第1回FORUM8デザインコンファレンス 特別講演会レポート
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2007年9月27日東京コンファレンスセンター品川にて開催されました「第1回FORUM8デザインコンファレンス」における地盤関連の2つの特別講演をレポート致します。
本コンファレンスは、第5回UC-win/FRAME(3D)協議会を併催する形で、フォーラムエイトの設計、解析、CADソリューションを広く発表し、協議するものです。
第1回FORUM8デザインコンファランス ('08.03.18掲載)
・第5回 UC-win/FRAME(3D)協議会 資料集 紹介ページ
・開催履歴 セミナーレポート
■講師プロフィール |
鵜飼恵三[ウガイ ケイゾウ]<工学博士> |
専攻: |
地盤工学 |
経歴: |
東京工業大学大学院理工学研究科修士課程、新潟大学工学部土木工学科助手、群馬大学工学部建設工学科助教授を経て、現在、同大学、大学院工学研究科社会環境デザイン工学専攻地盤工学研究室教授。(社)日本地すべり学会理事関東支部長。 |
受賞: |
1999年地盤工学会功労賞、2003年日本地すべり学会論文賞 |
■講演レポート |
鵜飼教授は地すべりを専門とし、現在は、特に地震時の土砂崩れをはじめとする研究に力を入れています。その契機になったのが、04年に発生した新潟県中越地震です。自ら他に類例を知らないというほど、大規模かつ多数の土砂崩れが山間部で発生したのを受け、災害調査を開始。以来、それまで充分に研究がなされていなかった地震時における斜面崩壊のメカニズムがほぼ解明できたことから、それを体系化するとともに、その詳細について今後、本格的に発表していく予定といいます。
また、フォーラムエイトの地盤解析シリーズにおいては、アドバイザー的な立場で、各製品の監修を行って頂いています。今回は、「浸透流解析における有限要素法の利用」「液状化による被害と対策」「最近のトピック地震災害」「地盤解析におけるFEMの利用、課題と展望」について、多くの適用事例を交えながらご講演を頂きました。
浸透流解析における有限要素法の利用では、砂質地盤の掘削に生じるパイピング現象について、土留め掘削と橋台基礎問題(図1)を例に、理論式、2次元FEM解析、3次元FEM解析を比較検証され、3次元解析の妥当性、必要性を述べられていました。また、3次元解析による地すべりに対する集水井、集水ボーリングなどの排水効果の評価についてもその有効性を紹介して頂きました。
液状化による被害と対策では、1964年新潟地震や2004年中越地震での液状化による被災例を紹介され、液状化が社会基盤施設に及ぼす影響の大きさから、液状化現象をFEM解析で再現し(図2)、性能照査を行うことの必要性について述べられておられました。最近のトピックスとして「2004年中越地震により生じた岩盤斜面崩壊解析事例」「2007年中越沖地震により生じた液状化による宅地地盤の変状と被害」を紹介され、前者では、繰り返しせん断変位による地盤強度の急激な低下現象による地すべりメカニズム(図3)、後者については、今後、地盤改良・補強が宅地地盤の安全性をどのくらい高めたかを定量的に解明するために、動的解析ソフトであるUWLCによるシミュレーションの必要性を紹介頂きました。
最後に、地盤解析におけるFEMの利用、課題と展望ということで、(1)性能設計においてFEMを活用する(2)FEMソフトの使用性を向上させるという2点のご意見、ご助言を頂戴致しました。これからの設計法の中心になる性能設計においてFEMは不可欠であり、そのためにも、フォーラムエイトは、使用者のニーズと利便性を充分に考慮したFEMソフトの開発が重要であるという貴重なご意見を頂戴致しました。 |
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▲写真群馬大学 鵜飼 恵三 教授 |
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▲図1 橋台基礎3浸透流解析結果 |
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▲図2 岸壁動的変形解析結果 |
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▲図3 動的弾塑性解析モデル |
■ 参考文献
・地盤の3次元弾塑性有限要素解析,丸善,1996
・弾塑性有限要素法がわかる,地盤工学会,2003
■講師プロフィール |
蔡飛[サイ ヒ]<工学博士> |
専攻: |
地盤工学 |
経歴: |
中国清華大学大学院工学研究科修士課程、中国水利省・交通省・電力工業省南京水利科学研究院 研究員、群馬大学工学部助手を経て、現在、群馬大学大学院環境デザイン工学科専攻 助教。 |
受賞: |
2002年最優秀論文賞「地すべり、斜面安定と社会基盤施設の安全性に関する第三回国際会議(シンガポール)」、2003年最優秀講演賞「地盤環境における地下水問題に関する国際シンポジウムIS-OKAYAMA」、2004年研究奨励賞(社)日本地すべり学会 |
■講演レポート |
蔡助教は地盤の数値解析をベースに地すべり対策工や液状化、浸透流解析などの研究に取り組んでいます。鵜飼教授と蔡助教、さらに若井准教授を加えた地盤工学研究室では、地盤の弾塑性、非線形問題を中心とした有限要素法による地盤解析に関する研究を行っています。その研究成果をベースに、「UC-1地盤解析シリーズ」を構成する「UWLC」「GeoFEAS」「VGFlow」「LEM3D」などのエンジンとなるソルバーの多くを蔡助教が開発、フォーラムエイトがプリ・ポスト部を付加する形で製品化を行っています。
今回は、地盤解析として非常に身近で、かつ、重要と考えられる斜面の安定解析事例と今後の課題というテーマで、「安全率の定義」「新しい逆算法」「宅地盛土全体安定性の評価」「今後の課題」について講演を頂きました。
安全率の定義として、「すべり面上に作用する滑動を起こそうとする力に対するすべり面上のせん断抵抗力の比」「すべり面に沿って斜面が極限平衡状態になるようにせん断強度定数を低減させる係数」という2つの定義に基づいた安全率、並びに、必要抑止力の計算方法、また、両者の違いについて解説して頂きました(図1)。新しい逆算法では、現行の「経験式」「山上・植田法」「斉藤の方法」の説明に加え、新しい逆算法の考え方、並びに、ケーススタディによる妥当性の検証例を紹介して頂きました。宅地盛土全体安定性の評価では、「大規模盛土造成地の変動予測調査ガイドラインの解説」より、盛土のり面の安定性、盛土全体の安定性、谷埋め型、腹付け型(図2)などをキーワードとして、円弧すべりよりも危険なすべり面が生じる場合があるといった注意点を指摘して頂きました。
今後の課題として、(1)臨界すべり面の自動探索方法の提案、(2)せん断強度低減有限要素法(SSR-FEM)を用いて臨界すべり面を求め、そのすべり面に対して、基準や設計指針で要求された極限平衡法で安全率を計算する方法(図3)、(3)スライスの分割方法で、現在、一般的となっている等幅分割では、その分割数によって安全率にばらつきがあることから、等中心角分割法を提案され、そして、(4)三次元すべり検討の必要性などをご提案頂きました。
検討手法として、考え方が比較的落ち着いていると思われる円弧すべり計算にも、いまなお、内在する問題点があることをあらためて認識すると同時に、新しい設計方法について、当社としても取り組んで参りたいと考えています。
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▲写真群馬大学 蔡飛助教 |
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▲図1 安全率と抑止力の定義 |
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▲図2 宅地盛土全体安定性の基本的な考え方 |
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▲図3 せん断強度低減有限要素法と安定計算 |
■ 参考文献
・斜面の安定・変形解析入門,鵜飼恵三,若井明彦,蔡飛,ほか,地盤工学会,2006
・有限要素法による地すべり解析,鵜飼恵三,若井明彦,蔡飛,ほか,山海堂,2006
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