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今回は、Windows Vista対応をはじめ、解析部から断面計算部までの広範囲にわたって機能を強化しています。さらに、複数のファイルを一括して計算できるツールも添付します。改訂内容を機能別に整理すると下表のとおりです。
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機能 |
改訂内容 |
有償改訂 |
固有値解析 |
計算速度向上 |
─ |
解析部(ソルバー) |
バンド幅の最適化
数値演算ライブラリ更新 |
─
─ |
断面作成 |
形鋼データベース拡張 |
─ |
曲げ応力度の照査 |
最小鉄筋量の照査
鉄筋の許容応力度追加
二軸曲げ応力度計算の収束改善 |
○
─
─ |
せん断照査 |
せん断有効高さ算出改善
せん断補強筋の照査改善 |
─
─ |
ファイバー要素 |
鋼製部材のひずみ照査
鋼材ヒステリシス拡張 |
○
─ |
地震波形 |
線形補間機能追加 |
─ |
他製品連動 |
SDNFファイル連動 |
○ |
動作環境 |
Windows Vista対応 |
─ |
ツール |
複数ファイルの連続実行 |
○ |
|
●固有値解析の計算速度向上
節点数の多い大規模モデルでは固有値解析が遅いという問題に取り組み、大幅に改善しました(下表参照)。いずれも約50個程度のモードを算出したときの比較です。
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モデル |
Ver.2.01 |
Ver.3 |
改善効果 |
鋼上路式アーチ橋 |
1分42秒 |
3秒 |
34倍速い |
2径間斜張橋+3径間桁橋 |
5時間5分 |
1分54秒 |
160倍速い |
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●バンド幅の最適化
解析部(ソルバー)では、大規模な行列(=全体剛性マトリクス)を作成しています。この行列は対角線上に有意な値を持ち、非対角部分にはゼロを多数持つ性質があります。対角線上に数値が集まるように行と列を並び替えることをバンド幅の縮小と呼びます。バンド幅が小さいと演算速度は早くなりますが、最適化処理のコストがかかります。今回は、両方のコストバランスを考えて改善しました。
●数値演算ライブラリ更新
解析部(ソルバー)にはインテル(株)が提供する数値計算ライブラリMKL (
= Math Kernel Library )を使用しています。MKLはコンピュータのCPUの種類を自動的に認識して最適な演算処理を実行するように設計されています。今回はこのライブラリを従来のVer.5からVer.10へアップデートしました。多元連立方程式を解く処理性能が向上し、約1.2〜1.7倍の演算速度向上を計測しました。
●形鋼データベース拡張
本製品には鋼断面を作成するために形鋼データベースを搭載していますが、これを大幅に整理・拡張しました。今回対応した規格は、JIS(2006)・デザインデータブック(2001/2006)に掲載される主要な種類です。また、一部の鋼鉄メーカ製の形鋼にも対応しました。この形鋼データベースは、MultiSUITE
Software社とも協議して、同社の鋼構造CAD製品「MultiSTEEL」にも搭載される予定です。
●最小鉄筋量の照査
道路橋示方書(以下、「道示」と呼ぶ)に準拠した最小鉄筋量の照査機能を追加しました。道示IIIコンクリート橋編と道示IV下部構造編に準拠した照査を行うことができます。
●鉄筋の許容応力度追加
道示に規定されている鉄筋の許容引張応力度「活荷重および衝撃以外の主荷重(SD295/SD345:100N/mm2)」に対応しました。従来は不便だった上部構造部材や下部構造はり部材に対する許容曲げ応力度の照査が可能です。
●二軸曲げ応力度計算の収束改善
本製品の応力度計算は、常に軸力と二軸曲げが作用することを想定しています。今回この計算方法を大幅に見直しました。その結果、荷重状態によっては収束しない場合があった問題を解消することができ、安定した解を得るようになりました。同時に、計算時間も約3倍以上短縮しました。部材数や荷重ケースが多い場合にはこの改善効果がみられると思います。
●せん断有効高さ算出改善
本製品には有効高さ算出方法に、「円」「小判」「図心」「中立軸」「直接入力」の5種類があります。今回の改訂では、「図心」と「中立軸」を廃止して、新たに「dの算出」を設けました。「dの算出」では、「圧縮縁から鋼材図心までの距離をd」とするように簡略化し、鋼材図心を求めるために対象となる鋼材の範囲を指定するようにしました。
●せん断補強筋の照査改善
断面がコンクリートだけでせん断力に抵抗できない場合は、せん断補強筋の必要面積Awを算出したり、せん断補強筋の許容応力度照査を行ったりすることがあります。このときに必要な鉄筋の許容応力度は、荷重や部材の状態に応じて異なります。従来の版では1種類しか入力できませんでしたが、今回、鉄筋材料を指定するように変更しました。これによって、適切な許容値をプログラムが自動的に用います。
●鋼製部材のひずみ照査
「鋼橋の耐震・制震設計ガイドライン」(宇佐美勉編著・日本鋼構造協会編、2006年9月1日、技報堂)に準拠した鋼製部材に対するひずみ照査機能を強化しました。鋼製部材をファイバー要素でモデル化したときに照査可能です。この機能はVer.2.01.00から搭載していましたが、今回大幅に機能アップしました(下表参照)。
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機能 |
改訂内容 |
Ver.2.01.xx |
Ver.3 |
構造安全性 |
鋼圧縮部 |
○ |
○ |
鋼圧縮部 |
× |
○ |
コンクリート充填部 |
× |
○ |
地震後の使用性 |
鋼圧縮部 |
× |
○ |
コンクリート充填部 |
× |
○ |
部分係数を用いた照査フォーマット |
× |
○ |
結果画面 |
一覧表示
詳細表示
時刻履歴グラフ |
×
×
× |
○
○
○ |
結果のテキスト(csv)出力 |
○ |
○ |
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●鋼材ヒステリシス拡張
ファイバー要素に用いるヒステリシス(応力-ひずみ曲線の骨格と内部履歴)のうち、鋼材用のヒステリシスにMenogotto-Pintoモデルがあります。このモデルにはバウジンガー効果を表すパラメータRbがありますが、そのパラメータは今まで「Rb直接指定のみ」でした(下式参照)。今回、「Rb0、a1、a2」の3つを入力できるように拡張しました。
また、簡易なバイリニア型移動硬化則を鋼材ヒステリシスに追加しました。
●線形補間機能追加
ご要望の多かった地震波の線形補間機能に対応しました。ただし、細かい積分時間間隔を入力すると結果データが膨大になるので、必要な場合にご利用ください。
●SDNFファイル連動
国際的な鋼構造の業界標準ファイル形式と言われているSDNF(= Steel Detailing
Neutral File)ファイルのインポート/エクスポート機能を追加しました。これにより、4.で触れたMultiSTEELとの連動も可能です。両製品とも同じ形鋼データベースを持つので、相方向のデータやりとりを行うことができます。
●Windows Vista対応
プログラム本体、ヘルプともにWindows Vistaに対応しました。
●複数ファイルの連続実行
本製品のデータファイル(*.f3d)が多数あるときに、それらを順番に「読み込み・計算実行・結果保存」を行うツールを開発しました。必要な設定は、あるフォルダにf3dファイルを収容し、そのフォルダ名をツール上で指定するだけです。計算エラーが生じた場合はそのメッセージを保存してスキップし、次のファイルを計算します。
■UC-win/FRAME(3D)Ver.3.0 リリース予定日:2008年3月 |
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(Up&Coming '08 早春の号掲載) |
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