洪水リスク解析の基本フレーム
洪水リスク解析は、米国陸軍工兵隊による洪水リスクアナリシスに始まる。1990年代に入って出版されたUSACE(U. S. Army Corps of Engineers) による洪水リスクと不確実性に関する一連の報告書(例えば[1][2])は、洪水リスク解析の先駆的な業績である。本書で折に触れて取り上げた“Risk Analysis and Uncertainty inFlood
Damage Reduction Studies”(2000年)[3]は洪水リスク解析の古典的な文献であると言える。
米国陸軍工兵隊の洪水リスク解析は、(1)EAD(年間被害額期待値)による洪水リスクの定量化、(2)洪水リスク定量化における不確実性分析、(3)定量化された洪水リスクによる洪水対策の相互評価、という三つの柱からなり、これらはその後の洪水リスク解析に受け継がれていった。ただ、米国陸軍工兵隊の手法は、1次元河道における洪水氾濫を対象にしていること、被害額が洪水位によって決まると仮定していることなど、第10回の図4に示されているように、わかりやすいがあまりに簡易すぎるモデルによって計算するものである。外水・内水氾濫という2次元的な浸水氾濫とさまざまな資産によって構成される都市浸水被害の現状を考えるとき、米国陸軍工兵隊の手法は都市流域の浸水氾濫にそのまま適用することは不可能と言える。
また不確実性分析にしても、第10回の図5に示されているモンテカルロシミュレーションによる方法は、そのまま都市流域の不確実性分析に適用するには、後述するような基本的な問題を抱えている。つまり米国陸軍工兵隊の洪水リスク解析は、浸水氾濫解析、浸水被害算定、不確実性分析において、現在の洪水リスク解析に用いるには改良すべき点を多く残していると言える。2000年代に入ると、主にヨーロッパの研究者によって、このリスク解析の手法が浸水氾濫解析と不確実性分析の領域で深められていった。ともあれ、米国陸軍工兵隊が開発した手法において、洪水リスク解析の分野で大きく貢献したと思われるのは、EADによって洪水リスクを定量化するという思想である。このことに関しては何人も否定することはできないであろう。
本講座の洪水リスク解析においてもEADを計算することは洪水リスク定量化の要諦である。ただ米国陸軍工兵隊の解析手法、さらには海外のほとんどの洪水リスク解析手法もそうであるが、それらに共通していることは、洪水被害のEADを洪水の生起確率と洪水による被害から計算していることである。一方、本書の洪水リスク解析では、第8回で述べたように、豪雨の生起確率と豪雨による洪水被害からEADを計算する。洪水ではなく豪雨の生起確率から計算するため、区別して、EADではなく洪水リスクコストという用語を特に用いているのである。
都市の洪水リスク解析の手法は、浸水氾濫解析、浸水被害算定、不確実性分析からなる。浸水氾濫解析においては市販のソフトウェアが活用されることが多い。第6回で述べたように、マクロ解析では都市河川の外水氾濫と下水道の内水氾濫、さらにそれらの相互作用が扱えるモデルであれば適用可能であり、xpswmm、InfoWorks, MOUSEなどの市販ソフトが国内外で実用的なモデルとして広く用いられている。本書では浸水氾濫解析モデル(Model 1)として、自前で開発した拡散波近似の2次元浸水氾濫モデルと市販ソフトである都市浸水氾濫モデルxpswmm(1D/2D)を用いている。市販ソフトを用いることの利点は、まず、それが多くの研究者・技術者をユーザーとしている場合、モデル適用における問題点が開発者にフィードバックされ、バージョンアップを通して改良が続けられていくことである。
そしてもうひとつ重要な点は、世界中で用いられていることで、これらの市販ソフトが“共通言語”として機能し、どのソフトを使っているかで計算プロセスなどの情報を共有できることである。国際会議での私の経験であるが、洪水リスクの評価について研究発表しているにもかかわらず、自前で開発したモデルを用いた場合、浸水氾濫解析モデルについての議論で終わってしまうこともあった。しかし市販ソフトの場合、ソフト名を明示することで、洪水リスク本来の議論に移ることができた。筆者は、もちろん浸水氾濫解析モデルを開発することの重要性は十分に認識しているつもりである。しかし、浸水氾濫の計算は被害予測や洪水リスクの評価につなげることではじめて意味をもつと考えている。
都市洪水のミクロ解析では、都市流域の局所的な浸水氾濫の解析、特に地下空間などの浸水氾濫の計算がさらに精密化していくと思われる。浸水深のみならず流向・流速や浸水時間などが浸水被害と避難に関するアウトプットとして有用なデータとなる。これらのミクロ解析は、地下街の浸水被害や地下街からの避難方法の検討など、洪水リスクのミクロマネジメントにおいて大きな役割を果たすと考える。またミクロ解析において、下水道管路の水理解析は現在においても重要な研究課題である。管路の詳細な構造とエネルギー損失などの水理現象に関する渡辺ら[4]や荒尾ら[5]の研究成果が、今後、都市洪水リスクのミクロ解析に生かされることが期待される。
本講座の洪水リスク解析では、第9回において気候変動による洪水リスクの増加について検討した。しかし、東京など特定したエリアを対象に、気候変動による降雨特性の変化を降雨強度曲線スケールで予測する研究はほとんどなく、本書ではかなり粗い想定をもとに洪水リスクを計算した。都市雨水排水への気候変動のインパクトを研究した最新の成果は、例えばWillemsら[6]の著書にまとめられている。今後、ゲリラ豪雨が常態化したわが国の都市において、降雨強度曲線に関連した気候変動の研究が進むことが期待される。
都市の洪水リスク解析における浸水被害算定モデルは、第7回で述べたように評価額に被害率を乗算して求める考え方が基本であり、この数10年変わっていないと言っても過言ではない。ただ被害率については、被害軽減行動による被害率の低減が重要であり、それはポテンシャル被害とアクチュアル被害の関係として第7回で論じた。
本講座における洪水リスクアセスメントの適用事例として、洪水調節池や気候変動など、主にハード対策の洪水リスク低減効果に関する解析を紹介した。洪水リスクマネジメントにおいては、ハード対策とともに被害軽減のソフト対策が重要な位置を占める。本書において豪雨時の被害軽減行動のリスク低減については木場排水区のひとつの事例を示した。実際、盛土やピロティー化による建物の耐水化、家財の配置や移動などの被害軽減行動によって、浸水深−被害率曲線における被害率は低下する。その被害率の低下がどのくらいかという定量的研究は、建設省の被害調査の例[7]を除きほとんどなされていない。建物被害や家庭用品・事業所資産の被害について、被害軽減行動による被害率の低下に関する情報が増えてくると、さらにリアリティーのある洪水リスク解析が可能となるだろう。
浸水被害算定については、『治水経済調査マニュアル(案)』に計算の手順が示されており、それに従えば統一した方法による被害算定ができる。本書の浸水被害算定モデル(Model 2)は『治水経済調査マニュアル(案)』を基本としながらも、浸水深−被害率の関係をロジスティック曲線で表現し、被災対象物についても、東京都都市整備局のGISデータベースに対応して新たな分類を行い、評価額も東京都主税局のデータなど独自に情報を収集した。さらに被害算定の方法も、GISを援用した浸水被害算定のためのエクセル・データシートを作成し、直接被害・間接被害を表計算によって進めていくモデルを構築した。これによってメッシュごとに被害額や洪水リスクコストの計算が可能になり、ハザードマップからさらに洪水リスクマップ作成への道が開かれた。この洪水リスクマップによって、浸水被害に関する都市流域の脆弱性がより明確になり、洪水リスクのマクロマネジメントのための有用な情報が得られるようになる。
浸水被害の算定における計算結果の信頼性は、浸水被害算定モデルの課題である。浸水氾濫解析モデルの計算については、照合できる実測値があるため、パラメータの同定も含め計算の精度や信頼性に関していちおうの検証ができる。しかし浸水被害算定モデルについては、計算結果を検証するデータがないため、必然的に被害予測の不確実性をともなうことになる。洪水リスク解析において不確実性が大きな問題となるのは特に浸水被害の算定である。この問題の解決のためには、浸水被害について実際に生じた被害額を詳細に調査し、「マニュアル」の算定値との比較検証を行うことが考えられるが、これはきわめて困難な作業である。そこで、この問題を別の方向から解決する試みとして後述する不確実性分析がある。
浸水被害算定モデルが抱える問題点として、もうひとつ、定量化が困難な浸水被害をどう扱うかということがある。浸水被害算定モデルは、洪水による被害をマネタリー・ベースで評価するものであり、そのための被害定量化である。しかし、直接被害や間接被害で定量化できるものはともかく、精神的な被害や人命被害などは定量化が困難である。一度甚大な被害を受けると、それによる精神的外傷はその後の日常生活に影響を及ぼす。定量化が困難な被害項目について研究の対象が広げられてきているが、今後はリスクファイナンシングも含めた検討が必要になるだろう。
洪水リスクの研究が決定論的なモデルから確率論的モデルへと移行していることはすでに述べた。洪水リスク解析でモデルに入力するデータやモデルのパラメータが信頼性のある確定した値ではなく、ある不確実性をもった数値であること、そしてそのことを前提に洪水リスク計算の不確実性を考慮しなければならないことが明確に認識されたということである。特に被害額の算定においては、資産の評価額と被害率がかなりばらつきをもったものであり、B/CやEADの計算においては、そのばらつきを考慮して意思決定することが求められる。
公共事業の事業評価において、B/Cが事業実施や事業継続を判断する指標のひとつとして用いられている。このB/Cはマニュアルによって決められた手順で計算できるが、その計算に用いた数式やパラメータ、あるいは入力するデータが確定値ではなく、ある確率論的な幅をもった数値であることはほとんど問題にされていない。しかし、その確率論的な幅、つまり不確実性が非常に大きい場合、意思決定に用いる、B/Cとして適正と言えるだろうか。このような素朴な疑問が生じてくるが、洪水リスク解析においてEAD、あるいは本書でいう洪水リスクコストも同じ問題を抱えているのである。
本講座の第10回において洪水リスクの不確実性について論じた。不確実性分析の最新の研究成果は、Bevenら[8]の著書にまとめられている。米国陸軍工兵隊の不確実性分析、そしてそれに続くヨーロッパの研究者たちによる多くの不確実性分析は、1次元河道の浸水氾濫による簡易なモデルを対象としたものがほとんどである。一方、都市の外水/内水氾濫を2次元的に計算し、さまざまな被害項目の浸水被害額を積み上げる都市の洪水リスク解析においては、不確実性分析の本格的な導入は容易ではない。米国陸軍工兵隊のモンテカルロシミュレーションもすでに述べたとおり、簡易な3つのパラメータについて乱数を用いている。都市の浸水氾濫解析においては、不確実性をもつデータやパラメータはそれよりはるかに多く、モンテカルロシミュレーションは天文学的回数の試行を要求されることになる。本講座の洪水リスク解析は、自治体における洪水リスクマネジメントを想定し、計算機としてパーソナル・コンピュータを用いることを前提としている。計算の容量と計算の速度の点からモンテカルロシミュレーションの適用は困難である。
そこで、洪水リスク解析全体を不確実性分析の対象とするのではなく、特に不確実性を無視することができない計算プロセスに絞って分析を行うことは合理的であると考える。そのひとつの試みを第10回で示した。被害額算定において重要な役割をもつ浸水深−被害率曲線の原データのばらつきを標準偏差という指標によって表現し、それを用いて被害ポテンシャル曲線を算定する方法である。もちろん紹介した試みにはまだ改善すべき点が多く残されている。この方法は不確実性を組み込むひとつの試みであり、これ以外にもより適正な方法も当然あると思われる。
洪水リスク解析において何故不確実性を無視することができないか。洪水リスクの定量化が研究内部の閉じた作業であれば、リスクの不確実性をそれほど重要視する必要はない。しかし、洪水リスク解析を洪水リスクマネジメントの中で位置づけ、意思決定プロセスの一環としてその計算結果を用いるとき、例えば洪水対策によるリスク低減の計算結果は、不確実性をともなった数値、あるいはある幅をもった数値として扱うことが要求されるのである。
洪水リスクの不確実性の本格的な研究はまだ始まったばかりである。今後、不確実性の適正な評価と効率的な計算方法に関する研究がますます重要性を増すと思われる。
洪水リスク解析と洪水リスクマネジメント
洪水リスク解析は、洪水リスクマネジメントの中で意思決定のための重要な情報を提供する。ここで洪水リスク解析が洪水リスクマネジメントにおいてどのような位置付けにあり、またどのように適用されるべきかについて述べる。
現在、自治体における河川事業の実施や継続は、ハード施設の整備を対象とする費用便益分析(B/C)によって評価されることが多い。その方法は、治水事業によるEAD(年間被害額期待値)の低減を洪水リスク低減効果=便益として評価するものである。
都市流域は、洪水流出機構の変化とともに人口・資産が集中し、浸水による被害ポテンシャルが高い。そのため住民が安心して暮らせるためには、信頼できるハード施設の整備が重要であり、各自治体は財政的な制約のなかで水害の被害を減らす治水事業を長期にわたって実施している。ただ、近年においてはハード施設の治水レベルを超える豪雨が増加しており、ハード対策のみならず被害を軽減するためのさまざまなソフト対策も同時に要求されている。たとえば、建物の耐水化、止水板や土嚢の使用、浸水に備えての家庭用品や事業所資産の設置場所の工夫、豪雨時の家財の安全な場所への移動などである。本講座の第1回で述べたように、ハード、ソフト、ミクロ、マクロのあらゆる可能な対策の組合せ(ポートフォリオ)をPDSサイクルで実施するのが洪水リスクマネジメントである。
洪水リスクマネジメントにおいて、このような治水対策のポートフォリオによるリスク軽減を数値目標として定量的に捉えようとするならば、ソフトも含めあらゆる治水対策をハード対策と同じ指標で評価することが求められる。本講座の第9回では洪水リスク・インパクトファクターを導入して、治水事業、資産増加、気候変動、被害軽減行動など、想定される洪水リスク変動要因を、同じ指標によって評価する手順を説明した。
洪水リスクマネジメントは、豪雨による危険状態を分析し、被災対象に生じる被害を、その脆弱性とともに予測し、さまざまな対策を組み合わせて洪水リスクを最小化する取り組みである。そして洪水リスクを定量化して表現するものが洪水リスクコストである。これまでハード対策にのみ用いられていた洪水リスクコストをあらゆる対策に適用し、全体の洪水リスクコストの低減値を洪水リスクマネジメントの数値目標として位置づけることができる。
洪水リスク解析は洪水リスクコストという情報を提供することにより、洪水リスクマネジメントにおける意思決定支援システムとして重要な役割を期待することができると考える。
河川の治水対策は、流域のスケール、流域の自然条件、社会経済条件によって異なる。東京都東部を流れる荒川のような大規模河川の氾濫原洪水においては、何よりも堤防というハード施設を万全にし、住民の避難場所も計画的に整備し、破堤などの危機的状況に際しては国民の生命財産と国家的経済損失を最小に抑えるクライシスマネジメントが発動されなければならない。一方、東京都内の神田川、石神井川など、下水道と一体化した都市中小河川では、治水レベルを超える河川溢水とともに、近年増加しているゲリラ豪雨による内水氾濫への対策が欠かせない。災害弱者の避難とともに、家財や建物などの浸水に対して被害軽減行動をとることが重要となる。同じ東京都内でも、東部の沖積低地、江東デルタではゼロメートル地帯として地震水害の脅威があり、また荒川が破堤するようなことになれば浸水した水がいつまでたっても引かない、まさに「水没」の状態が続くことになる。命を守るための安全な場所への避難が最重要である。ただし江東デルタは土地の勾配がないため、内水氾濫はさほど大きな水害とはならない。
このように東京都内で見ても、河川に求められる治水対策は、流域の規模や予想される氾濫形態、被害を受ける側の社会的経済的条件によって多様であり、ハード対策の重みやそれに関連するソフト対策の内容、両者のバランスなど流域によって異なるのである。
都市中小河川に目を向けると、わが国の都市では、治水計画水準、下水道の雨水排水水準はほぼ時間50mm前後である。しかし治水事業の進捗状況は必ずしもはかばかしくはない。当然のことながら用地買収に費用と時間がかかり、すでに長期にわたって建設が続けられている。このように時間と費用を要する時間50mmの治水事業に対して、時間70mm、80mm、さらには100mmの豪雨が襲い、あっという間に浸水するのが都市の水害の現実である。
都市の水害に対して、「減災」の重要性が説かれる。「減災」は、戦後の「防災」行政の軌道修正であり、従来のハード主体の公助に対して、さらに自助・共助を加えて災害を減少させようという考え方である。「減災」という言葉をこのように文字通りに受け取ればなるほどと容易に理解できる。しかし、自治体における「減災」の現状を考えるとき、筆者は少し違和感をもつのである。これまでの防災行政、さらに減災行政にも共通していることは、いずれも治水事業や流域対策(総合治水)によって、ハザード、すなわち、「浸水しやすい状態」をいかに改善していくかということに努力が集中されてきた。一方、流域全体の「浸水脆弱性」の克服という課題については、共助、自助として、行政の範囲を超える「協力要請」として位置づけてきたことは否定できない。あくまで主体はハードであり、減災行動は従属的な位置づけのように思われる。すでに述べた大規模河川であれば当然そうでなければならない。しかし、時間50mmの治水水準を超えるゲリラ豪雨が容赦なく降り注ぐ都市流域においては、ハード施設の整備とともに、浸水脆弱性克服という課題に大きく重心を移すことが現在求められている。
洪水リスクの定義として、Hazard、Exposure(被災対象)、Vulnerability(浸水脆弱性)の組合せがあることを第1回の講座で示した。つまり、洪水リスクを低減するためには、この3者を組合せて考えるのである。大河川ではハード対策によるハザードの改善が何より優先されねばならない。しかし、治水水準が時間50mm前後のレベルに制約された都市中小河川や下水道においては、ハザードの改善とともに、浸水脆弱性を克服する努力、建物の耐水化、止水板や土嚢の使用、家具の移動などの被害軽減行動が重要となる。近年では、レーダーによる降雨予測も、Xバンド−MPレーダーの開発・供用によって精度が向上しており、住民の被害軽減行動をサポートすることが期待されている。佐藤[9]は、総合的な水害リスクマネジメントの構築という文脈で、上述の洪水リスクの3つの要素の分析を踏まえ、<社会の防災力>を高めるという考え方を提起している。繰り返すが、河川流域の規模や自然条件・社会経済条件によって洪水リスクの特性は異なり、それぞれの流域に対応した洪水リスク低減手段が採用されなければならないのである。
都市流域によって地形やハード施設の整備レベルは異なる。さらに人口・資産の集中状況も同じではない。自治体ごとに選択する対策の組合せは異なっているのが当然である。ハード施設の整備水準を「境界条件」として、建物の耐水化、資産の設置場所の工夫、豪雨時の資産の移動、さらにリスクファイナンシングも含めて、ありとあらゆる可能な対策の最適な組合せ=ポートフォリオを決定し、洪水リスクマネジメントのPDSサイクルを実行していくことが都市の洪水リスク低減のための重要な課題であると言える。
参考文献
[ 1 ] |
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USACE: Guideline for Risk and Uncertainty Analysis in Water Resources Planning,
VolumeT:Principles with Technical Appendices, Report 92-R-1, U.S.Army Corps
of Engineers Institute for Water resources, 1992. |
[ 2 ] |
|
USACE: Guideline for Procedures for Risk and Uncertainty Analysis in Corps Civil Works Planning, Volume U :Example Cases, Report 92-R-2, U.S.Army Corps of Engineers Institute for Water resources, 1992. |
[ 3 ] |
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NRC(National Research Council): Risk Analysis and Uncertainty in Flood Damage Reduction Studies, Washington, D.C., National Academy Press, 2000. |
[ 4 ] |
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Watanabe, K and Kurihara, T: Practical simulation method of surcharge flow using pressurerelaxation effect in manhole, proceedings of 6th International Conference on Urban Storm Drainage, T , Niagara Falls, pp.128-133, 1993. |
[ 5 ] |
|
荒尾慎司,平塚俊祐子,楠田哲也:管水路流れにおける3方向接合円形落差マンホールのエネルギー損失の定式化,土木学会論文集B1(水工学),Vol.69,No.2, pp.105-122, 2013. |
[ 6 ] |
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Willem, P., Olsson, J., Arnbjerg-Nielsen, K.,Beecham, S., Pathirana, A., Gregersen, I., Madsen,H., and Nguyen, V-T-V. : Impact of climate change on rainfall extremes and urban drainage systems, IWA publishing, 2012. |
[ 7 ] |
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栗城稔, 今村能之, 小林裕明:水害被害の実態調査に基づく一般資産の被害率の推定,土木技術資料 37−1,pp.40-45,1995. |
[ 8 ] |
|
Beven, K. and Hall, J.(editors): Applied Uncertainty Analysis for Flood Risk Management,Imperial College Press, London, 2014. |
[ 9 ] |
|
佐藤照子:水害リスクの構造とその特徴について−総合的な水害リスクマネジメント手法の構築に向けて−,慶応大学日吉紀要,社会科学No.15,pp.25-38,
2005. |
『都市の洪水リスク解析 〜減災からリスクマネジメントへ〜』
洪水リスクアセスメントの考え方について、その基本的な理論や手法から、マクロ・ミクロ解析によるリスク評価への応用、
将来的な展望までをわかりやすく解説。
■著者 |
: |
守田 優 (芝浦工業大学 工学部 土木工学科 教授) |
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■価格 |
: |
\2,800(税別) |
■発行 |
: |
2014年11月25日 |
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■出版社 |
: |
フォーラムエイト パブリッシング |
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目次
第1章 |
洪水リスクをめぐって(序論) |
第5章 |
洪水リスクアセスメントとその応用(マクロ・ミクロ解析) |
第2章 |
都市と洪水流出 |
第6章 |
洪水リスクの不確実性 |
第3章 |
洪水リスクアセスメントの基本フレーム |
第7章 |
洪水リスクのアセスメントとマネジメント〜課題と将来 |
第4章 |
洪水リスクアセスメントの手法 |
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