Ver.7では、主に次の機能追加や拡張を行いました。
- 支え壁式擁壁の検討
- 擁壁背面に構造物隣接時の土圧計算
- 直接基礎の平板解析(底版拡張オプション)
- 調表:詳細設計照査要領(平成29年)書式
以下に、これらの機能の概要を紹介します。
控え壁式擁壁の利点としては、躯体のコンクリート量が通常の片持ちばり式擁壁に比べて少なくなることや、底面反力が比較的小さいため基礎地盤の良くない場合に採用出来るといったことが挙げられます。しかしその反面、背面側に控え壁が突出していることから施工性に難点があり、特に裏込め土の締固めは他の形式に比べて入念にすることが要求されるという欠点もあります。
それならば突出壁が前面側となる支え壁式擁壁であればどうでしょうか。支え壁式であればコンクリート量を通常の片持ちばり式よりも減らせるといった利点はそのままに、背面側に突出している壁も無いため、裏込め土の施工性は片持ちばり式と同様となります。
Ver.7では、この支え壁式擁壁の検討に対応しました。
支え壁の部材照査では竪壁と支え壁、つま先版と支え壁で形成されるT形ばりとして照査を行います。また竪壁及びつま先版の設計は、竪壁・つま先版と支え壁で支えられたスパンを連続ばりとみなして設計し、支え壁より前方部分については通常の擁壁と同様に片持ちばりとして設計します。
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図1 支え壁式擁壁 |
図2 つま先版の照査 |
連続ばりとみなして照査する場合は、その断面力の算出方法を「両端固定ばり」「連続ばり」「n径間連続ばり」から選択することが出来ます。
クーロン土圧式や試行くさび法による一般的な土圧算定手法は、擁壁の背面土の範囲に制限がないことが前提となっています。つまりは本線擁壁に近接して坂路擁壁を建設するといった場合等のように、擁壁の背面に構造物等がある場合は一般的な手法では土圧を算定できない事となります。
Ver.7では、このような擁壁背面に構造物が隣接している場合でも土圧算定が行えるようになりました。試行くさびすべり面が構造物と交差する場合には、仮想背面とすべり面及び構造物に囲まれた土塊に作用する力の釣り合いから土圧を算定します。
旧バージョンまでは杭基礎のみに限定されていた平板解析による底版設計を、直接基礎の場合でも検討できるように拡張しました。
平板要素による底版中央部の照査として、弊社製品「Engineer's Studio®」の平板解析を用いて前壁及び控え壁を固定辺としたモデル化を行い材料線形として解析を行います。また、計算実行時のエクスポート機能により「Engineer's
Studio®」で読み込むことのできるファイル形式(*.es)に保存することができます。
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図5 直接基礎平板解析の照査位置入力画面 |
図6 直接基礎平板解析の断面力図 |
平成29年3月に「詳細設計照査要領」が改訂され各地方整備局のホームページで公開されています。控え壁式擁壁の設計計算でも「詳細設計照査要領」の書式を参考とした設計調書に対応しておりますが、平成29年版に未対応だったため、Ver.7より平成29年版の書式を参考としたテンプレートを追加しました。
設計調書作成時に追加テンプレートを選択するだけで、新たな書式の調表を作成することが出来ます。また旧書式についても同様に選択可能となっています。
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