クリスマス、年末を控えた昨年12月22日、米国ABCニュースに英国グリニッジ大学のエドウイン・ガリア教授が出演されました。事故や災害のサバイバルに関して、25年以上の研究を続けてきた専門家として意見を述べられています。クリスマスメッセージとともに送られてきたこのニュースでの助言をEXODUS等の機能や事例にも触れ、レポートしたいと思います。
〜1秒が生死を分けると専門家は語る〜とタイトルされたニュース番組での特集報道では、サバイバルへの助言と合わせて様々な災害の模様や生き残った人たちが取材されています。
事故、災害が突然襲った時、なぜ、助かる人と死ぬ人に分かれるのか?1秒がその生死を分けることがあります。「あなたが自分の生命に責任があるのです。何をすればよいのかを知っていれば助かる可能性は高まります。」
ガリア教授と教授のチームは、9.11同時多発テロの世界貿易センタービルツインタワーを脱出した300人にインタビューしました。そこで驚くべき発見がありました。飛行機が衝突した時、即座に行動を起こした人は貿易センタービルの中で10人に1人しかいなかったと言うのです。
「多くの人がビルへの衝突に反応するのに約8分もかかっています。8分ですよ。人によってはもっと長く、取りかかっていた仕事を止めて避難を始めるまで20分、30分かかりました。これが標準的な人間の行動なのです。しかしこれは生き残るに賢明とは言えません。」
このWTCのモデルは、当社主催セミナーでも紹介されました。(下図)EXODUSでの大規模モデルとして象徴的なモデルです。 |
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▲WTC世界貿易センタービル 911非難モデル(vr-EXODUS) |
101階建ての構想ビル全体の避難解析を実施。
救助に向かう消防士の影響(結果:避難影響なし)やピーク時だった場合の被害予想等の解析結果が公表された。 |
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ガリア教授は、災害を生き残るヒント、飛行機事故、列車事故、船の沈没を生き残る戦略を以下のように述べています。
戦略1.警報に耳を傾ける
ガリア教授によると、火災警報や何らかの警報に対する最も一般的な反応は、「無視」とのことです。人々は警報はいたずらか、ただの訓練だと決めつけています。
教授が語るには「皆、弱虫とか愚か者とか怖がりだと見られたくないのです。集団内のプレッシャーから最初に反応する人には実際なりたくないのです。一旦反応した人が出てくると他の人たちはそれに続くものです。」
しかし災害からの脱出では一刻一秒が大きく影響します。「人々は警報が鳴ったら即座に反応することを学ばければなりません。
EXODUSでは、避難開始時間が設定されており、これは文化的な差が大きくなく、各国に共通な解析が適用できるだろうとされています。
戦略2.火を恐れよ。火はとても速く広がる。
現代の生活では、火への恐怖を危険なほどに失ってしまっています。ガリア教授は言います。「人々への畏敬と分別を失ってしまいました。現代社会で人々が火に接する唯一の機会はバーベキューに火をつける時でしょう。1979年に炎がイギリスのデパートを焼きつくした時、人々は火の臭いを感じ、警報も聞こえ、それでも漫然と昼食を注文して食べ終わるまでそこにいました。火で10人が亡くなり、そのほとんどはカフェテリアにいました。30秒でそのビルから逃げなければ、成功の見込みはなかったのです。2003年、ロードアイランドのナイトクラブで花火からの引火で100人が亡くなりました。「火はただただ物凄いスピードでビルを包み込み、あ
とは悪夢でした。」と生存者は語っています。
火災解析SMARTFIREでは、3次元CFD(流体解析)で火災のモデルリングが可能で、延焼や有毒ガスの状況がアニメーションで確認できます。(下図) |
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▲ディスコの火災/避難モデル Gothenburg(スウェーデン) |
SPスウェーデン国立試験研究所による火災テストとFSEGによる火災モデルに基づいて解析条件を設定。
極端な混雑により、即座に死亡者/負傷者が94/158(人)という結果となる。(実際は63/180)。
他のシナリオ(出口が2カ所)の場合は死亡者無しという結果となる。 |
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戦略3.計画を持つ
災害が突然襲った時、なぜ、助かる人がいて、死ぬ人がいるのか?1秒がその生死を分けることがあります。「列車、飛行機、船に乗っていても、またホテルなど慣れていないビルにいても、急いで逃げる方法を予習しておくのです。」
非常事態に適切に反応するよう、準備することは出来るはずです。
ホテルでは、一旦チェックインしたら、一番近い非常口の場所を見て部屋からその非常口までのルートを、そこまでのドアの数を数えながら実際に歩いてみます。これで、もし廊下に煙が充満していても実際にそこをたどって安全なところに行けるのです。ガリア教授はチェックインする時、6階までの部屋を頼むそうです。それは、どんな消防車のはしごも6階までしか届かないからです。
これはやりすぎと思うかもしれません。しかし教授は実際に火事に備えて避難ルートを歩きます。途中に洗濯物の山や、ルームサービスの食べ残しのトレーなど、障害がないかどうかを確かめながら。ガリア教授のゴールデンルール:火事が起こってから、生命が危険にさらされてから、避難ルートに問題がないかなどと知りたくないはず。
EXODUSの避難解析では、進路探査と標識の相互作用を考慮でき、避難時の出口等の標識の影響を考慮できます。また、個人がどの避難出口を既に知っているかどうかを設定することができます。(下図) |
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▲避難解析における標識の影響
サインキャッチメントエリア(緑部分)は、出口標識が視認できる範囲を自動表示。 |
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▲標識の影響により進路が変わる例
避難進路が青矢印の通り4つの進路に別れている。
赤い部分はフットプリント。 |
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"飛行機事故で生き残る"
1996年、175人の乗客を乗せてハイジャックされたエチオピア航空機は、燃料切れでインド洋に墜落しました。90人が亡くなりました。その多くは溺死で、ライフジャケットを早く膨らませすぎて、沈んでいく機体から出られなかったのです。
教訓:外に出るまでライフジャケットを膨らませない。
一般に分かっていることですが、アメリカで飛行機事故に巻き込まれた人の約95%が助かっています。ガリア教授は2000人以上の生存者にインタビューしました。それぞれの事故は異なりますが、マジックや、最も安全な席や、最も助かりやすい人はありませんでした。しかし、統計で非常口から6列以内の場所、また通路側にチャンスはありそうです。ガリア教授によると「通路側の席というのは立ちあがって非常口を目指しやすいからです。ホテルにいるのと同じように、飛行機は非常口への一列一列が大事なのです。
airEXODUSは、エアバス社や、ボーイング社の航空機設計で適用されてきています。本システムはコンサルティングで提供しています。 |
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▲航空機の避難解析(airEXODUS) |
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"列車事故:先頭、最後尾車両を避ける"
2009年のワシントンの地下鉄では、9人が亡くなり、70人以上がけがをしました。夕方のラッシュのピーク時に
暴走して他の列車の最後尾に突っ込んだのです。列車に乗っていて生存の可能性高めるには何が出来るのか?ガリア教授は次のように語ります。衝突したりされたりの可能性一番高いので、「列車に乗る時はいつも先頭と最後尾の車両は避けます。自分の背中が進行方向に向いている席に座るようにしています。
列車が衝突すると、社内で投げ出されることなく背中が席に押しつけられます。頭上の網棚に多くの荷物を置くのは避けています。事故のとき荷物が落ちてくるからです。」 |
"沈む船にそのまま?冷静に"
1991年、ギリシャのクルーズ船オセアノ号は南アフリカ沖で大変な嵐に遭いました。ある生存者は言います。「皆は静かでしたが乗組員は違いました。乗組員は最初に船を飛び出して、実際乗客と戦っていました。」パニックに陥った乗組員は、船を捨て乗客を残したまま何とか生き延びようとしました。驚くべきことに結局571名の全ての乗客が救助されました。彼らが生き残ったのは冷静だったこともありますが、おそらく何をすれば良いか分かっていたからでしょう。
ガリア教授は言います。「船は大変、とても混乱した状況でした。外は見えません。どこが船首で船尾か、また右舷側にいるのか左舷側にいるのかもわからないほどでした。」遅くなりすぎないうちに脱出したければ、自分が船のどこにいるのかを気に留めながら、脱出ルートを歩くこともとりわけ大事です。
maritimeEXODUSは、船舶避難において火災の影響を受ける乗客を想定し、乗客が熱、煙、有毒ガス等から逃げられるかの解析を行うソフトです。世界各国のフェリーや観光船等の大客船や航空母艦等の海軍艦艇などに利用されています。 |
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▲火災解析SMARTFIRE(船舶火災解析) |
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役立つ知恵がふんだんに込められたガレア教授の助言が報道されています。
フォーラムエイトでは、ガリア教授の率いるFSEG(Fire Safety Engineering Group)開発の火災解析SMARTFIRE、避難解析EXODUSの日本語マニュアル版を提供しています。 |
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