インフルエンザ
インフルエンザウイルス(図4)を病原体とするとする気道感染症です。潜伏期間は1〜4日間です。流行が周期的に現われてくるところから、16世紀のイタリアの占星家たちはこれを星や寒気の影響(influence)によるものと考え、これがインフルエンザの語源であると言われています。インフルエンザは、いまだ人類に残されている最大級の疫病といえるかもしれません。
感染症の世界的な大流行をパンデミックといいます。インフルエンザによるパンデミックでは1918年のスペイン風邪(A/H1N1:2000〜5000
万人死亡)、1957 年のアジア風邪(A/H2N2:100〜400 万人死亡)、1968 年の香港風邪(A/H3N2:100〜400 万人死亡)、最近では2009
年の「豚インフルエンザ」です。インフルエンザは毎年世界各地で大なり小なり流行がみられます。11月下旬から12月上旬頃に始まり、翌年の1〜3月頃に患者数が増加し、4〜5月にかけて減少していくパターンを示しますが、夏季に患者が発生しインフルエンザウイルスが分離されることもあります。インフルエンザ流行の大きい年には、インフルエンザ死亡者数および肺炎死亡者数が顕著に増加し、さらには循環器疾患を始めとする各種の慢性基礎疾患を死因とする死亡者数も増加し、結果的に全体の死亡者数が増加することが明らかになっています(超過死亡)。ことに高齢者がこの影響を受けやすいといえます。図5にインフルエンザの臨床症状を示しています。
「新型インフルエンザ」とは、過去数十年間に人が経験したことのない種類のインフルエンザウイルスにより、ヒトとヒトとの間で容易に流行を起こすようになったインフルエンザをいいます。2009年の「豚インフルエンザ」はウイルスの遺伝子が豚インフルエンザ由来のためそう呼ばれました。2010年8月には「ポストパンデミック」であるとWHOより宣言され、2011年4月1日以後、「インフルエンザH1N1(2009)」と呼ばれ季節型のインフルエンザに移行しました。これは高齢者の感染は少なく、小児と若年層に多く、中には発症後急激に呼吸状態が増悪する急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の報告がありました。
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