消防庁に電話して「どうして非常口から避難場所までの誘導の手立てを整えないのですか?」と聞いてみた。「私どもの所轄ではありません」の一言。縦割り行政の防災の柱には、桁も梁も渡っていないので将棋倒しになった。甚大な被害の真因を悟った。
表題の2冊の出版企画は、自分の子供のような非常口と避難場所のピクトグラムが3.11以前から出会うことがなかったからだ。二つをつないで、迅速に避難できていれば、どれだけ多くの命を守ることができたかと思う。
労働災害を含む災害関係の中央省庁に40年近く協力して、経産大臣から標準化功労者賞を授与された。けれども3.11以降は、民間のネットワーク、ノウハウ、技術、製造施設、素材、商品を束ねて、実証を伴うトータルシステムを生み出してきた。
表題の2冊は、非常時の必要性を避難誘導サインによって平常時に内包させる認識の啓蒙書と実践の手引書。2冊活用することで、屋内と屋外を一貫させ、非常時と平常時を一体化させて、各種災害にも対応する「トータルシステム」によって、安全で安心な街づくりに貢献できる。
そのために‘具体的で視覚的なパターン認識を軸とする手法’を採用した。多様な言語を補うピクトグラムによって「サイン・コミュニケーション環境」が整う。危険から安全、不安から安心へと誘う新たな「感じ取れるサイン環境」づくり。消費者から生活者に軸足を移した恊働によって、非常時を内包した、安全・安心な日常環境を創造できるのだ。
今回、その2度にわたる実証実験の評価データを掲載した。景観調和と誘導機能のどちらも高い評価だった。杉並区民のワークショップで15年前から当方の提案が具体化されている事例も示した。
また新しい国家規格JIS Z 9098-2016は地震に対する配慮がないこと、全国の道を誘導標識が埋め尽くして景観が損なわれ、経済負荷も少なくないこと、そして三角形の国家規格の津波の図形は、119名中一人しか評価していない事実を示して見直しの必要性を明らかにした。
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