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Vol. 31
このコーナーでは、ユーザーの皆様に役立つような税務、会計、労務、法務などの総務情報を中心に取り上げ、専門家の方にわかりやすく紹介いただきます。今回は、「意匠法の改正」を特集します。保護対象となる画像デザインの追加や、改正に伴うGraphic Image Parkの活用、意匠登録についてご紹介いたします。
 

 令和元年意匠法の改正(画像意匠を中心に)
  ―意匠が使いやすくなります―

意匠制度の目的
意匠法は、意匠の保護及び利用を図ることにより、意匠の創作を奨励し、産業の発達に寄与することを目的とします。特許法が自然法則を利用した技術的思想の創作を保護するのに対し、意匠法は、形状、模様、色彩といった視覚に訴える意匠(デザイン)の創作を保護します。

意匠法上の意匠とは(保護対象)
意匠法では、「意匠(デザイン)」を「物品(物品の部分を含む)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合、建築物(建築物の部分を含む)の形状等又は画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む)であつて、視覚を通じて美感を起こさせるもの」(意匠法第2条第1項)と定義しています。
今回の意匠法の改正により、従来は有体動産である「物品」の意匠に限られていた保護対象に対し、「建築物」の意匠及び「画像」の意匠(画像デザイン)が新たに追加されました。

令和元年の意匠法改正
近年の技術進歩は目覚ましく、殊にAI(人工知能)およびIoT(モノのインターネット)が社会へ浸透するに従い、デザインの重要性が叫ばれるようになってきています。デザインは会社が顧客ニーズを的確に判断する際に重要な指標になりえ、また、会社ブランドの確立にも商標とともに重要な要素となってきています。
わが国ではこうした意匠の重要性を認識し、会社の事業運営を支援してデザインを企業の事業戦略に組み入れやすくするため、意匠法を抜本的に正しました。令和元年の改正意匠法は2019年5月17日に公布され、改正事項の多くが2020年4月1日に施行されました。
以下では、令和元年の改正意匠法を概観すると共に、主に画像意匠の取り扱いについて説明いたします。

改正意匠法の概要

1 意匠法の保護対象の拡充(令和2年4月1日施行)
 (一)意匠の定義を見直し、建築物及び画像が保護の対象となりました。
 (二)意匠に係る画像の作成を実施の定義に追加する意匠の実施の定義が見直されました。
2 関連意匠制度の拡充(群のデザインを保護する制度)近年の複数の製品群を一貫したコンセプトに基づいてデザインする手法に対応するため、デザインによる競争力強化において有効となるように、関連意匠の出願可能期間を延長し、また関連意匠を連続的に保護できるように規定が見直されました。
3 意匠権の存続期間を出願日から25年経過した日となりました。
4 複数の意匠について一の願書で出願できる制度が導入されました。
5 物品区分の扱いが見直されました。
6 創作非容易性の水準を明確にし、刊行物やウエブサイト等に掲載された形状・模様等も判断資料とすることになりました。
7 組物の意匠についても部分的に意匠登録できるようになりました。
8 取締り回避のため侵害品を分割して製造・輸入等する行為に対し、間接侵害規定を拡充して取締り可能となりました。
9 手続救済規定を拡充し、提出期間経過後も一定条件下で提出可能になります。
10 損害賠償算定方法を見直し、権利者の生産・販売能力等を超えてもライセンス相当額を損害額と認定できるようになります。
※1〜8は2020年4月1日から施行。9,10は公布日から2年以内に施行予定。

前記の通り、令和元年の改正意匠法は抜本的な改正です。これらをすべて網羅して説明することは誌面の制限があるため難しく、改正内容の内、画像の保護について、以下に説明します。

画像デザインの保護[1]
表示画像および操作画像の内、物品の記録・表示される意匠の保護から、改正により、物品に記録・表示されていなくても、表示画像および操作画像そのものを保護できるようになりました。下図では、サーバに記録され利用の都度送信される画像や、道路に投影される画像も保護対象になり、デザインを創作する設計者等の自由度が広がります(図1)。

図1 保護対象の改正

   

但し、下記の壁紙等の装飾的な画像、映画、ゲーム等のコンテンツ画像など、画像が関係する機器等の機能に関係のない画像は保護されません(図2)。

図2

意匠登録出願のためのチップス[2]
上記の通り、令和元年の改正意匠法においては、保護対象が建築物、内装、画像自体へも拡充され、関連意匠制度、組物意匠、部分意匠制度も保護が手厚くなりました。このため、制度を有効に活用するために、例えば以下のような方法が考えられます。
 ・日本特許庁ではJ-PlatPatと称する産業財産権のデータベースを強化し、昨年5月7日から運用しています。意匠につきましても書誌事項による検索
 に加え、“Graphic Image Park”(画像意匠公報検索ツール)により画像意匠を検索できるようになっています(図3)。このようなツールにより先行意匠、
 画像などをサーチした上で、意匠登録出願することで、より迅速に権利取得でき、会社事業を強力に支援できる手段となるでしょう。
 ・特許出願したところ、権利獲得が困難となった状況下でも一定要件を満たせば、意匠への変更出願が可能です(特許法第46条、意匠法第13条)。
 意匠登録出願では特許出願とは異なり技術内容の対比などは要件ではなく、登録したい意匠とそれに類似等する形状・模様等との対比となります。
 変更出願が適法であれば特許出願時に遡及効が認められますので、権利取得の可能性があります。
 ・意匠制度において、特殊な出願として所定の要件を満たせば、登録から最長で3年間は秘密意匠として登録意匠の実体部分を公報に掲載せずに秘
 密にできます(意匠法第14条)。これにより、斬新なデザイン開発を他社に知られずに進めることができ、競争力強化につながります。

図3 Graphic Image Park活用イメージ


以上に紹介した活用例のほかにも種々の活用が考えられます。弁理士等の専門家に相談されることを勧めます。

出典
[1] 特許庁:イノベーション・ブランド構築に資する意匠法改正 −令和元年改正−
[2] 特許庁:令和元年実務家向け説明会資料 「意匠制度をめぐる近年の動向」

監修:特許業務法人ナガトアンドパートナーズ



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