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Users Report   ユーザ紹介/第90回

クラウンコンサルタントグループ
株式会社クラウン 商品開発室


顧客サービス向上狙いに4社グループのネットワークを改定
ソフトの高度な運用管理や利用形態に力、SaaSなど新技術も視野

 User Information

 クラウンコンサルタント株式会社 株式会社クラウン 商品開発室
   URL● http://www.crown-c.com/   
   所在地● (クラウンコンサルタント株式会社・本社)埼玉県さいたま市/(株式会社クラウン 商品開発室)福岡県福岡市
   事業内容● (クラウンコンサルタントグループ)各種土木建築設計業務の支援

 「クラ ウドコンピューティングやサーバ仮想化技術など、ICT(情報通信技術)の世界ではかなり大々的な(新しい)動きがあります」。その反面、組織内のネット ワークをはじめICTの運用管理を担当する側では、IT(情報技術)革命が喧伝された当時ほどの熱気は感じられない、と株式会社クラウン商品開発室(プロ ジェクトマネージャ)の今井修氏は語ります。

 その背景として、企業内で運用されるネットワークには見えない部分も含めさまざまなコストがかかっていることを挙げます。ただ、それゆえに、それらの要 素を集中管理し適正に改定していけば、コスト削減や効率化、ひいては顧客サービスへの還元にもつながるはずとの見方を示します。 

今回ご紹介するのは、同氏が入社以来そのICTの運用管理を担当してきたクラウンコンサルタント株式会社を中核とする「クラウンコンサルタントグルー プ」。併せて、同グループを構成する一社で、現在同氏が所属する「株式会社クラウン商品開発室」に焦点を当てます。

 クラウンコンサルタントグループ各社は、以前よりフォーラムエイトの各種ソフトウェア製品を利用しており、2009年からはWAN(広域通信網)上で当 社の複数製品の利用が可能なライセンス契約(WANアクティベートライセンス)も導入。今後の展開に向けては、クラウドコンピューティングによるサービス の一形態であるSaaS(サース:Software as a Service)への対応も視野に入れていると言います。

 そこで、同グループ全体に跨るICT関連の多様な運用管理や新規開発を担われている今井修氏にお話を伺いました。

▲株式会社クラウン、株式会社クラウン建築設計、株式会社クラウンコンサルタントのみなさん


 グループを構成する各社の概要 ICT利用に進取の企業風土

 クラウンコンサルタントグループは、それぞれの専門分野で土木建築の設計業務を支援する4社により構成。「お客様に対して、他社では真似のできない当社 (グループ)ならではの価値を提供する」ことを共通の目標に掲げます。具体的には、広範にわたる土木設計において各企業が得意な分野に特化しつつ、その中 で連携できるところは連携する、というスタンスが取られています。

 グループをリードするのがクラウンコンサルタント株式会社。同社は1985年の創業で、本社(さいたま市)のほか、福岡市・大阪市・札幌市・仙台市に事 業所を配置。樋門・樋管をはじめとする河川構造物の設計を専門とし、剛構造から柔構造への転換、あるいは近年における耐震設計の導入など、当該分野を巡る さまざまな動きにいち早く対応しています。

 これに対し、上下水道や道路など、河川以外の土木構造物を対象とするのが、株式会社クラウンテック。2005年に設立され、本社(名古屋市)およびさい たま市に設計室を構えます。同社は、豊富な設計ノウハウの蓄積に加え、施工内容への精通により、設計と施工の乖離を極小化した最適な設計を得意としていま す。

 また、土木業務に関連した公共建築施設(土木営繕)の設計を行う株式会社クラウン建築設計は2002年の設立。本社(福岡市)およびさいたま市に設計室 を置き、樋門・樋管や水門の操作室、排水機場や下水処理場などの建築設計で意匠・構造・数量積算まで対応。とくに、グループ各社と連携して当たる土木と建 築部分を一体化した複合構造物の耐震設計は、同社の特徴的なサービスの1つに位置づけられます。

 グループ内のフラッグカンパニーともいえる企業が株式会社クラウン(本社:大分県豊後高田市、設立2006年)です。福岡市とさいたま市を拠点に、他の グループ企業が未着手の分野で新たなサービスを創出する役割を担っています。現在は、土木構造物設計の照査業務や樋門・樋管のゲート設備の設計を主として 実施。そこでの活動がある程度サービスとして形成されてくれば、新たなグループ企業の創設もしくはグループ各社に還元されることになると言います。

 今井修氏が、システム系の幅広い知識と経験を積んでクラウンコンサルタントに入社したのは、世界規模でコンピュータが誤作動するのではと2000年問題 (Y2K問題)が危惧されていた頃。同社はそれ以前から新しい技術の導入には積極的で、早くからコンピュータ化を進めてきた経緯がありました。

 そこで同氏はまず、必要なハードおよびソフトの整備、ネットワーク環境の構築、社員教育に力を入れてきました。そうした過程で、フォーラムエイトの各種 ソフト製品も拡充。現在の組織に異動後も、引き続きグループ内のICTに関わる高度かつ効率的な利用を狙いとして最適なソリューションの実現に努めていま す。

▲株式会社クラウン 社屋外観(福岡県 福岡市)
▲商品開発室(プロジェクトマネージャ)
今井修氏

 進化するICTも考慮、ネットワークを改定。業務データ保全環境とセキュリティの向上へ

 「当初のネットワークではファイルサーバに業務データを入れるような環境にとどまっており、サーバ本来の機能を活かしきれておらず、非常にもったいな い。ですから、本来の(機能を発揮できる)形にしなければいけないということがありました」 クラウンコンサルタントグループでは、今井修氏を中心に 2008年頃から既存ネットワークの改定に向けた準備に着手。ほぼ1年半にわたる段階的なリリースを経て機材も刷新、今日の環境を構築するに至っていま す。

 その背景には、1、2000年頃から使用してきたネットワークの陳腐化、2、クラウドコンピューティングやサーバ仮想化、ユニファイドコミュニケーショ ンといったICT系の大きなトレンド、3、公共事業縮減下での競争力向上、4、ダウンタイムなどロスの削減―などへの対応が求められたことがありました。

 「ネットワークの運用管理というと、とかくサーバの導入コストや障害発生時のダメージコストが議論されがちです。しかし長期運用していく観点からは、本 質的な問題はむしろ見えない部分で大きなコストが発生していることなのです」。同氏はその一例として、設計担当者が使っているコンピュータの調子が悪くな り、OSやソフトを再インストールするケースを挙げます。

 利用者が付属のメディアを使いWindowsの再インストールを行おうとすると、慣れた人で半日、不慣れな人であれば誰かのサポートを受けながら1日近 く要してしまいます。そこで同改定に当たり、OSをネットワーク経由でインストールできるWindows展開サービス(WDS:Windows Deployment Services)を導入。再インストール開始から最短12分ほどで業務に復帰可能な環境としました。

 併せて、ソフトのインストールについてはWindowsインストーラによるネットワークインストールに移行。利用者が自分で短時間かつ容易に必要なソフ トをインストールできるとともに、古いバージョンのソフトはネットワーク側で削除すれば各コンピュータ内からもアンインストールされる仕組みにしています (下図)。

 同グループで導入しているソフトウェアのネットワーク展開例

ソフトのインストールについてはWindowsインストーラによるネットワークインストールのシステムを導入している。
使用しているフォーラムエイト製品のほとんどがMSIインストーラに対応しているため、データファイルをダブルクリックするだけでソフトのバージョンが検出され、必要に応じて最新バージョンがサーバからインストールされるようになっている。

 ソフトの基本的なインストール
[プログラムの追加と削除]でカテゴリにForum8を指定すると、WAN内にステージングされている利用可能なソフトウェア一覧がリストアップされ、目的のアプリケーションを選択・インストールできる。

 ソフトのオンデマンドインストール
ソフトがインストールされていない状態で「BOXカルバートの設計」のデータファイルをダブルクリックすると、自動的にインストールが開始され、ファイルが開かれた状態でソフトが起動する。

 旧バージョン公開終了時の自動アンインストール
旧バージョンの「BOXカルバートの設計」の公開を終了している例。終了時にコンピュータからアンインストールするように指定すると、ネットワーク内の全コンピュータにインストールされていた旧バージョンはアンインストールされる。

 その意味で同氏は、同グループで使用しているフォーラムエイト製品のほとんどがMSIインストーラに対応していることに注目。わざわざインストール作業 を行わなくてもデータファイルをダブルクリックするだけで、当該ソフトが入っていなければそのことを検出し最新バージョンがサーバからインストールされ、 利用者がすぐに操作できるメリットを説きます。

 また、業務データが大容量化する流れを受け、その保全環境についても見直しました。従来からのバックアップはあくまでも機械的な破損を生じた最悪の場合 のバックアップ向けと位置づけ。人為的な削除や上書きといったうっかりミスについてはVSS(Volume Shadow Copy Service)を利用、最大64履歴まで遡ってデータを復元可能な履歴管理を行っています。加えて、ディザスタリカバリの代替機能としてDFSレプリ ケーションを採用。各利用者が作成・変更したデータは別の離れた拠点のサーバで即座に複製され、サーバに障害が起きた場合は代替サーバがデータを引き継ぐ ため、障害発生時のダウンタイムをほとんど生じないアプローチが取られています。

 さらに、近年は取引先からのセキュリティ対策に関する問い合わせが増えていると言います。一方、Winnyなどのファイル共有ソフトはコンピュータにイ ンストールされていても検出しにくい厄介な側面があります。そのため、ネットワークポリシーを適用した集中管理へ移行、万一インストールされても起動でき ないようシステム的に制御する体制へと移行しました。

 一連のネットワーク改定では、コンピュータシステムの導入および維持管理にわたって要するTCO(総所有コスト)に基づき、そのほか数多くの改善も実 施。それらのベースには、設計担当者が業務に専念でき、ダウンタイムを短縮し、セキュリティを確保した環境の構築を通じ、顧客サービスの向上を図るとの考 え方が貫かれているとしています。


 ソフトの運用管理と利用形態

 今井修氏らは前述のネットワークと並行して、ソフトの運用管理も見直しました。その際もTCOの観点から、たとえば、フォーラムエイト製品については、 保有するソフトとその配布形態、実際の利用者と利用状況、必要なライセンス数、それらのコストなどを調査。その結果に基づきWAN対応のライセンス契約を 導入しています。

 そのための費用は発生したものの、適正なライセンス数やソフトの統廃合の検討、保守契約の最適化、契約更新時期の集約が可能になるなど、副次的効果も得られたと言います。

 「今後のソフトの利用形態ということでは、SaaS型の環境に移行していくものと予想しており、その可能性は非常に高いと思っています」

 現状は、SaaS型の課金形態が原因で敬遠されている面が窺われる、と同氏は述べます。だた、ネットワークインフラやソフトの運用管理、あるいは高性能 化するソフトに対応したハイスペックなコンピュータの導入・管理などを含むTCOを考慮し、きちんとした検討を行えば、SaaSの優位性も見えてくるはず と解説します。

 したがって、設計業務で利用可能なSaaS型ソフトのラインナップがある程度揃い、その利用形態や性能などを見定める必要があり、当面はその過渡期と位置づけます。

 一方、クラウンコンサルタントをはじめ同グループ各社は、従来から設計業務で使うプログラムを社内開発。当初はエクセルを利用、次いで8年ほど前からは各種ソフトのAPI(Application ProgramInterface)にアクセスし、設計効率の向上につなげてきました。そうした例として、同氏は自社開発した配筋図自動描画システムや構造計算システムを挙げます。

 しかし、当時は国内の設計ソフトでAPIを提供している製品がなかったことから、海外のソフトを利用。すべて英語で記述されていたため、かなり苦労したと振り返ります。

 それに関連して、フォーラムエイトでも近年、APIを提供していこうという流れにあり、Delphi SDK(ソフトウェア開発キット)プログラミングの入門書「土木建築エンジニアのプログラミング入門」(日経BP社)を昨年出版。併せて、既存の3次元リ アルタイムVRソフト「UC-win/Road」に加え、3次元動的非線形解析「UC-win/FRAME(3D)」でもAPIを提供するSDKのリリー スが予定されており、同氏は期待を示します。

 「今後、3次元化やクラウド化、仮想化技術が進む中で、ソフトをAPIでコントロールしながらさまざまな効率改善策を検討できる環境になっていくのは非常によいことだと思います」

(取材/執筆●池野 隆)




自然や動物から人間性を
呼び戻させてもらおう
 クラウンの


クラウンコンサルタントグループでは、福利厚生施設「クラウンの森」(大分県豊後高田市)を運営しています。雄大な自然に恵まれた環境。また、併設する乗 馬施設にはオグリキャップの息子「シラユキ」も。お近くへお出かけの際はぜひお立ち寄りください。
公式HPでは、乗馬や農業体験といったサービスのほか、森に住む動物や自然の紹介、写真館、近隣の名所などが紹介されています。
■詳しい情報・お問い合わせ http://www.crown-c.com/mori/



     
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