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改訂製品のご紹介
UC-1 RC構造の2次元動的非線形解析WCOMD Ver.2.00
(RCモデルの高度化と地盤対応版)
 
■はじめに
 WCOMDは静的非線形解析プログラムWCOMR(1987年)を基盤とした動的版として1990年に第一期の完成を見ました。主として耐震壁の動的繰り返し応答解析がターゲットでした。その後、鉄筋コンクリート構成モデルの向上や地盤との連 成なども視野にいれた展開が図られ、その都度、更新されてきました。
 1995年の阪神淡路大震災では、WCOMDによる被災構造物の動的非線形応答解析結果が、東京大学コンクリート研究室から被災現地にいち早く送られ、この情報をもって開発プロジェクトリーダーの岡村教授は土木学会調査団員として現地被災調査に入られました。また、地震発生の1ヶ月後には動的解析の結果の一部をまとめた原稿が作成され、同年4月の土木学会誌に速報されたことは、 ご存じのユーザーもおられることと思います。
 地道な基礎研究の積み上げが功を奏した結果ですが、不十分な点もまた明らかとなり、第二期の開発に入ったのが1995年です。震災を契機として、適用構造物も耐震壁のような壁構造から、更に橋脚や寸法効果を呈する大型構造物などに拡大され、それに必要な機能も追加されてきました。
 今回ご紹介する版は1997年4月の段階での知見を取り入れた最新版として更新、リリースされるものです。以下に、過去の経緯から見た本版の特長を述べます。(関連記事を「ちょっと教えたいお話」ページに掲載)

 ▼メインウインドウ
 
■本版の特長
1)地盤モデル
地盤とコンクリートとの動的な相互作用を、高ひずみ領域まで解析する機能が付加されました。地盤モデルでは大崎モデルを平面ひずみ状態に拡張したものが使用されています。本版では地盤の液状化や側方流動は扱えませんが、地盤とコンクリートとの離接を扱うことができます。
2)RC構成モデル
 2次元交番繰り返し応力を受ける鉄筋コンクリートの構成モデル(岡村・前川1991年)に立脚していることでは、実質的には何も変わりはありません。ただし、多方向に導入されるひび割れの開閉に伴う、急激で複雑な剛性変化に追随できる安定性と収束性を向上させることが、はり・柱系構造物では耐震壁にも増して必要となってきました。本版は、この安定性と収束性の向上を図るべく、構成モデルを規定するルーチンの大幅な改訂を行ったことが、更新の一つの特長です。たとえば、ひび割れ面でのせん断伝達モデルとしては、従前はLi-Maekawaモデルを採用していましたが、今回の版ではLiモデルを更に一般化、高度化したUniversal contact density model(Bujadham,Maekawa)を導入しています。また、鉄筋コンクリート接合要素に関する三島モデルを全面的に採用しています。これにより、RC接合要素の安定性も向上するとともに、打ち継ぎ面等
にも適用できる一般性を確保することができました。

 ▼結果の図化
 

3)入力情報の多様化
 今回の版は、過去の版に比較して、入力情報(特に材料特性値)を多様なものに対応できるようにアレンジを拡大しました。例えば、打ち継ぎ面や施工継ぎ手部、軽量コンクリートひび割れ面のように、せん断伝達特性が一般的なコンクリートと比較して小さい場合には、せん断伝達特性を低減することもできます。
 また、これまでは鉄筋とコンクリートとの付着特性を比較的大きな有限要素においても精度よく表現するために、Tension-stiffnessモデルを採用し、鉄筋の配置方向や量、ひび割れ方向などに関係なく、Tension-stiffnessを規定する係数を一定値で与えてきました。耐震壁やせん断補強鉄筋を有するはりなど、2方向に鉄筋が配置されている問題ではこの仮定で困ることはありません。しかし、今回の版では、鉄筋軸方向に応じて、特性値をユーザーが入力できるようにしました。配筋に応じて、いままで以上にきめ細かな設定が可能となるようにしました。
 さらに、鉄筋が全く配置されず、しかも鉄筋位置から遠く離れている領域には、破壊力学的特性値を入力できるようにしました。具体的には、ひび割れ開口方向の応力低減率を与える係数を任意に入力できるようにしました。これによって、鉄筋コンクリートとも無筋コンクリートともつかないような、大型低鉄筋比構造物にも対応できるようにしたものです。これらは耐震壁では考慮の対象外でした。適用範囲を拡大したことによって、必要な入力情報も増えた、とご理解下さい。

 ▼結果のグラフ化
 

4)解析部
 基本的に大きな変化はありません。ただし、収束性を向上させる手だてを追加し、最大耐力以後の軟化領域においても解を得ることができるようになりました。例えば、耐震壁やはりがせん断破壊した後などです。不釣り合い力が発生した時には、少しずつ節点力を開放して釣り合い収束解に至る方法を採用しています。
5)入出力部
 今回の版は従前の版から大幅な改訂を行い本格的なWindows製品として作成されており、データジェネレータ、結果処理(図化、動画作成など)が充実しています。入力部では使用材料、構造寸法、配筋情報、地層(地盤)条件、メッシュ分割パラメータを入力するだけで、基本的な構造物については、すべての有限要素データをジェネレートします。結果処理部では、時刻歴応答曲線、荷重変位曲線、変形図、応力図、クラック図を見やすく表示します。
 
▼解析条件の設定

▼寸法データの入力

▼配筋データの入力

▼地層(地盤)データの入力

▼分割パラメータの入力

▼荷重データの入力

▼着目点の指定
■おわりに
 岡村甫教授の構想を基に1980年から研究開発が進められたWCOMD解析部は、最大の特長が鉄筋コンクリートの材料力学モデルにあることを名前のCOMに託しながら、いよいよ2次元解析版として完成の域に達しつつあります。入出力部についてはまだ改善の余地が残されているとはいえ、本製品は、自由な選択・発想の下で決定された設計(構造諸元、材料など)が要求性能(耐震性能など)を満足しているか否かを最終チェックできるシステムに仕上がっていると思います。また、そのような照査・判定に使用するのが一番相応しい使用法と考えています。
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