本連載では、国連が掲げている持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」の、フォーラムエイトでの取り組みをご紹介していきます。当社では「VR/CG」「FEM解析」「クラウドサービス」を主要事業とし、活動をしてまいります。
第2回 なぜ今、SDGsなのか
■SDGsフィーバーの背景
SDGs(持続可能な開発目標)という国連の呼びかけが、日本においてこれほど民間を巻き込んで「流行」になっているのには3つの背景があると私は考えます。
一つめは、閉塞感です。日本ではバブル経済崩壊後、従来の価値観も音を立てて崩れる中、生活基盤の確保をはじめ、環境や平和といったことまで、マイナス方向に向かって動いているように見えて、何か国際的・国内的に未来をめざすものがないかというときに、SDGsの「一人も脱落させない」というスローガンに多くの人や組織が引き寄せられているように見えます。
二つめは、切迫感です。地球温暖化による気候変動に対する嫌疑的な議論は一部にあるものの、多くの人びとは異常事態を肌で感じています。そうでなければ10代の少女の声に世界が耳を傾けるはずがありません。
三つめは、覇権争いです。その少女の声を利用しているEUを中心とする政治勢力は、これに嫌悪感を露骨に示す米国・トランプ政権とその追従者を、主導権を持つ国際的な投資システムを使って市場から排除しようとしています。2015年に環境保護法を改正した中国も前者のスタンスを明確にしています。日本政府の米国に配慮するあまりのあいまいな態度に、国内の民間企業は防衛的な反応を示さざるをえなくなっています。
■SDGsへの歩み
SDGsのもとをたどると、1972年の国連人間環境会議(スットクホルム)の人間環境宣言にさかのぼります。日本での公害病被害の実態が衝撃となって、地球環境問題を政治の中心に据えようとした国際的行動の始まりでした。しかし先進国のこうした論理は、貧困や飢餓にあえぐ国々には受けられないものでした。実を結ぶのは30年後の地球サミット(リオ、1992年)で、気候変動条約や生物多様性条約に向けた合意が宣言されました。
そこに至るには、地球温暖化や酸性雨、オゾンホールなどの問題が顕在化し、国際的な条約を必要とする状況がありました。ノルウェー首相を委員長とする「環境と開発に関する世界委員会」が3年間の議論の末に発表した「われら共有の未来」(1987年)が提起したSustainable
Development(持続可能な開発)の理念が、リオ宣言に反映されました。リオ宣言は21世紀が「環境の世紀」になることを期待させました。冷戦体制の終結も国際協調と平和の時代を予感させました。しかし、ニューヨーク貿易センタービルへのテロ(2001年)とそれを利用した米国によるイラン戦争(2003年〜)とを皮切りに、世界は今も混迷を続けています。
そうした中で、UNEP(国連環境計画)は危機感を持って、2000年にミレニア開発目標(MDGs)として、発展途上国の飢餓や伝染病をなくすための国連計画を打ち出しました。これは2014年に終了し、その次の計画として、発展途上国だけでなくて、先進国も入れた国際的な原則として提起されたのがSDGsです。
■実現可能な目標なのか
しかし、SDGsの総花的な17原則と169のターゲットには実現可能性が感じられません。次回は、SDGsをめぐる現状の問題点をご紹介します。そして、そうであっても私たちがこの目標を共有し、具体的な行動をとるべき状況にあることを課題提起させていただきます。
フォーラムエイトのSDGsミッションは、17目標を並列(または円)で並べるのではなく、企業としてのミッションに基づき、重点的に貢献すべき目標を図示しています。最も大きく表示したのは目標11「住み続けられるまちづくりを」です。まちづくりにおける事前配慮(環境や社会福祉、経済活動への支障を最小限に抑える)により持続可能な開発に足元から進めていくあらゆるセクターの営みに、弊社が開発したソフトウェアが貢献することです。道路や橋梁などの土木分野をはじめ、環境や防災、福祉などの各種シミュレーションを可能とする技術が、SDGsに向けたまちづくりを支援します。
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(Up&Coming '20 春の号掲載) |
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