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Vol. 27
このコーナーでは、ユーザーの皆様に役立つような税務、会計、労務、法務などの総務情報を中心に取り上げ、専門家の方にわかりやすく紹介いただきます。今回は「特許情報の検索サービス」を特集します。情報を共有するプラットフォームの構築が様々な分野で進みつつある現在、研究開発に欠かせない情報がより利用しやすくなりました。
 

 J-PlatPatの機能改善について 〜新たな特許情報プラットフォーム〜
J-PlatPatとは
独立行政法人工業所有権情報・研修館(通称「INPIT」)では、インターネットを通じて、誰でも、いつでも、どこからでも、無料で産業財産権情報の検索ができるサービスとして、J-PlatPatの名称で新たな特許情報プラットフォームを提供しています。収蔵されている特許等の産業財産権情報は明治以来特許庁が発行してきた特許・実用新案、意匠、商標公報、外国公報に加え、それらの権利化まで及び権利化後の経過を示す情報などがあります。(INPIT「J-PlatPat操作マニュアル」より)


J-PlatPatの運用
2015年3月より新たな特許情報プラットフォームとしての運用を開始しています。J-PlatPatが導入される前は電子図書館と称していましたが、両データベース間の表示等の仕様が異なっていたため、電子図書館からJ-PlatPatへ乗り移る際、当初は使い勝手に不慣れな場面がありました。しかしながら操作に慣れることで使い易くなってきたようです。その後2018年3月にはデータベースの充実化を図り、さらなる浸透を図っています。

平成から令和へと元号の変わり目に特許庁は、J-PlatPatの機能をさらに改善させ運用を開始しています。10日間という長期にわたる休みを受け、改善されたJ-PlatPatの運用開始日の5月7日はユーザーが一斉にアクセスしたことによると思われるトラブルも生じましたが、徐々に改善され、J-PlatPatの新機能を堪能できる状況になってきています。

特許庁は改善されるJ-PlatPatの機能を解説するため、本年4月に「J-PlatPat 特許情報プラットフォーム機能改善のご紹介」(以下、「本資料」)と題する資料を公表し、だれでも手軽に使えるようにJ-PlatPat[1]の浸透を図っています。
また特許庁では毎年行なっている知的財産権制度説明会の中で、INPITではJ-PlatPatについての説明会を実施していますし、INPITのサイトでもより詳しい説明資料がありますので、参考とされることをお勧めます。


技術者・研究者向けの活用例
今回は、技術者・研究者の皆様に向けて紹介します。近時は研究開発をしている技術者、研究者自ら先行文献調査をし、技術動向を特許等の知的財産の面からも調べることが重要となってきているからです。

従来、研究者、技術者の皆様は特許調査といえば組織の知財担当者に任せきりの面がありました。しかしながら、新規の発明は専門用語が飛び交うため、知財担当者よりもむしろ研究者、技術者が特許等についても調査するほうがより的確な調査ができると考えられます。そのことで知財担当者はさらに深く特許等の解析、経営面への寄与など、本来行うべき業務へと主軸を移せることになるわけです。

またJ-PlatPatはワン・ポータル・ドシエ(OPD)として世界各国の特許も同じPC上で即座に情報取得できます。このことは、特許等を通して研究開発を加速させる有益なツールとなることを意味しています。従来は商用データベースや欧州特許庁のデータベースなどに頼っていた案件のかなりの部分をJ-PlatPatにて行うことができるようになり、日本語以外は馴染みの薄い方であっても十分にその目的を果たすことができるようになったと考えられます。

例1 情報収集
J-PlatPatは無料のデータベースですので気軽に使えます。J-PlatPatにアクセスすることで、例えば注目される技術がどのような特許発明に基づくかを確認したり、商標の場合には注目されるネーミングなどを調べたりと情報収集が容易にできます。また特許以外の科学文献情報も含まれますので、幅広く情報収集できます。

例2 経過の追跡
J-PlatPatは特許等の権利化に至る経過や権利化後の処分等を追跡調査できます。このため、特定の技術分野や出願人の出願した特許等の経過を定期的に確認できます(一般にSDIと称されます)。経過を追跡することで、審査官へ情報提供したり、特許後には特許異議申立をすることも考えられます。

例3 海外事業展開検討
ワン・ポータル・ドシエ(OPD)として世界各国の特許情報を取得できますので、特定の事業分野(例えば二次電池、情報家電分野など)において国内のみならず海外における権利化状況が詳らかになります。このことにより会社の事業展開を検討する上で、どの国に事業展開し、またどの会社と協業するかといった事業戦略を練るための予備的な情報を得ることができます。


機能改善
タイムラグの改善
各法域メニューの中で、経過情報を照会する際のタイムラグが改善されます。本資料では「原則、特許庁で書類が発出された翌日に審査・審判経過情報が反映され(る)」ということです。このことは自社事業と競合する他社の公開特許等の帰趨を即座に追跡できることになります。状況を即時的に追跡し、必要に応じて情報提供をし、また特許異議申立のための資料調査ができると思われます。また一方で、新規な自社製品の事業化にあたっても他社特許の帰趨を早く見積もることができ、事業の効率化に資することができます。

提供される書類の範囲拡充
各法域メニューの中で、経過情報を照会する際に確認できる資料が増えます。本資料では「意匠・商標における審査段階の書類の内容を確認することができるようになります。また、審判段階の書類についても確認できる書類が増え(る)」ということです。このことは自社事業と競合する他社の公開特許等の状況をより的確に、精密に追跡できることになります。状況を的確にかつ精密に追跡し、自社の開発、製品化の適否が判断しやすくなります。また審判段階の書類をPC上で確認できるため、今までのように書類ベースの包袋閲覧等により時間、費用がかかる作業を省略でき、効率的かつ財布にやさしい対応をとることができます。

検索対象の拡充
特許・実用新案メニューの中で、番号紹介および検索を統合すると共に、中国、韓国特許文献が追加されます。本資料では「中国公報や韓国公報が検索可能とな(る)」ということです。このことは近時に劇的に出願数が増えている中国特許等や、半導体を中心に、IT産業、IoT含みの機械、電機産業に拮抗する韓国特許等の調査には欠かせないツールとなります。日本人であれば漢字についてはある程度意味を把握することができても検索までには至れず、ましてやハングルについては蚊帳の外といった状況でした。これを最近とみに精度が向上している機械翻訳により、検索可能となるメリットは大きいと思われます。
また商標メニューの中で、権利が消滅した商標も検索対象となります。このことで、自社出願予定の標章の権利化の幅や選択肢が増えることになると考えられます。

機械翻訳の改善
各法域メニューに共通の変更点として、英語から日本語への機械翻訳の精度が向上したことで使いやすくなっています。本資料では「機械翻訳エンジンを刷新し、ニューラル機械翻訳等による訳質が向上した英語翻訳を提供(する)」ということです。これにより自社事業と競合する中国、韓国の会社の動向をより的確に、精密に追跡できることになります。状況を的確にかつ精密に追跡し、自社の開発、製品化の適否が判断しやすくなります。また公報をPC上で確認できるため、今までのように書類ベースの時間、費用がかかる作業(例えば印刷、翻訳)を省略でき、効率的かつ財布にやさしい対応をとることができます。なお、権利判断のような自社事業に大きく影響する判断を要する場合には、機械翻訳ではなく、専門家による正確な翻訳と判断が必要となりますので、留意ください。

使いやすさの改善
検索結果に付随する情報の内容参照がしやすくなるとともに、その情報を次の検索に利用しやすくなります(本資料)。例えば特許・実用新案検索結果として特許・実用新案のリスト表示の外に、日本特許・実用新案に対応する外国特許、非特許文献も一緒に表示できるようになります。また公開公報より特許公報への移行、FI分類の内容確認、ヒットした文献の分類ランキング表示など、利便性を向上させています。
キーワード、文献番号による、四法での横断的な検索が可能になります。検索結果が上限を超えた場合は自動絞り込みを行います(本資料)。
検索結果のリスト表示で検索項目毎のソートが可能になります(本資料)。ソートを工夫することで報告書として用いることができるとともに、例えば出願日順や公開日順により自社出願特許の先行文献対象を確認することができます。
HTML5の機能をご利用いただくことで検索式の再利用が可能になります(本資料)。例えば、繰り返して用いる論旨式を保存することで、SDIとして自社開発あるいは事業に関連する他社特許の定期的な検索抽出、他社の動向調査などもやりやすくなります。
以上に紹介した機能改善のほかにも各種機能の改善が図られていますので、一度アクセスして実感して頂くことをお勧めします。

セキュリティの改善
従来はパスワード(別画面で表示)入力によりアクセス可能となっていました。今回は米国特許・商標庁(USPTO)のPAIR(経過情報サイト[2])にアクセスされた方はご存知のように、ロボット操作(リモート操作)を排除すべく、『私はロボットではありません』ことを確認するゲートがあり、面食らう方も出てくるかもしれません。これらは公報の全文ダウンロードの際に出現しますが、数件程度のダウンロードであれば大きな支障にはならないと思われます。

参考
[1] 特許情報プラットフォーム J-PlatPat
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp



[2] 米国特許商標庁 PAIR(Public Patent Application Information Retrieval)
 https://portal.uspto.gov/pair/PublicPair

監修:特許業務法人ナガトアンドパートナーズ



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