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最新版製品価格 ●リリース 未定
シミュレーション

 クラウド型VRアプリケーションの目的
クラウドの一般的な有利点について
通常のスタンドアロンアプリケーションの仕組みでは、最低限VRアプリケーションを制御するコンピュータが必要です。このコンピュータで3D映像のリアルタイムレンダリングやシミュレーションの計算などを行うため、パソコンでも比較的高性能なものが推奨されます。
また、運転シミュレーションや歩行シミュレーションなどを行いたい場合は、特殊なシミュレータハードウェアが必要となり、最終的に複雑なシステム構成になる可能性もあります。

システムを導入して、実際に運用する上でコストの一般的な内訳としては以下のようなものが考えられます。

  1. VRアプリケーション費
  2. 用途ごとのコンテンツの開発費
  3. コンピュータやモニタ、ステアリングや筐体等のハードウェア費
  4. ハードウェア等の設置費、運送費
  5. システムの保守費用、更新費用

上記のうち、1〜4はイニシャルコストで、5はランニングコストになります。ランニングコストの内容としては、

  • 運用期間中のシステムのトラブルの対処
  • 世代が古くなり表現力や機能面が劣る状態となったVRアプリケーションの更新

などが考えられますが、一般に、一度設置したシステムはそのままの状態で長期間運用されることが多いため、個々のシステムに搭載されたVRアプリケーションはそれぞれ異なることがほとんどです。したがって、個々のシステムの状態を管理することが難しく、トラブルや保守上の問題が生じた場合は、復旧に多大な労力を要する恐れがあります。このような管理上の問題はシステムを導入する側にとっても負担となります。

このような問題は、クラウド型VR(SaaS)を導入することにより多くの部分が改善されます。たとえば、次のようなメリットが考えられます。

  • リアリティの高いVR映像を表示するには、高価で高性能のグラフィックボードが必要になるが、サーバ側でVR画像を作成するSaaSであれば、クライアントのコンピュータにはそれほど高い性能は要求されず、コスト面でも有利。
  • サーバ上のVRアプリケーションを更新すれば、接続されるすべての端末に適用されるため、個々のコンピュータの状態を把握する必要性は低い。このため管理に要する労力が軽減され、効率性が向上。
  • 個々のシステムのコンピュータにトラブルが生じたとしても復旧が容易。
  • VRアプリケーションがインストールされていないコンピュータであっても、ネットワーク環境があれば、いつでも、どこでも、どのコンピュータであっても運転シミュレーションが可能となり、機動性が向上。
  • 作成されたコンテンツをWeb上で公開し、一般の方に運転シミュレーションを体験していただくことも可能。
    これにより、計画に携わるごく限られた関係者だけでなく、多数の方々の意見を集約することが可能となる。多様なサービスの説明、体験や、広報等にも利用可能。


クラウド型VRを導入した場合、開発側、ユーザ側の両方にとってメリットがある。特に、システム保守や更新に要する費用が軽減されることから、コスト面のメリットも大きいと考えられます。

 
 ■図1、2 UC-win/Road、a3Sとクライアントの関係

 クラウド型VRアプリケーションの特長
VRは、現実の環境をリアルに再現し、その中で運転や歩行、環境とのインタラクション、他の人とのコミュニケーションが行えるという特徴を持ちます。広い意味で、誰でもどこでも使うことのできる「VRを用いたコミュニケーションツール」であるといえます。
このコミュニケーションツールは、シミュレーションを行いながら得られる情報と、他のユーザあるいは共同作業を行っているプロジェクトの関係者のために提供する情報(テキストや図)によるシステムです。
今回は特に、合意形成の手段としての機能開発を行いましたが、協調設計、教育、トレーニングなどの目的としても使用できると考えます。

VRは、多くの情報を統合してわかりやすい形で伝えることが可能な、優れたコミュニケーションツールです。また、シミュレーションによる可視化でさまざまな事象を容易に理解する助けにもなります。

一方でクラウドのメリットは、シンクライアントソフトウェアで、場所やマシン環境を問わずデータの管理やシステムの運用が柔軟に行えるということです。
VRアプリケーションに付加価値をもたらすため、外部の解析ソフトウェアとの統合を行い、VRアプリケーション単体では不可能なシミュレーション機能の構築が実現します。
スタンドアロンのシステムの場合は解析ソフトウェアを各ユーザのマシンにインストールして複雑な設定が必要になる上、各アプリケーションの整合性を確保するためにバージョン管理もユーザの負担にもなります。クラウド上に構築すれば運用上の負担がユーザ側でなくなると伴にサービスを提供している側でも管理とサポートがしやすくなります。

運用上のメリット以外にも、VRアプリケーションを他アプリケーションと統合することで、他アプリケーションのオンラインサービスの発展にもつながります。
これにより、避難解析のアプリケーションと連携して避難訓練、避難誘導の訓練、多ユーザによる避難実験を可能とするシステムなど、クラウドに付加価値を持たせることのできるサービスが期待できます。また、ロボットや一般的な機械・設備などの制御システムのための可視化と、クラウド型制御インタフェース構築なども考えられます。

 前バージョンからの改善
以前からリリースしているUC-win/Road for SaaSのパフォーマンスおよび機能性の改善を中心に開発しました。

パフォーマンスの面ではシステムのレイテンシ(ユーザが行った操作からユーザの画面上で操作の結果が反映されるまでの時間)が大きく短縮されました。レイテンシが大きい場合は違和感やシミュレーション酔いが生じたり、操作が困難になることもあります。
UC-win/Road for SaaSで導入しているシステム構成ではユーザが行った操作に対する計算および映像の生成をサーバ側で行い、その結果を映像として端末まで伝達します。端末とサーバの間のデータ通信によるレイテンシおよびデータの処理によるレイテンシが発生します。

今回の開発ではデータの処理の改善および情報の伝達で利用するネットワークプロトコール(TCP/IP)の使用方法を改善しました。これにより、ユーザ側で実感できるパフォーマンスだけではなくサーバ側の負担の最適化もできました。

フレームレートとレイテンシの測定は複数の解像度で実施し、図3のような測定結果が得られました。機能性に関しては以前よりUC-win/Roadにある多くのシミュレーション機能が使えるようになり、新たな合意形成の支援ツールも開発しました。

フレームレート* (frames/秒)  レイテンシ(ms)
画像解像度 旧バージョン  新バージョン  改良度 旧バージョン 新バージョン  改良度(平均)
320×240 27 50 185% 500-1500   100-400 400%
640×480 15  35  233% 500-2000  100-400 500% 
800×600 9  28  311% 700-3000 200-600  287%
1280×720 4  20 500% 1000-4000  200-600 625%
1920×1080  0.5  14  2800% 2000-4000 500-1500  300%
■図3 フレームレートとレイテンシの測定結果
※VR描画のフレームレートは、クライアントPCに描画される一秒あたりのフレーム数により算出する。フレームレートは、画面解像度と描画すべき、一秒あたりのフレーム数を与えることにより定義可能。
 システム構成
UC-win/Road for SaaSのシステムは複数のモジュールで構成されています。サーバ側にUC-win/Roadアプリケーションが起動し、クライアント側に新クライアントソフトウェアが起動しています。アプリケーションとクライアントの間、操作の情報、映像の情報、その他のデータの準備や通信を行うモジュールがあります。
今回UC-win/Roadとクライアントの接続を行っているシステムは独立したシステムとして開発し「a3s」と呼びます。a3sについては次の記事で詳しく説明します。

 クライアント側で使用できる機能
旧システムからの既存機能
視点の制御機能であらかじ保存した景観視点への移動および、視点の回転と直線移動が可能です。また、道路上の走行シミュレーションまた飛行ルート上での飛行シミュレーションが可能です。あらかじ設定されているスクリプトおよびコンテキストの実行も可能となっています。

運転シミュレーション
システムのパフォーマンスの改善でレイテンシを大きく短縮できたことで、運転シミュレーションが可能になりました。
また、一般的なPCで使用できるようにキーボードによる運転の操作を行う形になっており、今後は、各種ハードウェアとの連携を開発する予定です。今回はキーボードでのみ操作するので、運転シミュレーションの目標は本格的な運転というよりも、道路設計時の標識や電光掲示板などの視認性確認・デザイン検討のように、実際に運転するドライバーの目線から確認することを対象にしています。


■図4 運転シミュレーション

歩行シミュレーション
UC-win/Road 5.0でリリースした機能ですが、今回のUC-win/Road for SaaSで使用できるようになります。
通常はキーボードとマウスを同時に操作する形で歩行シミュレーションを行いますが、初心者に優しいマウスだけでの操作が可能になりました。また、自分がいる位置にアバターを表示する機能を用意しました。


■図5 歩行シミュレーション、アバターの表示

合意形成支援ツール
インターネット上にあるフォーラムと同じように意見を残したり、ディスカッションを行うことなどができるようになりました。


■図6 注釈機能

クライアントのGUI
従来のAdobe Flash Playerではなく、新たに開発したクライアントソフトウェアになりますが、同じように各種ブラウザでインストールができます。以前より、サーバから送信される映像を表示するまでのレイテンシを大幅に軽減しています。また、すべてのユーザインタフェースをOpenGLを用いて開発しました。 

■図7 OpenGLを用いたグラフィカルユーザインタフェース

シナリオ
UC-win/Roadのデータに設定したシナリオが実行できるようになりました。インタラクティブな運転シミュレーション、時刻歴やユーザの操作に応じた環境の変化、周辺の交通状況の変化が可能となっています。
また、今回の開発では主にUC-win/Roadのシナリオ機能の拡張を行いました。仮想空間にある3Dモデルをクリックすることでイベントの発動が可能になりました。仮想空間にある物をクリックすることで、現実と同じようにインタラクティブにイベントを何かを起こすことができるということです。 
 今後の展開
コミュニケーションの手段の拡張を行っていく中で同じVR空間に接続しているクライアント間のテキストチャット機能やオーディオチャット機能および他人のアバターの表示機能でより協調的なシステムになると考えています。VR空間でできる操作の拡張でシミュレーション機能だけではなく、VR空間の編集も含めて機能の拡張を行っていきます。
現在、PCというクライアントハードウェアに対応しますが今後、スマートフォンや多くの携帯デバイスに対応します。
最後に、他アプリケーションとの連携でより広いサービスの提供を行っていきたいと考えています。

(Up&Coming '11 新緑の号掲載)
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