津波解析 |
■津波の発生メカニズム
海底面下を震源とする地震が発生した場合に、海底地盤が隆起もしくは沈降運動が起こります。この地殻変動が起きることによって、その直上の海面が上下に変動し、大きな波となって伝播するものが津波となります。
この波は,深い場所では時速700kmものスピードで伝幡し,浅くなると遅くさせますが,同時に波高を増し,破壊力を増加させます.津波警報が発令されると、被害を避けるために、港に停泊している船舶は沖合に避難しています(沖だし)。これは、津波が沖合では海が深く大きな潮のように感じるのみで津波エネルギーが小さいためであります。
"津波"の語源の由来は、沖合を航行する船舶の被害が少ないのに対して、"津"『港のこと』では被害が大きくなることであります。現在、津波という用語は英語の表記においても、"tsunami"と表現されています。
津波の速度は、水深に重力加速度を掛けて平方根を取って得られます(v=√gd)。ここで、水深が4,000mと仮定すると、津波の速度が約720km/h(200m/s)となります。これは、ジェット機なみの速さです。
■津波予報の現状
日本では、1952年に津波予報が整備され、幾多の津波災害を経験して、1999年4月より「量的津波予報」に移行しています。この「量的津波予報」は、現在では地震発生後数分で、ほぼ都道府県ごとで、沿岸での予想される津波の高さを具体的な数字で表しています。
最先端の津波予警報システムを運用する日本ですが、このシステムには、現在、2つの課題があると考えられています。一つは、津波の波源となる断層を日本近海に4,000箇所仮定した限定されたデータベース検索となっているため、その位置や面積などの初期値に誤差が含まれているという課題であり、もう一つは、日本全国を対象とした広域性および情報の早期発信という迅速性を重視しているため、地域ごとの詳細な情報提供が乏しいという課題であります。
■東北大学 今村文彦研究室の研究内容 1)
東北大学工学研究科附属災害制御研究センター・今村研究室では、津波に関する総合的な減災に関する研究をしております。今村研究室の研究内容等は以下の通りです。
研究内容:
災害(被害)は、自然現象(外力)と人間社会の営みとの干渉によって発生します。災害の様相も、人間活動の様式の変化に伴い、進化していきます。これからの災害対策は、過去の災害事例に基づいたものだけでなく、社会の発展と変貌する災害過程を予測し、地域の発展と脆弱性に応じたきめ細かなものであるべきです。
津波工学研究室では、工学的な立場から津波を研究する世界で唯一の研究機関です。災害対策・制御の理念を基盤として、
国内外の現地調査研究、高精度津波数値予測システムの開発、津波堆積物調査解析,地域の津波災害対策支援を主とした研究を行っています。
特に、津波の解析技術は世界の津波被害の予想される国への国際的な技術移転の対象となっており、TIME(Tsunami
Inundation Modeling Exchange)プロジェクトはその中核として位置づけられています。今村研究室の津波解析コードは、これまで世界22カ国41機関(平成20年4月現在)に技術移転され、津波災害の軽減に役立っています。
活動目標:
津波工学研究室では、以下を活動目標として、研究の実施、学生の研究指導、社会貢献を行っておられます。
・ 津波研究のフロントランナーとしての学術面での先導的役割を担う
・ 国内外の津波対策推進に貢献する
・ 宮城県沖地震・津波災害の被害軽減に資する研究活動・社会活動を積極的に実施する
・ 地域の防災力向上を目指した教育を地域で展開する
■今村研究室の津波解析コードの連携
東北大学の今村研究室で開発された津波解析コードを用いて、解析支援サービス等やUC-win/Roadとの連携を行っていく予定です。この津波解析コードを用いれば、ハザードマップの作成や津波に関する避難予測等にも適用可能です。今後の計画は、以下のようであります。津波解析の解析支援サービスUC-win/Roadの地形・建物・樹木等の基本情報をRoadデータから連携して取り込むことにより、入力の省力化を図ります。また、解析コードの計算結果をUC-win/Roadに取り込んで可視化致します。
■津波解析 2)
概要:
今村研究室における津波の数値計算には、浅水理論の差分法が用いられています。津波解析は、将来発生し得る津波について陸域の浸水範囲や浸水深さを予測する遡上シミュレーションを行っております。この計算により、構造物への波力の評価や漂流物の運搬、各メッシュ点における波の高さおよび速度を計算して津波高さ分布図等を作成します。
なお、海底地形情報(デジタル水深データ)については、海上保安庁などより公開されている資料があります。
入力条件等:
入力する条件等しては、震源情報(マグニチュード、震源深さ、位置などの断層のパラメータ)・海底地形データ(深さ、位置)・陸上地形情報等であります。
解析結果例:
2008年7月19日に発生した福島県沖地震での計算結果の一例を紹介します。仙台湾の中央部で大きな水位増加がみられます。仙台湾での沿岸で反射した津波が中央部で集中した結果です。
地震の規模は、M =6.6、震源深さ10km程度
この研究成果では、気象庁の予想到達時間よりも20分ほど遅れる結果となっていますが、観測結果とはほぼ一致した結果となっていると記載されています。 |
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▲図-2.最高水位分布例 3) |
■参考文献
1) http://www.tsunami.civil.tohoku.ac.jp/hokusai3/J/index.html
2) http://www.tsunami.civil.tohoku.ac.jp/hokusai3/J/events/20080719Fukushima.pdf |
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