Vol.18
UC-win/Road・
エキスパート・
トレーニング
セミナー |
IT活用による建設産業の成長戦略を追求する「建設ITジャーナリスト」家入 龍太 |
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建設ITジャーナリスト家入龍太氏が参加するFORUM8体験セミナー、有償セミナーを体験レポート |
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建設IT ジャーナリスト家入龍太氏が参加するFORUM8 体験セミナーのレポート。新製品をはじめ、各種UC-1
技術セミナーについてご紹介します。製品概要・特長、体験内容、事例・活用例、イエイリコメントと提案、製品の今後の展望などをお届けする予定です。
【プロフィール】
BIMや3次元CAD、情報化施工などの導入により、生産性向上、地球環境保全、国際化といった建設業が抱える経営課題を解決するための情報を「一歩先の視点」で発信し続ける建設ITジャーナリスト。日経BP社の建設サイト「ケンプラッツ」で「イエイリ建設IT戦略」を連載中。「年中無休・24時間受付」をモットーに建設・IT・経営に関する記事の執筆や講演、コンサルティングなどを行っている。
公式ブログはhttp://ieiri-lab.jp |
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●はじめに
建設IT ジャーナリストの家入龍太です。
建築・土木分野のソフトウェアは、設計の自動化や合理化など、生産性を高めるためのものがほとんどです。ところが、フォーラムエイトの3次元リアルタイムバーチャルリアリティー(VR)ソフトウェア「UC-win/Road」は、計算や作図などの工学的な生産性よりも、建築物や土木構造物の将来像や、日ごろ目にすることができない災害時の状況を人間に対して分かりやすく表現してみせるという、対人間的な効果を追求しているところが大きな特徴と言えるでしょう。
そのため、このソフトを導入することで顧客に対してインパクトのあるプレゼンテーションを行って新規案件を受注する、これまでなかったタイプの建築・土木構造物や交通インフラなどを新技術として売り込む、といった企業の成長戦略に密着した効果が生まれます。
UC-win/Road は今や本来の道路設計支援のほか、まちづくりの合意形成ツール、ドライビングシミュレーター、そして津波や洪水、土石流などの災害シミュレーターなどとして幅広い機能を持つ3次元設計支援システムへと大変身を遂げ、今なお進化を続けています。
単機能の製品との違い重要なのは、顧客自身がこの製品をどのような用途や目的に使い、自社の成長戦略につなげていくのかを、はっきりとイメージできるようにすることです。
●製品概要・特長
UC-win/Road の歴史は古く、2000年5月に誕生しました。フォーラムエイトの創業社長である和田忠治氏とフォーラムエイト・ニュージーランドのジム・モースマン氏(Jim
Moesman)が、ニュージーランドのクライストチャーチでまとめたソフトの構想を元に開発が行われました。
日本の道路や交差点は構造やマーキング、標識が非常に複雑なため、3 次元で表現することが難しかったのです。そこで和田氏は豊富な土木工学の知識を生かして道路を3次元で簡単に設計できるソフトを作りたいと思い、モースマン氏は自分が持つ3次元やCGの技術を生かしてソフト開発を行いたいと思っていました。両者の思いが一致し、大規模な3次元空間を効率的に作成できるソフト、UC-win/Road が完成したのです。開発期間はわずか半年でした。
日本で初版をリリースしてから、毎年機能の追加や改善を行いました。交通シミュレーション機能も、フォーラムエイト・ニュージーランドのアリステア・ワード氏(Alistair
Ward)によって開発されました。さらにドライビング・シミュレーション、災害シミュレーションなどの機能も追加されました。
当初は道路の設計支援を行うソフトとしてスタートしましたが、今では幅広い分野においてクルマ、人、天候、時間などを再現できるバーチャルリアリティーソフトに進化し、国内外で様々なプロジェクトに活用実績があります。
この間、2002年には経済産業省が後援する「ソフトウェア・プロダクト・オブ・ザ・イヤー2002」を受賞しました。この賞は過去にはWindows
も受賞しています。経済界からも一流のソフトウェアとして認められたわけです。
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▲複雑な交差点の3次元モデル化 |
▲点群モデリング機能 |
▲岩屑なだれシミュレーションの例。
災害現場の可視化にも
使われるようになった
(資料:群馬大学 工学部
建設工学科地盤工学専攻) |
●体験内容
今回、筆者が参加したのは、5月20日、21日の2日間にわたってフォーラムエイト東京本社で開催された「UC-win/Road・エキスパート・トレーニングセミナー」です。
通常のセミナーはソフトユーザーを対象としていますが、今回のセミナーはフォーラムエイトの販売代理店を対象にしているのが大きな特徴です。建設コンサルタントや建築設計事務所、建設会社などにUC-win/Roadをどのように提案し、購入してもらうか、という販売戦略を支援するものです。
単機能のソフトだと、製品の使用目的が絞られているため、どんなユーザーに売り込めばいいのかがはっきりしています。ところが極めて幅広い機能を持つUC-win/Roadの場合、顧客の業種や業務の内容、組織の規模などによって、使うべき用途が大きく違います。顧客自身もUC-win/Roadで何をすれば、自社の成長戦略につながるのかが分かっていないケースが多くあります。
そこで代理店にはコンサルティング機能が求められます。顧客の業務内容とUC-win/Road
の機能をすりあわせて、顧客の成長戦略を実現するための提案を行うものです。このコンサルティングは、「誰に何を売るか」という経営の視点が求められます。つまり、顧客の実態(誰)と活用すべき機能(何)を最適に組み合わせるスキルです。
そこで1 日目のセミナーは、顧客の実情やニーズをどのように探り、整理していくかという内容が中心となりました。まず、顧客の業種や規模、フォーラムエイト製品の導入実績、製品購入の決定権を持つキーパーソン、IT環境といった基本的な情報を「顧客プロファイル」として整理します。
続いてその顧客がUC-win/Roadを導入する際に必要となる事項を「導入プロファイル」としてまとめます。
その内容には、顧客に合ったサンプルデータの選定やデータ変換ツールなどの選択、使用しているハードやソフトの機種などが含まれます。ハードのスペックが不十分な場合、ワークステーションなどの機種や、顧客に合ったセミナーやトレーニングコースも選択しておきます。そして導入までのワークフローも簡単にまとめておきます。
さらに「評価シート」として、UC-win/Roadの導入によって顧客が得られる利益や、導入に対する積極性、導入の障害や反対者なども作成します。
「顧客プロファイル」「導入プロファイル」「評価シート」には、UC-win/Road
という多機能のソフトを売るうえでのノウハウが“勝利の方程式”のように凝縮されているのです。
こうした分析を通じて、「UC-win/Roadが持つ機能のうち、最もアピールすべき機能」「顧客が抱える問題点をUC-win/Roadがどう解決できるか」「導入による費用対効果のシミュレーション」など、顧客の視点を中心にした具体的な提案を作成し、プレゼンテーションを準備していきます。
セミナーでは顧客への提案を行う作業のうち、重要な部分を「演習」として行いました。ポイントは「顧客視点」の思考トレーニングです。例えばUC-win/Roadへのニーズ、ソフトの活用方法、導入に対する障害、ニーズと機能のギャップなどを顧客の立場で考え、それに対する代理店としての提案は何かをロジカルに考え、参加者同士で議論しました。
2 日目は、UC-win/Roadの製品知識や操作方法を徹底して学びました。UC-win/Roadのユーザー向けのセミナーとしては初級編の「VRセミナー」と上級編の「Advanced・VRセミナー」がありますが、今回のエキスパート・トレーニングセミナーでは、これら2つのセミナーを合体されたものになりました。
代理店としてUC-win/Roadの機能や操作方法を熟知すればするほど、顧客に対する提案も的確なものになります。またソフトが「できない、対応していない」機能を知っておくのも説得力のある提案や、後日のトラブル回避の点でも重要です。
2 日目の最後には希望者を対象にUC-win/Roadに関する知識とスキルを照明する「UC-win/Roadエキスパート試験」が行われました。1時間15分で筆記試験25問、実技試験5問を回答します。半分以上の参加者が受験していました。
当日、参加者に配布されたDVDには、58ページの「セールスマニュアル」や149ページの「UC-win/Road 説明スライド」、国内外の約70本のサンプルデータなど、4GB近いデータがぎっしりと収められており、今後のコンサルティング活動に大いに役立ちそうでした。
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▲セミナーの最後に行われた「UC-win/Road エキスパート試験」を受験する参加者 |
▲参加者に配布されたDVDには、
約4GBものサンプルデータや
セールスマニュアルなどのデータが
ぎっしり収められていた |
●イエイリコメントと提案
今回のセミナーは、ソフトの操作スキルを磨くものではなく、ソフトを通じた「経営コンサルティング」を実践する能力を磨くものでした。筆者自身、中小企業診断士という経営コンサルタントの資格を持っていますので、そのことを痛感しました。
現在、建築分野にはBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)、土木分野にはCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)が普及しつつありますが、これらに共通しているのは単に3次元設計ソフトをツールとして使うだけの話ではないということです。
BIM、CIMソフトを自社のどの業務に、どんなソフトと組み合わせて使うのか、どんな顧客にどんな新製品・新サービスを提供するのか、といった自社の経営戦略と密接に連携した活用を行ってこそ、利益をもたらしてくれるのです。
平たく言うとBIMもCIMも「分かりにくい製品」ということになります。
こうした製品を売っていくためには、顧客に対するコンサルティング能力が不可欠となります。そして顧客が製品を導入し、業績面でも成功すると、その代理店にはコンサルティングを含めたリピートオーダーが入るようになることは言うまでもありません。
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▲ BIMのデータ交換標準「IFC形式」による
建物モデルのインポート機能も搭載 |
▲動的解析の結果を
UC-win/Road上に表示した例 |
●製品の今後の展望
UC-win/Roadは発売から14年目に入りました。昨今のBIM/CIMの普及を待っていたかのような3次元バーチャルリアリティーソフトです。
今後はやはりBIM/CIMの普及に合わせて展開するべきでしょう。面的な拡大という点では、鉄道の新設区間全体を一つにまとめた数十km 四方のCIMモデルも作られるようになっています。UC-win/Road
Ver.9 が従来の20km×20kmの制限を緩和し、100kmを超えるような大規模地形の生成機能に対応したことは、この流れに沿ったものと言えます。
このほか、BIMでは維持管理分野で使われるBEMS(ビル用エネルギー管理システム)のスイッチやコントロールパネル機能をBIMモデルに持たせる、CIMでは既設構造物に取り付けたセンサーのリアルタイム情報をCIMモデルに連携させる、という構想もあります。
UC-win/RoadもこうしたBIM/CIMの動向に合わせて、バーチャルリアリティーならではの分かりやすさと使いやすさを提供していくことを期待しています。
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(Up&Coming '13 秋の号掲載) |
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