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Vol. 18

一般財団法人最先端表現技術利用推進協会(以下、表技協)では、このほど教育機関に対しては初となるプロジェクションマッピングの指導認定校制度の第一号として、岩手県北上市の職業訓練法人北上情報処理学園北上コンピュータ・アカデミーを認定しました。今回はそのレポートをお届けします。


■執筆者 町田 聡(まちだ さとし)氏 プロフィール
アンビエントメディア代表 コンテンツサービスプロデューサー。プロジェクションマッピング、デジタルサイネージ、AR、3DメディアのコンサルタントURCF アドバイザー、(財)プロジェクションマッピング協会 アドバイザー。著書に「3D 技術が一番わかる」技術評論社、「3D マーケティングがビジネスを変える」翔泳社 などがある。弊社非常勤顧問。(財)最先端表現技術利用推進協会 会長。
  Twitter:http://twitter.com/machida_3ds
  facebook:http://facebook.com/machida.3DS
  HP: www.ambientmedia.jp

プロジェクションマッピングの指導認定校制度を開始
第一号に、北上コンピュータ・アカデミーを認定


プロジェクションマッピング指導者認定校制度とは

表技協ではプロジェクションマッピングをはじめ、VRや3Dプリンターなど様々な表現技術に関するセミナーやカリキュラムを人材育成の手段として提供しています。その中で、教育機関向けに提供されるものとして、表技協が直接受講者を指導する方式のものと、教員などの指導者を対象に指導する方式のものがあります。直接受講者を指導する場合は、受講を修了した個人に対して修了証が発行されます。また、指導者に対して指導する場合は、その指導者が適切に学生に対して指導できることを見極めてから、その教育機関に対して認定証が発行されます。この認定は認定後についても定期的に表技協の審査を受ける必要があり、その審査を通過した期間有効となります。 画像をクリックすると大きな画像が表示されます。
▲写真1 北上コンピュータ・アカデミー

今回の北上コンピュータ・アカデミーの場合は、CG・CADコースの指導教員に対して指導が行われ、その教員から指導を受けた学生が卒業研究発表会でその成果発表を行いました。発表された作品はプロジェクションマッピング作品としても効果的に表現されており、優れたものでしたので卒業研究発表の成果を持って認定校とさせていただきました。 


指導者教育の必要性

 
▲写真2 認定証を受け取る吉川校長(右)と、
手渡す表技協の町田会長(筆者:左)
表技協では2015年に芝浦工業大学の学生さん向けにカリキュラムを提供し、修了証を発行していますが、その時と今回の指導者向けのカリキュラム内容を比較してみると下記の違いがあることが分かります。 
プロジェクションマッピング以外の基礎教育が必要ない
指導場面を想定した、指導の指針や方向性自体を指導する
必要がある
指導後の結果をフィードバックしていただき、それを考慮し
指導に反映していく

プロジェクションマッピングを教育したい教育機関の先生方は通常2Dや3DのCGやCAD分野の方ですので、それらのソフトの使い方を教える必要はありません。その分、プロジェクションマッピングの指導が行えるので、この点は大変効率的で有意義な指導が行えます。指導について考慮が必要な点としては、技術ではなく制作に関する考え方を理解していただく点にあります。つまり映像制作における演出や制作進行、作品作りへの取り組み方などの実践面を体験いただき、それをワークフローとして学生さんに指導していただく必要があるということです。

これは、単元に分かれた指導では難しいところで、完成形のゴールを示しながらチームでそのゴールを目指すような指導方法が求められ、一番難しいところであったと思います。

表技協の指導も授業の進行について、常にフィードバックいただきながら、問題点を洗い出しそれを修正しながらゴールを目指すことに注力しました。とくに授業時間内での完成を目指すためには、作業の停滞がゆるされず、先生方も苦労されているところでした。


制作コンテンツは地元の観光PR

今回取り組んだテーマは、北上市にある国指定史跡の国見山廃寺跡をプロジェクションマッピングにより内外にPRするという課題でした。
国見山廃寺跡は、平泉が繁栄した時期からさらに200年以上前の1000年前の平安中期に栄えた山岳寺院で、伝承によると700を超える堂塔、36の僧坊をもつ大寺院であったといわれており、北上市では観光資源としても注目しています。この規模は驚くべき規模ですね!
現存していないので、学生さん達も初めて聞く話が多く、見てみたいというモチベーションと北上市の期待が相まって、大変いいテーマとして設定されました。

ご興味のある方は下記を参照ください。
●国見山廃寺跡紹介ページ
一般社団法人北上観光コンベンション協会
http://kunimi.kitakami-kanko.jp/

▲写真3 プロジェクションマッピングのアイディアフラッシュ
に書き込む学生たち
第一回目のハンズオンの指導では、指導教員と学生さん、北上市の方を交えて、どのようなプロジェクションマッピングを実施したいか、アイディアフラッシュを行ってイメージを膨らませました。この時点では規模感や実現性は問わず、自由にアイディアを出していただきました。

この時に出された場所やテーマの一部は、当日の夜にロケハンを行い、建物の大きさの測量方法など基礎データの収集を実地学習しました。
今回は予算や規模から、屋外では実施できないのですが、この時の経験はその日の講義と共に、プロジェクションマッピングの規模感について体感できた貴重な経験となりました。
その後、テーマの選定において、一過性のイベントで終わらせたくない点が重視されて、前述の国見山廃寺跡の案に決定されました。そして、その発表は2月6日の卒業研究の発表会と決まり、それを目指してすべてのスケジュールが組まれて動き始めました。

表技協プロジェクションマッピング指導者養成カリキュラムの概要  
※内容は指導校との協議により調整して実施されます。
・全8回(4か月)  ・講師3名(表技協会員)
・町田聡氏(アンビエントメディア):
     プロジェクションマッピングの基礎、計画、運用担当
・吉川マッハスペシャル氏:プロジェクションマッピングソフトの指導担当
・千葉祐吾氏(株式会社Flapper3):
     プロジェクションマッピング制作演出と制作進行担当

1. プロジェクションマッピング概要(現地ハンズオン1日)
 1) プロジェクションマッピングの概要が分かる
 2) プロジェクションマッピングの基礎的な企画提案内容が分かる
 3) 投影場所のアイディア出しと検証(現地ロケハン)
2. プロジェクションマッピング制作基礎1(遠隔指導)
 4) プロジェクションマッピング制作の概要が分かる
 5) プロジェクションマッピングソフトの使い方を体験する

3. プロジェクションマッピングの制作基礎2(遠隔指導)
 6) プロジェクションマッピングンの企画設計を行う
 7) プロジェクションマッピングの演出を理解する
4. プロジェクションマッピング自由課題の制作(遠隔指導)
 8) イメージボードを作成する
5. テスト投影用の環境を整える(遠隔指導)
 9) テスト投影の設計を行う
 10) テスト投影を行う
6. 映像制作(遠隔指導)
 11) 2D/3D映像制作を行う
7. 本番(自主実施)
 12) 機器の搬入・設置、コンテンツの投影調整、運営を行う
8. フォローアップ(現地ハンズオン2日間)
 13) 指導者と学生を含め、演出面、制作面での質疑と指導


プロジェクションマッピングの体験と投影計画の立案

  画像をクリックすると大きな画像が表示されます。
▲写真4 スカイプ経由で講義を受ける担当の高橋先生
前述の決定に従うと、場所は屋内で、発表会の会場の一室を借りて行うことになりました。
この時点で、部屋のサイズに合った投影対象とプロジェクターとの距離などを念頭に演出を考えていくことになります。これらの指導を担当の先生に行うと同時に、プロジェクションマッピングを遠隔指導で一通り体験していただきました。双方で同じセット(プロジェクターと30cm立方体)を置いて、マッピングソフトを使用しながら投影する操作です。この体験により、プロジェクターと被写体との関係や見え方、素材の準備など一通りを体験することができました。

この体験後に、今回のテーマと発表場所の制約を考えて実現可能なプランを立案する必要があります。ここまでの作業は先生が学生の意見を集約しながら進めることになりますが、場所の制約についてはある程度先生のほうで方針を決めて、環境を整えた上で学生に提示する必要があります。

画像をクリックすると大きな画像が表示されます。
▲写真5 指導を行う講師の吉川マッハスぺシャル氏 ▲写真6 遠隔の双方に同じセットを置いてそれぞれ操作

当初は、体験用のサンプルにある立方体を大きくしたものを投影対象とすることで、コンテンツの展開を検討しましたが、学生からの意見で背面をつけた展開の提案があり、その時点で実サイズでの輝度や見え方のテスト投影を行う必要があると判断し、その環境を学内に再現していただきました。とくに背面をつけた場合は投影サイズが大きくなるので、暗くなり見え方に問題がないか、投影距離が延びるので会議室に収まるか、などが気がかりでした。

これらの確認は、先生が生徒を指導する形で学内でのテストを繰り返していただき、最終的に実現可能であることを確認いただきました。この時点では担当の高橋先生が3Dソフトを使用して、投影のシミュレーションを行うなど、様々なツールを使いこなしておられました。
最終的には60cmの立方体の後ろに高さ180cmx90cmの板を2枚配置する構成に決まり、これに向けて制作業が進められました。


いよいよ、本格的な制作作業
  画像をクリックすると大きな画像が表示されます。
▲写真7 学生の制作風景
ここからは、日ごろからプロジェクションマッピングでクライアントワークをこなしているFlapper3の千葉さんにお願いして、制作全般を指導していただきました。まずは、アイディアを出して共有を図るためにマインドマップソフト(MindMeister)を使用したアイディア整理を行い、その後シナリオ作成から絵コンテ作成に進み、その映像を制作していくという流れです。
この段階では、先生の指導のもと千葉さんもチューターとなり生徒の指導にスカイプ経由で参加しました。 

大きな反響となりました

マッピングが発表されてからは、周囲の反響も出てきて3月2日には北上市長にも披露するまでになり、その様子は地元岩手版の新聞やネットニュースでも取り上げられるなど、当初の目的である北上市のPRに早くも効果を発揮しています。北上コンピュータ・アカデミーさんでは今後もこのプロジェクトを下級生に引き継いで、CADでのオブジェクト制作との連携も含めて継続していくとのことです。
このように、指導される方が地元に根付いて活動していただけることが長く続けていける重要な要素ではないかと思っています。また、地方の学生さんでもチャンスがあればレベルの高い制作も体験できて、その道に進む方もいるかもしれないと実感した機会となりました。教育機関や企業の方で、このような表現技術に関する人材育成を希望される方がおられましたら、お気軽に表技協事務局までお問合せください。

※プロジェクションマッピングの完成動画は下記で見られます。
https://youtu.be/sdMc8h421L0

画像をクリックすると大きな画像が表示されます。 画像をクリックすると大きな画像が表示されます。 画像をクリックすると大きな画像が表示されます。
▲写真8、9、10 作品の一コマ
※社名・製品名は一般的に各社の登録商標または商標です。



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