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Vol.21
BCP策定・BCMS
構築支援サービス
体験セミナー
IT活用による建設産業の成長戦略を追求する「建設ITジャーナリスト」家入 龍太
イエイリ・ラボ・体験レポート
建設ITジャーナリスト家入龍太氏が参加するFORUM8体験セミナー有償セミナーを体験レポート
建設ITジャーナリスト家入龍太氏が参加するFORUM8体験セミナーのレポート。
新製品をはじめ、各種UC-1技術セミナーについてご紹介します。
製品概要・特長、体験内容、事例・活用例、イエイリコメントと提案、製品の今後の展望などをお届けしています。

【プロフィール】
BIMや3次元CAD、情報化施工などの導入により、生産性向上、地球環境保全、国際化といった建設業が抱える経営課題を解決するための情報を「一歩先の視点」で発信し続ける建設ITジャーナリスト。日経BP社の建設サイト「ケンプラッツ」で「イエイリ建設IT戦略」を連載中。「年中無休・24時間受付」をモットーに建設・IT・経営に関する記事の執筆や講演、コンサルティングなどを行っている。
公式ブログはhttp://ieiri-lab.jp

●はじめに

建設ITジャーナリストの家入龍太です。
地震や洪水などの自然災害や、新型インフルエンザが流行したときなどの非常時にも、企業の活動がストップしないようにするために、BCP(Business continuity planning:事業継続計画)が注目を集めています。ISO(国際標準化機構)では、BCPの取り組みをBCMS(Business Continuity Management System:事業継続マネジメントシステム)として規格化し、そのフレームワークを構築した企業などに「ISO22301」の認証を行っています。

BCPとは、オフィスが被災して設備が壊れたり、交通網がストップして社員が出社できなくなったりしたときに、企業が最低限のサービスを提供し続けられるように準備と対策を行っておくことです。

フォーラムエイトは日本企業としてはいち早くBCPに取り組み、2011年6月に東京都BCP策定支援事業の第1期支援企業に選ばれたほか、2012年12月には国内で13番目にISO22301の認証を取得しました。この認証取得時にヒルベット・ソリューション(本社:千葉市中央区)の支援を受けました。


●製品概要・特長

フォーラムエイトはISO22301の認証取得の経験を生かし、BCP策定とBCMS構築についての支援サービス事業を展開しています。

▲図1 BCPによる事業復旧のイメージ

2011年12月に「BCP作成支援ツール」を発売しました。地震や火災、テロなどの緊急事態に遭遇した企業が、対策や緊急時の行動を事前に計画する作業を効率的に行うものです。社員の自宅やオフィスの位置と、建物の倒壊危険度や火災危険度、地震リスクなどのハザードマップと重ね合わせてなどを地図上に表示し、緊急時の配置計画に利用できるようにしたシステムです。

例えば建物倒壊危険度と社員の自宅の位置を重ね合わせると、震災直後のオフィス復旧要員の選定や帰宅困難社員の特定、事業継続時の社員の通勤可否などの検討が行えます。

▲図2 「BCP作成支援ツール」の画面。
社員の自宅などの位置をハザードマップに重ねて見られる

また、2013年12月にはBCPを既に準備している企業やBCPコンサルタント向けに「BCP演習支援ツール」を発売しました。フォーラムエイトと業務提携しているヒルベット・ソリューションが開発した製品です。

企業としての各事業の重要度や復旧の優先順位、事業継続に必要な設備や人などの経営資源を洗い出し、相互の関連性を考慮しながらBCPを効果的に行っていけるように、シミュレーションしながら訓練を行えるようにしたものです。
 
▲図3 「BCP演習支援ツール」の画面。
災害後の日数と活用できる経営資源をバーチャートのように見える化する


●体験内容
筆者が今回、参加したのは、昨年12月13日にフォーラムエイト東京本社で開催された「BCP策定・BCMS構築支援サービス体験セミナー」です。構造物や建物の設計システムとは大いに異なる内容でした。講師を務めるのは、ヒルベット・ソリューション代表取締役社長の小山隆氏です。

セミナーはBCP策定の基本的な考え方の解説から始まりました。企業を取り巻く脅威には、製品の欠陥や情報漏えいなどの「オペレーショナルリスク」、経済危機や市場ニーズ変化などの「戦略リスク」、株価変動や為替変動などの「財務リスク」などがありますが、BCPが対象とするのは自然災害や火災などの「ハザードリスク」です。

一口に自然災害と言っても、地震のようにいつ起こるのかが分からないものもあれば、新型インフルエンザの流行が激化するパンデミックのように直前に状況が予測できるものもあります。

この違いに対する取り組み方について、小山氏は事業継続・復旧モデルを地震タイプとインフルエンザタイプに分け、初動対応や事業継続、事業復旧のタイミングや戦略に違いがあることを解説しました。

地震タイプの災害は、前触れもなく突然、発生します。そのため、当初のダメージを最小限にとどめつつ、まずは仮復旧によって最低限の操業水準まで回復させ、その後、災害前の操業水準まで回復させるという2段階で行う戦略をとります。

一方、パンデミックなどインフルエンザ型の災害は、予兆があり、事業を継続する環境が厳しくなる中で、徐々に操業水準を落としながらも最低限のレベルをキープし、環境の改善に合わせて事業復旧や予防を行っていく戦略をとります。
 
▲図4 「地震タイプ」の事業継続・復旧モデル
    (資料:ヒルベット・ソリューション)
▲図5 「インフルエンザタイプ」の事業継続・復旧モデル
    (資料:ヒルベット・ソリューション)

BCPは限られた設備や人材とエネルギーや交通などの制約条件の元で行うものなので、「選択と集中」が成果を大きく左右します。
そこでまず、必要なのが自社の事業内容の分析です。複数の事業を営んでいる場合、売り上げや利益が大きいもの、重要な顧客を抱えているもの、将来性などを総合的に判断して、どの事業を優先的に回復・復旧させるのかを決めるのです。

次に、社内の限られた設備や人材などのリソースをどのように事業の復旧に割り当てるのかを決めます。そして、各事業の回復・復旧レベルとそれを達成するまでの目標時間を決めて、具体的なシナリオを時系列的に描いていくのです。

もちろん、災害の直後に最も大切なのは従業員やその家族の安全確認です。その後、自社の被害状況と、活用可能なリソース把握して事業復旧を実行に移す。こうした初動対応の手順や組織、担当者などを決めていくのがBCPの策定作業となります。

BCP策定で重要なことは、組織のメンバー全員がその内容について理解を深めておくことです。そしていざ、災害が起こったときには、各メンバーが自分の役割をすぐに果たせるようにしておかないといけません。そのため、BCPを文書化して社内で共有するとともに、被害状況を仮定して「机上演習」を行っておくことも重要です。

 
▲図6 「事業のうち重要度の高い事業を選び、
「選択と集中」によって優先的に復旧させる
▲図7 災害後の日数に応じた初動対応と緊急対応組織の検討

一通りBCPの基礎と流れを学んだ後で、BCPの実習に移りました。セミナー参加者には演習用のシートが配られています。まずはBCP策定の対象とする重要な事業を選ぶ「中核事業の特定」です。セミナー参加者は、所属する企業の事業の中から、優先度が高いものをいくつか選んで記入していきました。

続いて復旧のレベルとそれまでの時間を決めていきます。時間の設定は「数時間後」「1日後」「数日後」「1週間後」「1カ月後」というように、指数的な考え方で計画するのがポイントです。これらを「事業復旧指標特定表」に記入していきます。このとき、事業復旧の時間的条件を明確にするため「最大許容停止時間」「目標復旧時間」「最低許容復旧レベル」「目標復旧レベル」を決めておきます。

ここまでの作業は、紙と鉛筆があればなんとかできます。しかし、BCPを実行に移して行くうえで重要なのは、各業務と経営資源がどのような依存関係になっているのかを明らかにし、実行可能な計画にしておくことです。

例えば、あるソフトウエアのサポートを行うためにはパソコン、サポート担当者が必要であり、さらに電話回線や電源が使えることが必要である、といったような関係です。これらが一つでも欠けていると、その事業が継続不可能になるからです。

そのため、使えるパソコンを確保し、オフィスに出勤できる社員を割り当てるとともに、交通機関や電話、電気の回復時期と整合がとれるように計画しなければいけません。
こうした複雑な経営資源の依存関係を整理するため、演習の後半では「BCP演習支援ツール」を使って、BCPに記載されている事業や業務、経営資源を登録し、これらの依存関係を考慮しながら事業回復のシナリオをシミュレーションしました。

BCP演習支援ツールのよいところは、経営資源間の依存関係を基に、それぞれの経営資源が稼働停止している時間を見える化できるところです。この見える化によってBCPの行動計画をメンバー全員で共有し、復旧イメージを共通に描けるようになります。そしてより実効性のあるBCP体制を構築できます。

●イエイリコメントと提案

BCPは災害時において企業の事業を最も効果的に復旧させるための戦略をまとめたものですが、見方を変えると災害で破壊されたライフラインなどの復旧戦略と非常に似通った点が多いことに気づきます。

例えば、地震であちこちが寸断された水道の管路網をどのような手順で復旧させるかを考えたとき、断水している家庭が多く接続している管路を選び、配水池から家庭へという順序で復旧させていくと短時間で多くの断水を解消することになります。

優先的に復旧させる管路を選ぶことは、企業ではBCP対象事業を選ぶことに相当します。

管路復旧に使える資材や建設機械、作業員の数も限られているので、そのリソースを最大限に活用できる工程計画を作り、実行していくことも必要です。これはBCPでは「事業復旧指標特定表」で復旧の目指すレベルと時間を設定する作業に相当します。

そして各作業で作業員の過不足が生じないように、適切に割り当てることは、BCPでも同じです。また、めったに発生しない災害時の状況を組織のメンバー全員がイメージして、復旧順序についての考え方を共有し、いざという時には行動できるように訓練しておく重要性も水道管路の復旧とBCPは全く同じと言えるでしょう。

▲図8 「ネットワーク式工程表の例。各作業の前後関係と作業の所要時間
を見える化し、重点作業を管理する(資料:ブログ「理系じゃけん」より)


●今後の展望

CPが目的とする復旧レベルと時間を実現する考え方は、「PERT」と呼ばれる工程管理手法とよく似ています。プロジェクトを細分化した作業を時間軸上で直列、並列につないだネットワーク式工程表を作り、全体の工期を計算したり、各作業に割り当てるリソースを調整したりする手法です。

現在の「BCP演習支援ツール」は、その日に活用できるリソースをバーチャートのように見える化できる機能がありますが、水道や電気、交通などの復旧時間は予定と実際で変化していきます。

こうした地理的、時間的変化をBCPの復旧計画に取り入れ、時々刻々と最適な復旧スケジュールを見直していくためには、BCPの考え方に基づいて地理的な復旧はGIS、時間的な復旧はネットワーク式工程表を組み合わせた仕組みで管理していくと、さらに効果的ではないでしょうか。
また、BCPが必要となるような大規模な災害はほとんどの人が初めて経験するものなので、被害や復旧の状態をリアルにイメージしにくいでしょう。

そこで活用したいのがUC-win/Roadです。例えばフランスのBMIA社がUC-win/Roadを使ってトンネル事故時の対応を訓練する「トンネルシミュレーター」を開発しました。これと同じような考えで「BCPシミュレーター」を開発するというのはいかがでしょうか。

災害時の社内の状況や復旧の各段階で活用できる人材や資材、事業継続中のオフィス風景、顧客とのやりとりなどを3DVRで作成し、教育訓練に活用することでいざという時の行動がスムーズにできるようになりそうです。

▲図9 UC-win/Roadでトンネル事故時の対応
を訓練するBMIA社のトンネルシミュレーター


     
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(Up&Coming '14 春の号掲載)
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