッキの配置場所は奇しくも同じ東口バスターミナルのエリアに。場所決定後はパーツ一覧を見ながらどのようなデッキをつくるかについて検討を始めました。
「渋谷は最先端のイメージ。スクランブル交差点に代わる新しいシンボルにしたい」 「ヒカリエと連結させて、そこをガラスの通路にしたらどうか」など、具体的なイメージが固まってきたところで、円状のパーツを2つつなげて「8」の形のデッキを計画。前回の現地調査で出た「バスターミナル上を全て覆うと光がさえぎられてしまうし空気も滞留する」という意見をふまえて、円形状の中央が空いているパーツを選んだとのこと。
● B : 「渋谷エイト」チーム |
コンセプト 「新たなシンボルSHIBUYA“8”(8公)」
- 直結するヒカリエが象徴する「近未来文化の発信」や、待ち合わせ場所としてのハチ公に代わる開放的なシンボル「SHIBUYA"8"」をコンセプトとした未来創造
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▲1 : ハチ公に由来する「8」をモチーフとした発表 |
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▲2 : 8の字型には、スクランブル交差点側のハチ公に代わるシンボルという意味 |
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▲3 : 8の字型の中央の穴によりデッキ下方の閉塞感や空気の対流を解消 |
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▲4 : ヒカリエには劇場が入る予定なので、公演後や待ち合わせなどで人が滞留する場に |
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10分の途中休憩中、両チームの作品をお互いに見学してみて初めて、同じ場所(図2)を選んでいたことに気づき、さらに、全く異なる計画となっていたことが非常に刺激になったのか、その後、休憩中にもかかわらず各チームで熱心にディスカッションが進められていました。学生達のディスカッションは非常に白熱した様子で、予定時間を延長するほどとなりました。
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▲図2 両チームが選んだデッキの配置場所は奇しくも同じ東口バスターミナルのエリアに |
VR-Cloud(TM)によるプレゼンテーション
約1時間半に渡って行われたディスカッションと検討を終え、最後は両チームによるプレゼンテーション。それぞれ作成した計画案のVRをクラウド上にアップし、VR-Cloud(TM)を通して操作を行いながら、デッキのイメージとコンセプトについて提言がおこなわれ、質疑応答も熱心に交わされました。
Aチームは、3 つのコンセプト(1)渋谷の新しいシンボル、(2)アクセシビリティの向上、(3)ユニバーサルデザインをもとに、それについてどのように対応したかという形式でプレゼンテーション。Bチームでは、ヒカリエと直結する数字の「8」の字型のデッキを計画し、ハチ公に代わる近未来的なシンボルとして発表しました。
両チームによるプレゼンテーション終了後、傘木氏からは「同じ場所をテーマにしていても、違ったものができてくる。異なる意見やアイデアで協議を行うのはまちづくりにおいて非常に重要なこと」と講評が述べられました。
また、まちづくりの持つ意味合いについて「commons(コモンズ=入合地)」の概念を用いた解説を交えながら、デッキの機能の重要性について解説。最後に、「次回は今日の内容をたたき台にしながら、レポートのHP公開やディスカッション内容のVRへの書き込みとデータの公開により、この場にいない人との共有を行うことで、ワークショップのレベルが底上げされていくと思いますよ」と、次回への展望を含めて結び、第2回ワークショップを締めくくりました。
作品の意図をグループ内で共有
最終回となる第3回のワークショップ。まず、今回の意図として、前回のグループ分けおよび作成したデータを引き継いで使用し、その作品をどのように見せるかを検討する(=可視化の作業を行う)ことを目的に、Aチーム4名(うち前回不参加が1名)、Bチーム3名に分かれました。
見せ方の検討にあたって、チーム内で作品のコンセプトや意図を共有するために、新メンバーが1名加わったAチームでは「意図の共有」の作業、前回と同様のメンバーで構成されたBチームではレビューによる「意図の再確認」作業が行われました。
「見せ方の検討では、自分たちの意図を伝えようとするだけではダメ。利害関係者や相手の立場になって考える、いわゆる“憑依能力”が必要となってきます」と傘木氏。通勤バスの利用者、子供の視点、歩くスピードなど、さまざまなポイントを再現しながら、自分たちのプランを消化していくことを参加者にアドバイスしました。
「利害関係者の視点をプレゼンに織り込むことで、説得力がアップします。造形的な美しさだけでない、自分たちなりの見せ方に取り組んでみましょう」(傘木氏)
各チームでの「見せ方検討」
まずは視点の検討を行うAチームですが、さっそく前回には挙がらなかった検討点が浮上。初参加のメンバーから「ユニバーサルデザインをうたっているが、デッキへのアクセスが限定されている。銀座線-
東横線の乗り換えは計画前の方がよかったのでは」と、さまざまな路線の利用客の立場になって検討する意見が飛び出し、さらに「デッキを使って複数の路線の乗り換えができれば人も集まってくるはず」という意見が導き出されました。このように、初参加メンバーの意見はグループでの協議に新鮮な視点を与えているようでした。これに対して傘木氏からは次のようなアドバイスが。「このデッキはただの動線なのか、別の役割があるのか。それによってストーリーは大きく変わってきますね。」(傘木氏)
効果的な見せ方・伝え方を検討
議論の結果、A チームは「単なるデッキというよりは商業施設的に捉えたもの」というコンセプトをもとに、プレゼンでは全体として俯瞰的に見せるよりも、デッキ内の空間を歩いて移動する視点で、噴水やオブジェ、コンビニなどの施設をひとつひとつ見せて行くという手法を取ることに。
また、B チームではプレゼンの際の視点について、傘木氏の「(デッキの独特の形状は俯瞰的に見るとよくわかるが)、現実の人間は上からは見ないですよね」といったコメントを受け、見せ方における検討点を協議。中心となるコンセプトを紙に書き出して、それを分かりやすく伝える形の視点と飛行ルートの設定について話し合っていました。結果として、直結するヒカリエが象徴する「近未来文化の発信」や、待ち合わせ場所としてのハチ公に代わる開放的なシンボル「SHIBUYA"8"」をコンセプトとした未来創造という点に集約。「ヒカリエ=近未来」のイメージからスタートし、シンボルのアイデア「ハチ公」を見せてデッキの形状を俯瞰的に確認し、下からのアングルで採光性の高さをアピールという方向性に。
VR-Cloud. を利用して合意形成へ
各チームで意見がまとまると、UC-win/Roadを使ってスクリプトを作成しながらプレゼンテーションの方法について模索。その後、データをサーバへアップしてVR-Cloud.
上で公開し、プレゼンテーションを行いました。学生たちは、ディスカッション機能を用いてスクリプトの中で景観のポイントとなる部分にコメントを作成するなど、VR-Cloud.
の合意形成ツールも実際に体験。
第3回 : スクリプトによるプレゼンテーション |
●Aチーム (「ユニバーサル」チーム)
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▲「見せ方検討」 |
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▲1 : 俯瞰的な全体図からスタート |
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▲2 : バスターミナルからエレベータでアクセスできる「ユニバーサルデザイン」 |
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▲3 : デッキ内部へと視点を移動 |
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▲4 : 歩行者の視点でデッキ内部を一通りフライスルーし、滞留場所としての機能も伝えた |
●Bチーム (「渋谷エイト」チーム)
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▲「見せ方検討」 |
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▲1 : ヒカリエ=近未来のイメージからスタート |
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▲2 : シンボルとしてのアイデアの元となった「ハチ公」 |
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▲3 : ヒカリエと直結した形状を俯瞰的に確認 |
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▲4 : 採光を意識した明るい空間、開放的な空間をアピール |
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発表後は意見交換および傘木氏による総括が行われました。
「UC-win/Road が自由度の高いツールであることを実感したと思いますが、それが逆に難しい点でもありますね。あれもこれもとなると何を見せたいかが分からなくなってしまうので、コンセプトがしっかりしていることが重要になってきます」(傘木氏)。さらに、複数のメンバーを含むグループでの協議におけるアドバイスとして、「それぞれの作品の特徴をデフォルメして強調し、焦点を据えることで伝えやすくなる」と述べていました。
最後に傘木氏は、最終回である今回のワークショップ後に作品を作りこんでいく学生たちへのアドバイスとして次のように締めくくりました。
「計画の中のひとつひとつが全体としてどのようになるかというところで、街のイメージができあがってくる。それが出てきたときに、はじめてリアリティが生まれます。その際、コンセプトの掘り下げは最も重要で、それによって説得力が生まれるのです」
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Virtual Design World Cupへの作品応募や審査等、今後のスケジュールの詳細はこちらに掲載されていますので、ぜひご覧ください。
ワークショップで使用した渋谷モデルをVR-Cloud(TM)で閲覧
VR-Cloud(TM)製品情報ページで、「中目黒地区モデル」・「日本平パークウェイモデル(ハイビジョン版)」を公開中です。
VR-Cloud(TM)はクラウドサーバ上で3D・VRを利用する合意形成ソリューション。
インターネット環境さえあれば、シンクライアントでもWebブラウザでVR空間を操作できます。
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Virtual Design World Cup 渋谷サンプルモデルを紹介!
本コンテストにエントリーされた方は、対象ソフトウェアライセンスの期間内無償貸与および、下記にで併せて紹介されているサンプルモデルのダウンロードが可能となります。ぜひ作品制作に役立ててください。
【貸出期間】 : 2011年11月30日まで(製品により期間制限や動作制限、提供スタイルが異なる場合もあります)
バーチャルリアリティ・VRシミュレーション |
UC-win/Road 使用必須ソフトウェア
地形や道路、建物など都市空間を3次元VRで再現し、その空間をマウス操作で自由にシミュレーション。交通車両や人間、信号制御、日照など多様な状況をシミュレーションにより計画・デザイン検討できる。Allplanと連携することで、全体景観や周辺環境や道路の検討も行える。交通流や群集解析、氾濫解析などの各種解析ソフトとの連携により、解析結果を可視化。
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建築土木統合BIM ソリューション、BIM 対応3次元CAD |
Allplan 使用必須ソフトウェア
UC-1「橋脚の設計」、「橋台の設計」などで作成した構造物の設計データをAllplan形式やIFC形式でインポートすることで、躯体・鉄筋を3次元で表示して直接編集。編集した鉄筋配置などを反映した2次元配筋図(平面図、断面図など)や鉄筋加工図、部材数量表の作成も可能。作成した建築・土木構造物を3DS形式でインポートすれば、UC-win/Roadに取り込める。ハチ公改札口〜渋東シネタワーにかかるデッキのサンプルを作成。
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ラージスケール、マルチVR |
VR-Studio(R)
広範な地形範囲を含む大規模プロジェクトをサポートし、100km以上にわたる大規模な都市エリアのVRデータと交通ネットワークの作成が可能。東京(渋谷)〜大阪間をモデル化。
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3次元プレートの動的非線形解析 |
Engineer's Studio(R)
プレ処理〜計算エンジン〜ポスト処理までのすべてを自社開発した3次元有限要素法(FEM)解析プログラム。構造物の部位を平板要素でモデル化して、構造物の非線形挙動を解析可能。デッキの床版をプレート要素でモデル化。
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3次元骨組の静的動的、非線形解析 |
UC-win/FRAME(3D)
動的/静的荷重による幾何学的非線形/材料非線形解析が行え、先進のインターフェースが一般的な線形解析、弾性解析にもパワーを発揮。本サンプルでは柱本数の検討や地震時の動的応答の推定に使用。
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土木設計CAD |
UC-1 for SaaS
鉄筋コンクリート構造の橋脚、逆T式橋台及び重力式橋台の設計計算から図面作成までを一貫して行えるソフト。「UC-1
橋脚の設計」を用いて静的な耐力を照査。
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建築構造物の3次元静的・動的解析 |
Multiframe
大規模構造物や高層ビルなど、あらゆる種類の複雑な構造作成と解析が効率的に行える。回廊部の屋根に対して風を面分布荷重として与え複数の形状で解析。
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建物エネルギーシミュレーション |
DesignBuilder
設計中の建物に対して光や温度、CO2排出量などの環境に関連する性能のシミュレーションが可能。デッキ下停車中のバスに対する車中温度上昇検討。
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信号・交差点計画/交通流解析 |
OSCADY / TRANSYT
交通信号の最適化、交通ネットワークの交通信号制御を最適化するソフトウェア。車線変更に伴う交通流解析ならびに信号現示解析。渋谷駅前交差点を対象にした解析。
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雨水流出解析システム |
xpswmm
ペデストリアンデッキの地下部分に貯水槽を設けたり、渋谷川の氾濫などに利用できる。バスターミナル下に計画した貯留槽への流入検討。
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(Up&Coming '11 秋の号掲載) |
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