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連載 【第6回】
ストレスとつきあう
〜カラダみつめる習慣
profile
関西医科大学卒業、京都大学大学院博士課程修了、医学博士。マウントシナイ医科大学留学、東京慈恵会医科大学、帯津三敬塾
クリニック院長を経て現職。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本心療内科学会上級登録医・評議員、日本心身医学会専門医、日本森田療法学会認定医。日本統合医療学会認定医・理事。日本ホメオパシー医学会専門医・専務理事。日本人初の英国Faculty of Homeopathy専門医(MFHom)。2014年度アリゾナ大学統合医療プログラムAssociate Fellow修了。『国際ホメオパシー医学事典』『女性のためのホメオパシー』訳、『妊娠力心と体の8つの習慣』 監訳、 『がんという病と生きる 森田療法による不安からの回復』共著など多数。


  現代はストレスの時代といわれます。仕事の負荷や複雑な人間関係、猛暑や豪雨などによる環境の変化など、日々私たちはさまざまなストレスを受けています。ストレスによって体調はいつも万全でいるわけではなく、天気のように晴れたり曇ったり時に嵐のように、私たちはカラダの「ゆらぎ」を抱えながら生きています。そんな自分自身のカラダの「ゆらぎ」と上手につき合い続けるために、まずは自分のカラダの小さな変化に意識を向けること、カラダをみつめる習慣からはじめましょう。

ストレス反応

ストレスはもともと「外力が物体に加わった場合の歪み・不均衡」という意味の機械工学の専門用語でしたが、生理学者ハンス・セリエは外部からの影響で身体に歪み・不均衡が生じる状態をストレスと呼ぶようになりました。正確にはストレスを引き起こす外部環境からの刺激をストレッサーといいますが、私たちはこのストレッサーを日常的にストレスとして使っています。

ストレッサーには
  • 物理的ストレッサー:温熱、寒冷、圧力、光、騒音など
  • 化学的ストレッサー:薬剤、有害化学物質、環境ホルモン、化学合成物な
  • 生物学的ストレッサー:細菌、ウイルス、真菌など
  • 精神的ストレッサー:日常生活で体験する様々な出来事・ライフイベント
などがあります。

ストレッサーの種類や強さにもよりますが、長時間ストレスを受け続けるといろいろなストレス反応がカラダにみられるようになります。
 
 

身体的反応として肩こり、疲労、不眠、食欲低下や胃腸の障害がみられます。人によっては腹痛、下痢、のぼせ、めまい、動悸、頭痛や発熱なども見られるようになるかもしれません。心理面では「いらいらする」「怒りっぽくなる」「気力がなくなる」、さらには落ち込み、感情鈍麻、集中困難、思考力も低下します。一方、行動面でも怒りを爆発させたり、けんかなどの攻撃的で過激な行動をとったり、わけもなく泣いたり、人と会うのを避け引きこもり、あるいは過食アルコールやギャンブルに逃避的な行動をとることもあります。

これらのカラダの不調は「ゆらぎ」としてみられると、症状として変化し、持続しないことから気が付かないことも少なくありません。

カラダの「ゆらぎ」を知る

カラダの「ゆらぎ」を知るには、体調の細やかな変化を記録するチャートによって、より自分のカラダに意識を払うようになることが大切です。日々の生活の中でほんの1〜2分自分の「カラダ」をみつめて記録を続けることで、不調の原因を突き止め、自身のカラダのバイオリズムが掴みやすいようになっていきます。

 

  不調のサインとして、頭痛、吐き気、胃痛・胃の不快感、食欲不振、不眠・過眠、だるさ・無気力、気分の落ち込み・イライラ、首の痛み・凝り、肩の痛み、下痢、便秘、血尿、目のかすみ・見えづらさ、耳鳴り・聞こえづらさ、めまい、動悸、腰痛、手足のしびれ、背中の痛み、口内炎、歯痛・顎の痛み、肌荒れ、むくみ、こむらがえり、下腹部の痛みなどの症状を『カラダみつめるNOTE』(図1)を使って記録することが可能です。『カラダみつめるNOTE』は女性向けの手帳ですが、男性にも不調のサインをとらえるツールとして活用できます。

痛みをみつめる

カラダにあらわれては消えていく症状の中で、特に「痛み」の観察は重要です。痛みにはチクチクと刺すように痛み、ズキンズキンする痛み、締め付ける痛み、鈍い痛みなど様々な感覚の痛みがあります。

図1 カラダみつめるNOTE
   一般社団法人 日本統合医療学会 部会〈統合医療女性の会〉
   総監修 板村論子 2019年1月30日発行 発行元 株式会社BIBLIOBAGA
 
また一か所や片側だけ、あるいは広範囲なのか、また痛みが広がっているのか。痛み止めの薬を飲めば治るのか、薬を飲んでも治らないのか。痛みの観察には、次の3つのポイントがあります。
  1. どのくらい強いか
  2. どのくらいの時間続くか
  3. 薬を飲んで治るか「頭痛」「腰痛」「肩や首の痛み」

……カラダのどこかに痛みを感じた時に は、1〜3を意識して観察しましょう。そうすることで、痛みが出る時のパターンが見え、危険な痛みなのかそうではない痛みなのかも、判断しやすくなります。

痛みの観察でいちばん重要なのは「いつもと違う」かどうか。慢性的に 痛みを感じている人でも、「いつもより強い」「いつもより長く続く」「いつもより広範囲」などの変化があった場合は注意が必要です。

例えば頭痛の観察では「締めつけるような痛み」「鈍い痛み」「拍動するような痛み」があります。「こめかみ」「目の奥」「首の近く」「片側だけ」など部位もいろいろありますが、もっとも注意が必要なのは、どんどんひどくなる頭痛で、「吐き気」や「嘔吐」などがひどかったり、ろれつが回らない、茶碗を落とすなどいつもと違ってくる。また、けいれんなどが起こると頭蓋内の出血や髄膜炎、脳腫瘍による頭痛である場合が考えられます。突然に今まで経験したことのない人生最悪の頭痛も要注意です。低気圧や月経、睡眠不足などからくる頭痛で、薬を飲めば治るものは心配する必要はありませんが、血圧が高い人が強い頭痛を感じた場合、血圧が極度に上がっている可能性があるのですぐに受診が必要です。

カラダみつめる習慣は1冊のNOTEで始められます。毎日ほんの数分自分のカラダに意識を向けることで、ストレスによる自分のカラダの反応パターンを知ることができ、ストレスとうまく付き合っていけると思います。

 


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