はじめに
「管網の設計・CAD」は、「水道施設設計指針2000年版 日本水道協会」に定められている上水道の水圧・水頭・流速などに関する規定に準じて照査を行います。管網の入力は地図上での直感的な入力と、表形式での一括入力の2種類により定義していくことが可能であり、結果は管網図での出力および計算書出力で確認が可能です。
今回は先日リリースしましたVer.2.0.0にて新たに対応しましたウェストン式、マニング式、そして火災時のみの出力について概要をご紹介します。
ウェストン式への対応
管の摩擦損失水頭は一般に管径75mm以上はハーゼンウィリアムス式を用い、管径50mm以下の細い管路にはウェストン式を用いるとされています。管網の設計・CADはこれまで前者にのみ対応していましたが、本バージョンよりウェストン式に対応しました。この改定により管路網の上流となる大口径管だけでなく、小規模な小口径管でも適切な式により計算が可能となります。本プログラムでは与えられた節点毎の水頭と管路の流量を全体で連立方程式にして行列計算することにより結果を求めています。行列計算の各管路要素ごとに流量と損失水頭を定式化した特性値をkiとしますが、ハーゼンウィリアムス式の管路要素iの特性値kiが(1)のようになっているのに対し、ウェストン式の管路要素iの特性値kiは(2)のようになります。
・・・・・・(1)
・・・・・・・・・・・・・・・(2)
ここに、
C:管路要素の流速係数
D:管路要素の内径
L:管路要素の長さ
λ:摩擦係数
g:重力の加速度(9.8m/sec2)
僣i:管路iの損失水頭
マニング式への対応
本バージョンでは上述の公式に加えてマニング式に対応しました。マニング式は自然河川で用いられる公式ですが、上水道でも内面が粗い水道管の乱流域に適用されることがあります。本製品のマニング式は満管時の上水道の計算にのみ対応しています。古くなった管の解析を行う場合など内面が粗い条件での解析が求められる場面において、より正確な計算結果を提供します。流量と水頭についてはマニング式も上述の公式と同じように行列計算を行っており、行列計算の各管路要素ごとに流量と損失水頭を定式化した特性値kiは(3)のようになっています。
・・・・・・・・(3)
ここに、
n:粗度係数
火災時のみの出力への対応
これまでは火災時・平常時両方の出力と平常時のみの出力が可能でしたが、本バージョンでは火災時のみの出力に対応しました。総括表、管網図での結果確認、計算書にて火災時の結果だけをピックアップして表示することが可能です。特に管網図での結果確認では視覚的にNGである箇所が明確になるため、本機能によりNGがあるケースの検討が容易に行えます。
おわりに
今後予定している改訂内容としましては、扱える節点数および管路数の上限拡大や、3Dアノテーションおよびアトリビュートへの対応など、機能拡張やCIM対応を検討しています。どうぞご期待ください。