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Vol.20
都市の地震防災
体験セミナー
IT活用による建設産業の成長戦略を追求する「建設ITジャーナリスト」家入 龍太
イエイリ・ラボ・体験レポート
建設ITジャーナリスト家入龍太氏が参加するFORUM8体験セミナー有償セミナーを体験レポート
建設ITジャーナリスト家入龍太氏が参加するFORUM8体験セミナーのレポート。
新製品をはじめ、各種UC-1技術セミナーについてご紹介します。製品概要・特長、体験内容、事例・活用例、イエイリコメントと提案、製品の今後の展望などをお届けする予定です。

【プロフィール】
BIMや3次元CAD、情報化施工などの導入により、生産性向上、地球環境保全、国際化といった建設業が抱える経営課題を解決するための情報を「一歩先の視点」で発信し続ける建設ITジャーナリスト。日経BP社の建設サイト「ケンプラッツ」で「イエイリ建設IT戦略」を連載中。「年中無休・24時間受付」をモットーに建設・IT・経営に関する記事の執筆や講演、コンサルティングなどを行っている。
公式ブログはhttp://ieiri-lab.jp

●はじめに

建設ITジャーナリストの家入龍太です。
都市の地震防災を考えるとき、複数の専門分野にわたって非常に幅広い内容が含まれていることに驚きます。一つの地震が発生すると、土石流や斜面の崩壊、液状化といった地盤災害が起こり、地震動によって建物や土木構造物が損傷や破壊などの被害を受け、さらに建物の内部では家具の転倒といった被害が起こります。

また、海底で地震が起こると津波が発生し、海水が内陸部まで押し寄せて建物や橋などを壊すこともあります。

地震に対する都市の防災を考えるときには、地震の規模や地震動の強さを表す指標としてマグニチュードや震度、応答スペクトルなどがあり、建物や構造物に作用する外力には地震荷重や津波荷重があります。また、防災だけでなく、完全に被害を防ぐことが難しい実情を踏まえて減災という考え方も普及してきました。

これらの問題を扱う学問としては、地震が発生するメカニズムを探る地震学や、地震が建物や構造物に与える影響を追求する地震工学、地震による構造物の被害を防ぐ耐震工学、津波の規模や外力などを追求する津波工学などがあります。

初めて地震防災について学ぼうとする学生や社会人にとって、これだけ広範な分野を理解しようとすると、どこから手を付けていいのかわからないでしょう。こんな時、地震防災の最適な”ガイドブック”になるのがフォーラムエイトパブリッシングから発刊された「都市の地震防災」という本です。

▲「都市の地震防災」 の表紙 ▲カラーの図版や写真を豊富に使い、
グラフィカルにデザインされている

東京都市大学教授の吉川弘道先生をはじめ、5人の著者が地震の発生から地震動や津波による被害、そして防災や減災について、わかりやすく説明しているのです。この一冊があれば、多岐にわたる地震と防災に関する様々な概念や知識を、短時間でクリアに理解することができます。


●書籍の概要・特徴

「都市の地震防災」には「地震・耐震・津波・減災を学ぶ」という4つの専門分野を表すサブタイトルがつけられています。本の内容も、「第1講 地震と地震動を考える」「第2講 構造物を守る耐震工学」「第3講 都市の津波防災」「第4講 都市の防災・減災」と、4つの講で構成されています。
傘木氏は人口約3万人の長野県大町市を拠点に活動しており、ミニ水力発電や菜の花エコプロジェクトなど、地域おこしに取り組んでいます。フォーラムエイトとも14年近く、VRを使った住民参加のまちづくりなどで協力関係にあります。この日の講演では、VRをまちづくりに生かした実例やプレゼンテーションも交えました。

▲地震・耐震・津波・減災を1冊で学べる構成


執筆には吉川先生のほか、防衛大学校の矢代晴実氏(第1講担当)、東電設計の福島誠一郎氏(第4講担当)、構造技術研究所の大峯秀人氏(第2講担当)、そしてフォーラムエイトの開発者(第3講担当)がそれぞれの専門分野を担当しました。

地震防災の書籍というと、難解で堅苦しいものを想像しがちですが、この本は写真やイラストなどグラフィカルな“目に訴える情報”を豊富に盛り込んでいるため、「見るだけで伝わる」のが特徴です。これほど初心者も気軽に読める地震防災の本は珍しいでしょう。上記の4分野を1冊にまとめるため,内容は基本事項と重要事項に絞り込みました。

そして、読む順序も気にせず、興味のある分野や読者が必要とする部分だけを拾い読みできるようになっているのも特徴です。「ワン・ポイント・アドバイス」というトピックスも随所に入れてあるので、都市の地震防災を身近に感じることができるでしょう。大学や専門学校などの授業でも使えるような構成にしてあります。



●体験内容
2013年10月22日、フォーラムエイト東京本社で入門講座「都市の地震防災」が、体験セミナー形式で開催されました。教材にはこの書籍と主要部分を抜粋した資料を使いました。

まず、午後1時半から著者の吉川先生が1時間特別講演を行った後、休憩を挟んで執筆を担当したフォーラムエイトのスタッフが3章以降の内容を説明しました。そして最後にフォーラムエイトのバーチャルリアリティー(VR)技術を使って、自然災害を「見える化」するデモンストレーションなどを行いました。合計約3時間のプログラムです。フォーラムエイトのテレビ会議システムを使って、札幌と名古屋の会場にも生中継されました。

また、この講義は土木学会のCPDに認定されており、受講者には3.0ポイントが授与されました。

特別講演の冒頭、吉川先生は「地震、耐震、津波、減災の4つを1冊の本にまとめたのは、本書が初めてです」と、都市の地震防災のエッセンスを伝える本を目指したという狙いを説明しました。そのため、執筆には吉川先生以外に各分野の専門家である著者4人も参加しました。

都市の地震防災では「粘り強い」という意味の「レジリエント(Resilient)」という言葉がよく使われています。大きな都市はインフラが高密度で集積されています。ひとたび地震が起これば大きな被害が発生する可能性があります。そこで防災には「粘り強い都市」を長い期間にわたって維持し続けることが求められます。

とりわけ首都、東京の都市は、「太平洋プレート」、「フィリピン海プレート」、「北米プレート」という3枚のプレートが複雑に入り組む上に乗っています。そのため、大正時代の関東地震など、過去にも大きな地震が頻繁に発生しています。吉川先生は東京の都市が、潜在的な地震リスクにさらされていることをわかりやすく表現したイメージ図を示しながら解説しました。

地震には「活断層」と呼ばれる地表に近いプレート部分で起こるものや、プレートの境界で起こるもの、プレートの内部で起こるものがあり、いまだに定説がないそうです。活断層という言葉をよく聞きますが、その意味がよくわかりました。日本列島は4枚のプレートの上にあり、内陸型(直下型)地震や海溝型地震に見舞われるリスクがあります。

地震とは、地球内部の岩石が急激に破壊する現象です。そして地震動とは地震によって引き起こされた震動です。地震が震源断層で発生し、数km〜数百kmの地球の奥深くを伝わり、地表から数m〜数十mの深さの地盤によって地震動が増幅されます。さらに建物や構造物の固有周期と地震動の周期によって応答が大きく異なります。

▲地震発生から構造物が被災するまでの メカニズム

そのため、同じ地震でも震源からの距離によって地表の地震動が違ったり、近くの場所でも地表近くの地盤によって地震動が大きく変わったりします。また、隣同士の建物でも、建物の規模や構造などの違いで揺れ方が変わります。構造物が地震動で被災するまでのメカニズムは、震源断層、距離減衰、地盤増幅、応答特性という4つの段階で構成されていると考えれば、わかりやすいでしょう。

一方、津波とはどんな現象なのでしょうか。地震が海の下で起こるとき、海底の地殻が一気に隆起することにより、その部分の海面が周囲より盛り上がります。これが津波の発生となります。

▲津波の発生から構造物の被害までのメカニズム

盛り上がった海面は周囲に伝わっていきます。そして海岸に近づくと水深が浅くなり、海岸の地形によって波高が高くなります。そして津波が陸地を遡上(そじょう)して橋が流れたり、漂流物が建物などに激突して被害が発生したりします。津波のメカニズムは、発生→伝播→遡上→被災という順序になります。

津波の伝播速度は地震波よりも遅いので、地震動を感じてから津波がやってくるまでに数分〜数十分のタイムラグがあります。これを生かすことが防災・減災の大きなポイントです。

大きな地震が起こると、地震動や津波などによる大きな被害が発生します。そのため、大きな地震は2つの名前で呼ばれることがあります。例えば、2011年の「東日本大震災」は正しくは震災の名前であり、地震自体の名前は「東北地方太平洋沖地震」と言います。同様に1995年の「阪神・淡路大震災」の地震名は「兵庫県南部地震」、大正12年に起こった「関東大震災」の地震名は「大正関東地震」と言います。

▲津波災害の防災・減災の考え方

ここで理解してほしいのは「地震」は自然現象であり、現在の技術では発生を防ぐことはできません。しかし「震災」は社会現象です。人類の英知で防止・減少させることができるのです。そのため、近い将来は地震予知と防災技術の進化によって、大地震が起きても震災は発生させないということが期待できます。

地震に備える耐震工学という学問は、地震被害の教訓と強震観測データの蓄積(フェーズ1)から始まりました。そのデータを基に構造実験や実証実験(フェーズ2)を行って構造物の揺れ方や壊れ方を再現しました。そしてハードとソフト技術の開発(フェーズ3)、設計基準と耐震設計法の作成/改訂(フェーズ4)へと進んできたのです。

地震動が建物などに梁と柱から構成される構造物に地震動が加わると地震荷重によって変形します。これは「動的荷重」というものです。この地震荷重は、建物の質量がある部分に水平な「静的荷重」を作用させたのと同じ効果を生みます。これが耐震設計の考え方の基本です。


▲地震力による動的荷重(左)と静的荷重(右)は構造物に同じ応力と変形を発生させる

吉川先生は「日本には優れた研究や技術は多いがあまりにも高度化・専門化してきたため、教育の体系化は至難の業です。地震防災の全体像を理解してもらいやすくするために、この本の出版を企画しました」と執筆の動機を語り、基調講演を締めくくりました。


▲コンピューターによるコンクリート高架橋の固有値解析

その後、休憩をはさんでフォーラムエイトのスタッフが第3章「地震動を読む」、第5章「構造物の応答」、第7章「土木技術の耐震技術を知る」の主なポイントを解説しました。その中では、実際の構造物の振動実験をコンピューターシミュレーションによって再現できる例や、コンクリート高架橋を数値モデル化してコンピューターの上で揺らし、固有振動数を求めることができることなどが解説されました。

●イエイリコメントと提案

日本の建築分野は、意匠、構造、設備というように専門化・細分化が進んでいます。そのため、1つの建物を設計・施工する専門家は多くを追求するあまり、建物全体の意匠、構造、設備をトータルに考えられる人が少なくなっているのも事実です。

これは地震防災の分野にも言えます。実際の地震では、1つの建物には地震力や津波力が作用し、火災や地盤の液状化による被害を受けるリスクもあります。しかし、学問としては耐震工学や津波工学、火災工学、地盤工学などに分かれ、それぞれの分野の詳しい専門書はあっても、生活者にとって「ワンストップ・サービス」としての知識を提供できていないという課題がありました。

今の高度化・専門化した学問は、専門性や厳密さにこだわりすぎると、かえって理解者を減らしてしまい、将来、その分野で活躍する人材を獲得できなくなる恐れもあります。

その点、吉川先生らが執筆した「都市の地震防災」は、この分野で初めての“顧客志向の入門書”と言えるものです。執筆陣は各分野の専門化でありながら、あえて細部や厳密さを省き、初心者にとって分かりやすくすることを優先しました。

そのため、地震防災の幅広い分野の概要や位置付けを短時間サクッと理解できるように配慮されています。短時間で地震防災の全体像を理解できる画期的な編集方針と言えるでしょう。

▲実物大の構造物の振動実験が行える
巨大振動台「E-ディフェンス」
▲コンピューターによる振動解析用モデル

●今後の展望

最近は建築分野ではBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)、土木分野ではCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)が普及しつつあり、建物全体や土木インフラ全体の情報を統合しながら設計、施工、維持管理を進めていこうという気運が高まっています。

さらに都市全体の建物や電気自動車などのエネルギーを統合管理する「スマートシティー」の構想も各地で進んでいます。将来、日本全国の社会インフラをデジタルモデル化して統合的に扱えるシステムとして「国家インフラモデル」という概念も生まれています。

こうした統合的なシステムを作るとき、高度に進化した建築設備や電気自動車、太陽光発電システム、電力貯蔵システムなどをトータルに考える必要がますます増えてきます。

そんなとき、「都市の地震防災」と同様に、あるシステムに関連する幅広い分野を浅く広く、漏れなく理解できる本の存在は不可欠です。今後のBIM/CIMやスマートシティー、国家インフラモデルなどのシステムに応じて、関連する設備やインフラなどの位置付けや機能を分かりやすく解説し、全体を俯瞰(ふかん)できる入門書の登場が期待されます。

     
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