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Users Report ユーザ紹介/第96回
応用技術 株式会社
エンジニアリング本部 防災・環境解析部
環境・防災・アセット分野で高度な解析やシミュレーションを展開
RC構造物や地盤の解析にUC-win/FRAME(3D)など当社製品駆使
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User Information |
応用技術株式会社 エンジニアリング本部 防災・環境解析部
URL● http://www.apptec.co.jp/
所在地● 東京都文京区(東京オフィス)、大阪市北区(本社)
業務内容● 数値解析およびシミュレーション技術、GISなど先進のITを活用した環境、防災、およびアセット分野に関わるエンジニアリングサービス
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▲応用技術株式会社東京オフィスビル外観 |
想定を超える被害を複合的にもたらした東日本大震災の発生から一年。復旧・復興への道のりはまだ遠いとは言え、幅広い関係者によるさまざまな形の取り組みが粘り強く進められています。そのような動きと並行し、社会資本整備はもちろん、民間ベースの事業でも防災意識や環境意識の高まりが窺われます。
今回ご紹介するユーザーは、応用技術株式会社。とくに同社エンジニアリング本部において、防災や環境分野向けをメインに数値解析やシミュレーションなどのエンジニアリングサービスを提供する「防災・環境解析部」です。
防災・環境解析部はもともと、自社開発のソフトを用いた環境系解析業務からスタート。その後、防災系のRC構造物や地盤へと対象分野を拡大し、解析やシミュレーションなどで豊富な実績を蓄積してきました。
そうした中で、国土交通省による「河川構造物の耐震性能照査指針(案)・同解説」の策定(2007年3月)を受け、当社の立体骨組み構造の3次元解析プログラム「UC-win/FRAME(3D)」を導入。以来、3次元構造解析ソフト「Multiframe」や3次元プレート動的非線形解析「Engineer's
Studio(R)」など当社製品を逐次拡充されています。
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▲ 応用技術株式会社 エンジニア 本部 防災・環境解析部の皆さん |
1984年。現在同社は、本社(大阪市北区)および東京オフィス(東京都文京区)を拠点に176名の社員を配置しています。
同社の事業は、
- 専門的な業務ノウハウや当社オリジナルのパッケージソフトウェアをベースにお客様の問題解決に最適なシステムを提供するソリューションサービス
- 環境および防災分野に関する蓄積したノウハウを基に、解析技術やGIS(地理情報システム)などIT(情報技術)を駆使するエンジニアリングサービス
―の2サービスより構成。それらを、ソリューション本部とエンジニアリング本部の2本部が分担する形です。
そのうち、68名のスタッフを擁するエンジニアリング本部の機能は、都市・地域計画部および防災・環境解析部(防災情報部を含む)の大きく2つの要素に分けられます。前者は28名のメンバーが、主にコンサルタント業務を担当。これに対し、40名が所属する後者は、水圏環境課(大阪・東京)、減災情報課(大阪)、情報システム課(大阪・東京)、環境情報課(東京)の4課から成り、さまざまな解析業務を行っています。
当初、環境系の解析を専門としていた防災・環境解析部は、10年ほど前から土木や建築、防災系へと解析の対象を段階的に拡大。近年は防災系の解析およびシミュレーションのウェートが勝る傾向にあります。
同社エンジニアリング本部本部長の前野匡彦氏は、「環境」「防災」「アセット(の維持管理)」を防災・環境解析部で取り組む大きな3テーマと位置づけ。それらへのカギとなるアプローチとして、数値解析やシミュレーション、GISといった要素技術の活用に言及。その上で、自分たちが最終的に提供するのは、そういったツールを使って顧客の意思(設計)決定を支援することだと述べます。
同部では従来、社会資本整備の仕事をメインにこなしてきました。それが最近は、民間ベースでの防災意識や環境意識の高まりを反映し、後者関連の比率が着実に増しつつあります。その一方で、今年はとくに、都市・地域計画部と連携。多様な負荷量の算定、データベースや点検管理システムの構築といった、維持管理(アセットマネジメント)の上流から下流までを一気通貫に行える体制の整備を図りたい考えといいます。
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▲応用技術株式会社の事業概要 |
防災・環境解析部が提供するエンジニアリングサービスは、
- 環境の調査および解析/シミュレーション
- 防災・土木・建築・構造に関する解析
- 環境アセスメントと大店立地法コンサルティング
- GIS +解析/シミュレーション
- 環境改善事業コンサルティング
中でも同部の発足以来、最も実績を誇る環境系解析の対象は、河川、湖沼および海域など水関連の分野。かつては、たとえば、海底に構造物を建設することで水域にどういう影響を与えるかといった解析が主流でした。昨今は、共通する解析技術を応用した、津波や河川の氾濫など自然災害予測への展開が目立っています。
そうした当該分野の事例として同部部長の山崎徹氏は、橋脚設置に伴う流況変化予測、有害物質漏出時の地下水影響予測、水質改善対策の検討、および津波の解析を列挙。自社開発のソフトによる解析やモデル構築を基本としつつ、これらの結果の表示には汎用ソフトを活用していると解説します。
これに対し、防災系解析では河川構造物や上下水道施設などのRC構造物、あるいは地盤を対象に耐震診断や耐震性能照査を実施。とくにRC構造物の解析のほとんどすべて、地盤関連の複数の解析シーンでフォーラムエイト製品が利用されています。
また、社会資本の長寿命化の観点から維持管理が重視される流れを背景に、同社は業務の調査・計画から設計、施工、維持管理にわたるデータの更新・活用に着目。従来からの土木関連の各種防災解析サービスの拡充と併せ、点検管理システムやアセット管理システムの構築、設備のモデル化(2D・3D)、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)コンサルティングなどのソリューション提供にも対応しています。
これらに関連し、同部営業グループ長の古川芳孝氏は(1)スマートフォンを利用する構造物の点検管理ソリューションの開発(2011年秋)(2)GISやスマートフォン、クラウドサービスを利用し災害時の被害・復旧状況も迅速に把握可能な水道災害情報システムの共同開発(2011年秋)(3)RC構造物の配筋設計をはじめ土木分野へのBIM手法導入に取り組む「3次元モデル研究会」の事務局運営(4)土木学会情報利用技術委員会で取り組む情報化施工に関する小委員会組織化への参加、といった最新のアプローチを紹介します。
前述のように、同社では地盤変形解析や浸透流解析、近接施工の影響検討など、多様な地盤関連の解析業務を数多く手がけてきました。そうした中、2007年3月に国交省が「河川構造物の耐震性能照査指針(案)・同解説」を策定。水門や樋門、その他の河川構造物の耐震性能の照査にそれが適用されることとなりました。
同社はこれに先駆け、それまでの自社開発ソフトのみに基づく手法の制約を踏まえ、信頼できる市販ソフトの導入を検討。その3次元解析による結果の妥当性や信頼性への注目もあって、UC-win/FRAME(3D)の採用に至った、と同部環境情報課担当課長の金井眞氏は経緯を振り返ります。
その後、UC-win/FRAME(3D)を利用する案件数が次第に増大してくるのと比例し、東京オフィスでは担当するスタッフの増員と併せ、そのライセンスの購入を拡張。一方、東京オフィスでの勤務を通じ新たな構造解析のノウハウに精通したスタッフが本社(大阪)に戻った後、継続してUC-win/FRAME(3D)を使用したいとの意向から、やはり同ライセンスを購入。現時点で、環境情報課(東京)が6本、減災情報課(大阪)が2本の同ライセンスを運用しています。
また、UC-win/FRAME(3D)を使った解析の裾野が広がる中で、同時に基礎の診断にも適用する狙いから当社の「基礎の設計計算」を東京・大阪でそれぞれ採用しました。
さらに、上水道施設の耐震診断などで「フレームではなく、板で解析しなければならない」といった要求が次第に顕在化。そのような、フレーム解析用のUC-win/FRAME(3D)では対応しきれない構造物向けソフトの必要性が認識されました。
そこで2010年秋、梁要素を用いた骨組み解析に加え、新バージョンから平板要素を用いた解析が可能になったMultiframeも導入しています。
次いで2010年暮れ頃からは、年度末業務の繁忙期と重なる中、次年度末業務を視野にさまざまな要望を当社担当者に提示。その後、上水道施設に対し板で非線形解析を行うことが求められた業務への対応を契機に、2011年秋、Engineer's
Studio(R)の導入に至りました。
UC-win/FRAME(3D)の利用を通じ、ソフト自体の評価とともに、問い合わせに対するレスポンスを含め、当社スタッフへの信頼感を醸成。しかも、それまでのレガシーデータを有効活用したいとのニーズから、同種の市販ソフトが数ある中で「なるべくならフォーラムエイトのソフトを使いたい」という考えが当初よりあった、と金井眞氏は明かします。
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▲Engineer's Studio(R)による解析のようす |
「UC-win/FRAME(3D)は使い勝手が非常に良く、隣で経験者が指導すれば構造解析に不慣れなメンバーでもスムーズに業務に入っていくことができる」「集中して使っている時は覚えていても、しばらく使わないでいると使い方を忘れがちなのが一般的であるのに、フォーラムエイトのソフトは比較的思い出しやすい」
― 金井眞氏は当社製品のメリットをこう表現。ただ、業務の性質上、繁忙期と閑散期が極端であることから、そうした実態に即した価格体系などの考慮も求められると述べます。
それに関連し、本社(大阪)で今期、既存の2本のライセンスでは不足する事態を来し、UC-win/FRAME(3D)のライセンスを1本レンタルで使用した経緯に言及。費用対効果を睨みつつ、今後、そうした利用の仕方はあり得ると説きます。また、同じソフトを2本持つことにより、組織内の担当者同士で情報交換でき、お互いのスキルが飛躍的に向上する効果にも注目しています。
一方、山崎徹氏は自社のGISや津波の解析などの技術的な蓄積をベースに、当社のVR技術と連携した新たな可能性に期待を示します。
解析やGISなどのITを前面に打ち出し、環境・防災・アセットの維持管理をテーマに掲げる同社とは言え、「正直な話、東日本大震災の後には非常に無力感があった」と前野匡彦氏は語ります。
「防災について学べば学ぶほど、新たなフィールドが広がってきます」
それらに追随し、自ら活躍できるフィールドを確保していくためには、当社製品の活用も不可欠と位置づけ。その上で、防災意識がますます高まる中、自ら保有する環境系および防災系のノウハウをツールとして積極的に展開していきたいと言います。
■FORUM8 Design Festival 2010-3Days 特別講演 「FRAME3Dを用いた河川構造物の耐震性能照査解析事例」
応用技術株式会社 防災・環境解析部 課長 金井 眞 氏
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河川構造物の耐震性能照査指針(案)・同解説での「レベル2地震動」および「ある程度の損傷を許容」との記述への注目、それに対応した非線形解析、梁要素によるモデル化、M-φ特性を用いた解析について説明。これを受け、河川構造物の照査に当たってのUC-win/FRAME(3D)の特徴と注意点を挙げ、さらにその効果を活かして実際に樋門・水門、揚排水機場に対して行った解析事例を詳述しました。
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(取材/執筆● 池野 隆) |
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