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Vol. 9
このコーナーでは、ユーザーの皆様に役立つような税務、会計、労務、法務などの総務情報を中心に取り上げ、毎回、専門家の方にわかりやすく紹介いただきます。今回は、教育系助成金と、最近引き上げが実施された育児休業給付金について解説します。

 人材育成を図る教育系助成金  〜創業・雇用調整から教育・労働移動へ〜

今年度の厚労省の助成金の方向として政策の転換と法律の改正により、雇用関連助成金の風向きは変わってきています。原則、創業や雇用調整は助成対象が減り、人を雇って職業訓練をしたときに支給する事が多くなっています。教育にはカリキュラムが必要です。今までにも体系立てて教育訓練を行っていた企業であれば利用して活用する事が出来ると思います。これから行う企業の場合でも教育の意思があるならば取り組んでみてはいかがでしょうか。

まず教育の実施計画を立てなければなりませんが、労働局に内容を確認してから行いましょう。

 キャリア形成促進助成金

主に正規雇用の労働者に対して職業訓練を実施した場合に助成されるものです(表1)。従業員の中長期的なキャリアアップを支援するため、厚生労働大臣が専門的・実践的な教育訓練として指定した講座を従業員に受講させる事業主に対する支援として、中長期的キャリア形成コースが創設されています。

支給対象となる訓練 対象 訓練内容 賃金助成
(1人1時間当たり)
経費
助成
実施助成
(1人
1時間
当たり)
(1) 政策課題対応型訓練(Off-JT)     800円
(400円)
1/2
(1/3)
600円

7.(OJT)のみ
   1.成長分野等人材育成コース 大企業・
中小企業
健康・環境などの成長分野等での人材育成のための訓練
   2.グローバル人材育成コース 海外関連業務に従事する人材育成のための訓練
(海外の大学院、大学、教育訓練施設などで実施する訓練も含む)
   3.育休中・復職後等能力アップコース 育児休業中・復職後・再就職後の能力アップのための訓練
   4.中長期的キャリア形成コース 厚生労働大臣が専門的・実践的な教育訓練として指定した講座(専門実践教育訓練)
   5.若年人材育成コース 中小企業 採用後5年以内で、35歳未満の若年労働者への訓練
   6.熟練技能育成・承継コース 熟練技能者の指導力強化、技能承継のための訓練、認定職業訓練
   7.認定実習併用職業訓練コース 厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練
   8.自発的職業能力開発コース 労働者の自発的な能力開発に対する支援
(2) 一般型訓練(Off-JT) 中小企業 政策課題対応型訓練以外の訓練 400円 1/3 -
(3) 団体等実施型訓練(Off-JT) 事業主・
団体等
事業主団体などが行う、若年労働者への訓練や熟練技能の 育成・承継のための訓練 - 1/2 -
▲表1 キャリア形成促進助成金(主に正規雇用の労働者に対して職業訓練などを実施した場合の助成、( )内は大企業の助成額・助成率)

※ 経費助成の支給限度額:(1) 1〜4は1人1コース当たり15万円〜50万円(大企業は10万円〜30万円)、5〜8と(2) は1人1コース当たり7万円〜20万円、(3)は1団体当たり500万円
※ 1事業主の年間の支給限度額は500万円(認定職業訓練又は1・7の場合は1,000万円)、1事業主団体等の年間の支給限度額は500万円

 キャリアアップ助成金

非正規雇用者の労働者に対して職業訓練を実施した場合のものです。有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップ等を促進するため、これらの取組を実施した事業主に対して助成が行われます(表2)。

支給対象
となる訓練
対象 訓練内容 賃金助成
(1人1時間当たり)
経費助成※4
(1人当たり)
実施
助成
(1人
1時間
当たり)
一般職業訓練 大企業・
中小企業
Off-JT※2により行う訓練 800円
(500円)
訓練時間数が
・100時間未満の場合:
10万円(7万円)
・100時間以上200時間未満の場合:
20万円(15万円)
・200時間以上の場合:
30万円(20万円)
-
有期実習型訓練 大企業・
中小企業
「ジョブ・カード」を活用したOff-JTとOJT※3を組み合わせて行う訓練 700円
(700円)
中長期的キャリア
形成訓練
大企業・
中小企業
厚生労働大臣が専門的・実践的な教育訓練として指定した講座(専門実践教育訓練) 800円
(500円)
訓練時間数が
・100時間未満の場合:
15万円(10万円)
・100時間以上200時間未満の場合:
30万円(20万円)
・200時間以上の場合:
50万円(30万円)
-
▲表2 キャリアアップ助成金 人材育成コース(有期契約労働者等※1に対して職業訓練などを実施した場合の助成)

※1 有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用の労働者(正規雇用の労働者 以外の無期雇用労働者を含む)
※2 Off the Job Training :生産ラインまたは就労の場における通常の生産活動と区別して業務の遂行の過程 外で行われる(事業内または事業外の)職業訓練をいいます。
※3 On the Job Training: 適格な指導者の指導の下、事業主が行う業務の遂行の過程内における実務を通じた実践的な技能と、これに関する知識の習得についての職業訓練をいいます。
※4 事業主が負担した実費が下記の額を下回る 場合は実費を限度として助成

 トライアル雇用助成金

職業経験、技能、知識等から安定的な就職が困難な求職者について、一定期間試行雇用した場合に助成するものであり、それらの求職者の適性や業務遂行可能性を見極め、求職者および求人者の相互理解を促進すること等を通じて、その早期就職の実現や雇用機会の創出を図ることを目的としています。

現在は、公共職業安定所の紹介に加え職業紹介事業者の紹介により対象労働者を雇い入れた場合も、3か月で12万円の奨励金対象となっています。対象範囲も広がり、就職先の決まらない学卒未就職者や育児でいったん離職した女性の再就職も認められパート、アルバイトで働いていた人も対象となります。

また、本奨励金は、この支給対象期間中の各月の月額の合計額がまとめて1回で支給されます。


 育児休業給付金の引き上げ  
 次世代育成支援対策の一つ

厚生労働省は育児休業の取得を促すため、雇用保険制度の所得を補う育児休業給付の拡大を決めました。今までは原則、子が1歳になるまでを給与の50%補償をしていましたが、平成26年度から育休の当初半年間に限り、3分の2(67%)に引き上げます。2013年の秋に給付の増額は方針が決まったのですが、次のように発表されています。

 労働政策審議会報告の概要

「育児休業給付は育児休業を取得しやすくし職業生活を円滑の継続促進するために雇用保険の失業給付の1つとして設けられている。(中略)育児休業給付金受給者が増加していることから育児休業の取得促進に寄与はしていると考えられるが、一方で収入が減るという経済的理由から育児休業を取得しなかった男女とも一定程度は存在する。特に男性の育児休業取得率は平成24年度において、2%弱と伸び悩んでいる状況にあるが男性の育児休業を促進することは男性のワークライフバランスの実現だけでなく、女性の育児負担を軽減し、女性が職場で継続して働き就業率向上にも資する。夫の育児・家事時間が長いほど第2子以降の出生割合が高くなる傾向にあることから育児休業促進による男性の育児参加の拡大は少子化対策にも資するものになる」としています。以上のような背景から今回の給付率の引き上げとなったのです。

 男女共に育児休業を取得促進できるか

給付率は引き上げられますが、その率は出産手当金の水準を踏まえ育児休業開始時から6か月間について67%の給付率とすることになっています。この率は育児休業給付が非課税であること、休業期間中は社会保険料免除措置があり休業前の税・社会保険料控除後の賃金と比較して実質的な給付はさらに高くなるという計算です。

出産、育児に関する支援措置は労働基準法、育児・介護休業法、雇用保険法、厚生年金保険法、健康保険法等多岐に絡んでくるので複雑で全体を把握するのは面倒です。

受給率引き上げが必ずしも取得率向上となるかはわかりませんが、受給者のメリットは増えます。しかし企業側では取得者が増えると事務面の煩雑や人のやりくりも大変になるという面もあり、現実的な問題も増えそうです。

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▲図1 支給額のイメージ



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