「揚排水機場の設計計算 Ver.4」では、以下の機能を追加、および機能追加2件・改善6件を併せて行いました。
- 『土地改良事業計画設計基準及び運用・解説 設計「水路工」』における液状化判定に対応
- 『河川構造物の耐震性能照査指針』における液状化判定に対応
- 土質定数の低減係数DEの算出に対応
- 『道路橋示方書・同解説 IV下部構造編』におけるせん断耐力照査に対応
- 独立行政法人土木研究所発行『計算事例-10』における曲げ耐力照査に対応
- 3Dアノテーションに対応
本製品における液状化の判定は、FL法を用いております。このFL法のLを求める際、設計水平震度を算出しますが、この算出方法が基準によって異なります。そこで、液状化の判定において適用基準(設計水平震度の算出方法)を選択できるようにしました。
『水道施設耐震工法指針』では、構造物の重心位置における基準水平震度を当該書籍の表から地盤と構造物の固有周期TおよびTGを用いて導出し、地域別補正係数Czや構造物特性係数Csを乗じて算出します。『土地改良事業計画設計基準及び運用・解説 設計「水路工」』では、地盤面の設計水平震度の標準値KhgL0を当該書籍の表(表1)から地盤種別と地震動レベルを用いて導出し、地域別補正係数を乗じて算出します。
地盤種別
|
レベル1
|
レベル2タイプT
|
レベル2タイプU
|
T種地盤 |
0.12
|
0.3
|
0.8
|
U種地盤 |
0.15
|
0.35
|
0.7
|
V種地盤 |
0.18
|
0.4
|
0.6
|
表1 液状化判定に用いる地盤面の設計水平震度の標準値 KhgL0
『河川構造物の耐震性能照査指針』では、上記と同様にkhgを地盤種別と地震動レベルを用いて導出し、地域別補正係数を乗じて算出します。オレンジ色に着色した項目が、上記の土地改良事基準と異なる箇所です。
地盤種別
|
レベル1
|
レベル2タイプT
|
レベル2タイプU
|
T種地盤 |
0.16
|
0.3
|
0.8
|
U種地盤 |
0.2
|
0.35
|
0.7
|
V種地盤 |
0.24
|
0.4
|
0.6
|
表2 『河川構造物の耐震性能照査指針』における khg
従来プログラムでは、一度計算を実行して液状化の判定を行った後、その結果から土質定数の低減係数DEを導出して入力し、再度計算を実行する必要がありました。そのため、地盤が左右対称の場合に合計2回、左右非対称の場合に合計3回の計算実行が必要でした。
Ver.4では、既に入力されている情報から計算実行前に液状化の判定のみを左右両方向で行い、その結果を以って地層データ毎に低減係数DEを自動算出することで、必要な計算実行の回数を1回に減らしました。
液状化による土質定数の低減を考慮した解析の作業フローを図1に示しますが、50%以上の作業を省略できるため、計算1回の所要時間が長ければ長い程、業務効率の向上が見込むことができます。
既存の照査に加え、『道路橋示方書・同解説 IV下部構造編』におけるせん断耐力照査と、独立行政法人土木研究所発行『計算事例-10』における曲げ耐力照査に対応いたしました。
このせん断耐力照査は、レベル2地震時の耐震性能2および耐震性能3の照査に適用できる照査方法となっています。レベル1地震時の照査については、従来通り『コンクリート標準示方書 2012年制定 [設計編]』の照査方法を使用します。
この曲げ耐力照査は、揚排水機場の数少ない計算例の1つとして有名な『計算事例-10』の照査方法となります。これは、道示等に記載されている、部位毎に算出された設計曲げモーメントMdとひび割れ曲げモーメントMyを比較する耐力照査とは異なり、設計曲げモーメントMdと終局曲げモーメントMuと比較して照査を行います。
弊社では、CIM(Construction Information Modeling/Management)を推進しており、UC-1シリーズの各ソフトウェアにおいて、CIMモデルに構造特性(寸法・注記、数量等)やモデル管理情報を加えた「3DAモデル(3D Annotated Model)」を表示・出力できるように開発を進めています。
本製品においても、Ver.4にて3Dアノテーションに対応いたしました。本製品は、各スラブや各壁に対して、部材の削除や部材厚の変更が行えるため、図2のような複雑なモデルを作成することができますが、そのような場合にも寸法が表示できるように対応しています。