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錯視とS3D(立体視)
- 最近では、人間が目で見たものを知覚する仕組みについての最先端の研究が、映像表現などの分野で活用されています。今回は、そのなかでも「錯視」や「S3D(立体視)」の仕組みや特徴と、その応用例について解説します。
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錯視とは
「錯視」は視覚についての錯覚を意味する言葉で、一般的には「目の錯覚」とも表現されます。つまり、目で見て知覚したものが、実際の物理的なものとは異なるように見える現象のことを指しています。たとえば、同じ長さの線や同じ大きさの図形が違って見えるなどといった例は、どこかで目にしたことがあると思います。これらは「幾何学的錯視」と呼ばれ、図形の幾何学的性質、つまり、線分の長さ、面積、方向、角度などの関係が、物理的な関係とは異なって認識されることをいいます。この他にも昔からさまざまなタイプの錯視が知られていますが、現在も新しいものが発見されたり作られたりしています。
S3D(立体視)の仕組みと特徴
近年、立体的な映像を見ることができる「3Dテレビ」が注目を集めています。この場合の3Dは、いわゆるCGなどでいう通常の3Dとは意味が異なり、「立体視ができる3D」ということを指しています。そのため、前者のような単なる3Dと区別して、S3D
(Stereoscopic3D)のように呼ばれています。立体視は左右の目の見え方の違い、つまり「両眼視差」を利用して作り出します。実際、最近の3Dテレビでは、左右の目に別々に用意した映像を用意し、専用メガネを使ってそれを交互に見ることで映像を立体化する方式が主流となっています。両眼で見た異なるものを脳が瞬時に演算して立体認識しているというわけです。このように、立体視も錯視と同様、目で見たものが実際にはどのように知覚されるかという仕組みに依っています。
通常の3Dと異なるS3Dの特徴としては、基準となる他のものと比較することなく、物体の大きさそのものが認識しやすいように表現できるということがあります。また、質感の表現におけるリアリティの向上もその1つです。前述のように、人間はものを2つの目で異なる側面から見てそれを「融像」しています。そのため、左右の目に入ってくる光の反射が異なりそのどちらかが強い場合は、左右の画像が重ならずにちらちらと見えます。これは、他の方法では出しにくい、ものの光沢/つやなどの材質感のリアルな表現に利用できます。
S3D利用の応用分野と具体例
S3Dの最大のメリットは、「目で見たそのもの」の大きさと奥行きなので物体を直感的にとらえやすく、また、空間認識がしやすいという点です。このため、医学分野などの迅速な判断が必要とされるような場が立体視において最もニーズの高い分野といえるでしょう。また、薬学や生命体の分析、宇宙開発分野などでもS3Dの技術が応用されています。たとえば、立体視が可能な衛星によって、宇宙や星の空間的な情報などが収集されています。この他にも、教育やエンターテインメントの分野での活用も目立っており、博物館や美術館などのアーカイブ作成などでも使われています。最近では、ロックバンドのU2が自らのライブ映像を撮影し、映画館や劇場などでS3Dによるコンサート開催を行ったことも話題になりました。
このように、S3Dは非常に注目を集めており、当社も参加している「三次元映像のフォーラム」でも、2011年10月29日に「錯視&S3D研究会〜人は何を見て、何にだまされているのか」という研究会・ワークショップが明治大学「錯覚美術館」で開催されています。今後もさまざまな分野での研究・応用が進んでいくことが期待されています。
参考:
■三次元映像のフォーラム: http://www.hi.is.uec.ac.jp/3Dforum/information.html
■明治大学 錯覚美術館: http://compillusion.mims.meiji.ac.jp/museum.html |
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