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ユーザ紹介第64回
株式会社 ニュージェック
NEWJEC Inc.
株式会社 ニュージェックのホームページ
http://www.newjec.co.jp/

キーワードは「視覚化」―交通シミュレーションやVRなど自社開発技術のほか、
3D動的非線形解析ツール活用も


  今回ご紹介するのは、電力事業分野での技術的蓄積をベースとして関西を拠点にスタートし、現在は大阪と東京の両本社を中心に全国展開する総合建設コンサルタント「株式会社 ニュージェック」。その中でも、同社国内事業本部に設置されている「道路グループ」に焦点を当てます。

 同グループではもともと、橋梁事業の地盤から上部工に至るさまざまなプロセスに応じたフォーラムエイトの各種設計ソフトをご利用いただいてきました。そうした実績を受けて最近新たに導入されたのが、「UC-win/FRAME(3D)」。そこで、実際にこの3次元動的非線形解析プログラムを高度解析に利用されている観点から道路グループマネジャーの川又公正氏、同グループ橋梁チームリーダーの内田諭氏、同チームの赤坂好敬氏、および企画室企画グループ主任の片山浩一氏の4氏にお話を伺いました。

■「道路グループ」、交通計画・道路・橋梁の各分野をカバー

 株式会社 ニュージェックの創業は63年。「黒部ダム」で知られる黒部川第四発電所の完成を機に、その建設事業を支えた技術者らが中心となり「(株)新日本技術コンサルタント」として設立したことに遡ります。91年からは、その英語表記「The New Japan Engineering Consultants, Inc.」の頭文字をとって現在の「株式会社 ニュージェック(NEWJEC)」に社名が改められました。

 また、92年にそれまでの東京支社が東京本社に昇格。現在は大阪と東京にそれぞれ本社を置き、全国10支店、33事務所、1実験所から成る事業所展開の中で、従業員580名(そのうち、技術者506名:06年5月現在)が配置されています。

 発足時の電力向けはもちろん、総合建設コンサルタントとしてその対象事業は広範な分野をカバー。一方、活動エリアは国内に留まらず、海外の大型プロジェクトにおいても主力コンサルタントとしての実績を重ねてきました。

 こうした活動を支えるため、トップマネジメントの下にコンプライアンス室、企画室、総務室、国内事業本部、国際事業本部を設置。さらに国内事業本部については電力営業、プロポーザル審査、技術開発、地球環境、河川、道路、都市・地域整備、港湾・海岸、地圏、電気・通信、建築の各グループに細分化した組織体制が取られています。これらのグループはそれぞれ複数のチームにより構成。例えば、「道路グループ」を形成するのは交通計画チーム、道路チーム、橋梁チームの各チームです。

 「交通計画チーム」は交通の調査・解析・計画・評価・パブリックインボルブメント(PI)など、「道路チーム」はさまざまな構造物を含む道路の計画・設計・施工管理・維持管理など、「橋梁チーム」は橋梁および鋼・コンクリート構造物の調査・計画・設計・解析・研究などをそれぞれ実施。川又公正氏はとくに「道路グループ」のポイントとなる業務として、自社開発ツールを利用した交通シミュレーションやバーチャルリアリティ(VR)の応用、橋梁や軟弱地盤などの各種解析を挙げます。



■橋梁関連の各種設計ソフトから「UC-win/FRAME(3D)」へ

 橋梁チームでは、「地盤から上物まで網羅する形」(赤坂好敬氏)でフォーラムエイトの各種製品をご利用いただいています。とりわけ、設計ソフトに関してはさまざまなプロセスや用途に応じて導入されているものの大半をフォーラムエイト製が占めているとのことです。

 「他社製品の場合、図面を描けるものがあっても一般図に限られたり、あるいはより高価なツールを追加購入する必要があったりといった制約が少なくありませんでした」

 その点で、フォーラムエイトの設計ツール・ラインナップには杭から基礎、橋脚などというように連動性があり、とくに設計から図面作成までを連続して行えることから、使いやすさを実感できたと言います。

 さらに、その延長で新たに使われ始めたのが「UC-win/FRAME(3D)」です。

 もともと動的解析や有限要素法(FEM)解析など解析技術の充実に力を入れてきた同チームでは、必要な新しいツールやモデルへの対応に積極的な一面がありました。そうした中で、発注者から「解析結果をより分かりやすく出来ないか」との要望を受けたのが「UC-win/FRAME(3D)」導入のきっかけになった、と内田諭氏は振り返ります。

 さまざまなソフトによる対応を検討した結果、「UC-win/FRAME(3D)」なら多様かつ高度な解析作業を行い、しかもデータをそのまま3次元モデル(3DSファイル)や動画用のAVIファイルとして吐き出すことも出来る。つまり、他のツールでは難しい動的解析結果のビジュアル化に容易に対応し、それでいて作業も二度手間とはならない。それならば一度試してみようということになりました。
「少し前までは、そういう要望の発想自体が出てこなかったと思うのです」
例えば、以前であれば数字や表などを使って、それぞれ「OK」あるいは「NG」といった判断が示されるのみでも、そういうものと考えられた。ところが、モデルやアニメーションなどのより高度なビジュアル化を比較的容易に実現する技術への理解が次第に浸透。それにつれて、顧客サイドのニーズもそうした機能を前提にしたものへと進化してきた、と内田諭氏は述べます。

 「普通の動的解析を行えるということだけで、すごいとされる時代ではもはやなく、それ以上のものが必要になってきたと言えます」

 同グループがこれまで導入してきた多くの設計や解析などのソフトとも連動。加えて、同社では自社開発のVRシステムを有していることから、「UC-win/FRAME(3D)」で作成された3次元データをそこに連動して利用できるというメリットも着目されました。



■交通流シミュレーションやVRなど自社開発技術による展開に力

 同社が掲げる「自然と人のよりよい関係実現」に向け「先進の技術力でベストソリューション」を提案するためのまさに具体的なアプローチと位置づけられるのが、交通流ミクロシミュレーション「KUNJ-Sakura」と3次元VRシステム「NVR(Newjec Virtual Reality)」。いずれも自社提案用に、前者を道路グループが、後者を技術開発グループが自ら開発したもので、同社では現在それらの適用事例拡大に力を入れているところです。まず、「KUNJ-Sakura」は交通流に起因するさまざまな問題について正確かつ適正に把握し、分析・検討するためのツール。個々の車両の動きを計算してミクロな挙動を再現、交通流を総合的にシミュレートします。具体的には、車両属性や道路条件、信号条件、車両の経路選択、車両の車線選択、車両の挙動決定要素 ― などを反映。さらに適用シーンに応じた柔軟なカスタマイズも可能です。京都大学(飯田研究室)との共同研究による開発を経て、02年度末から実際の業務に適用されています。

 もう一つの「NVR」は、社会資本整備の各フェーズで生じるさまざまなコミュニケーション・シーンを3次元VRにより支援するツール。設計業務を補助し、ノートパソコンを使って場所を選ばずに説明できるツールという当初のコンセプトを実現し、幅広い適用分野が想定されています。

 そのほか、同社が独自技術として開発、新たな適用可能性に注目するのが「都市型水害解析モデル」と「都市型水害表示システム」。前者は、近年多発する都市域での水害リスクを評価するための、後者はその結果を視覚化するためのツールです。

 さらに「H-ADCP(Horizontal Type of Acoustic Doppler Current Profilers)流量観測システム」は、河川やダムの管理に当たり超音波を使って河川流量や河床の状態を観測するツールとして関西電力株式会社による協力の下、同社が開発したもの。それまでの精度上の制約をクリアすることで、河川の流れの構造を明らかにすることはもちろん、防災や環境対策を支援するツールとしての展開も期待されています。



■今後の展開方向と「視覚化」の位置づけ

 同社が今後の展開に向け注目する事業分野としてPFI事業(民間資金等活用事業)やPI、PM(プロジェクトマネジメント)、CM(コンストラクションマネジメント)などへの対応が挙げられます。

 また、他社との差異化を目指すに当たって、道路グループでは前述の「KUNJ-Sakura」や「NVR」といった自社開発技術による独自の提案、あるいは「UC-win/FRAME(3D)」などのツールを駆使した高度解析にウェートを置いています。それらと並行し、アセットマネジメントなどにおいて新たな可能性を切り開くべく技術開発にも積極的に取り組んでいます。
▲株式会社 ニュージェック本社


▲左から 片山 浩一 主任、川又 公正 道路グループマネー
  ジャー参与、内田 諭 リーダー、赤坂 好敬 氏



▲交通流ミクロシミュレーション 「KUNJ-Sakura」

▲3次元VRシステムNVR
 (Newjec Virtual Reality)


▲都市型水害表示システム(左)
▲H-ADCP(右)
 (Horizontal Type of Acoustic Doppler Current Profilers)
 流量観測システム
 そうした中で、川又公正氏が一つのカギとなるコンセプトとして捉えているのは「視覚的に分かりやすくすること」です。

 例えば、耐震性の評価などで単に計算の結果をそのまま流すのではなく、地震の揺れを動画像で示せば、とくに住民説明などでは効果的に理解を得ることが期待できる。あるいは、構造物が何故、どのように破壊されるのか、さらには土砂崩れや津波といったさまざまな自然災害がもたらす影響やダメージのメカニズムを同じく高精度かつビジュアルにシミュレートできれば、いっそう有効なツールとして機能するはず、との見方を述べます。

 一方、同社はフォーラムエイトの汎用的な3次元リアルタイムVR「UC-win/Road」のユーザーでもあることから、同社独自の「KUNJ-Sakura」や「NVR」に「UC-win/Road」を併用することで、リソースの更なる有効活用に繋がることも考えられます。

 「誰もが等しく理解できるためには、現実に出来るだけ近い形、つまり動きも含めて視覚的に再現することが一番です」。川又公正氏は、同グループが今後力点を置く交通シミュレーションやVR、解析などでも共通して、そのようなニーズへの対応が益々求められてくるものと位置づけます。


 お忙しい中、取材にご対応いただいた関係者の皆様に改めてお礼申し上げます。






  
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