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<ちょっと教えたい話> Up&Coming '98 秋の号('98.10. 8.)掲載
WCOMDが国際解析コンペで優秀な成績をおさめました
今回は、当社製品『RC構造の2次元動的非線形解析WCOMD』の開発元である東京大学コンクリート研究室の前川宏一教授から、うれしいメールを頂きましたので以下にご紹介します。また、これを機会に同研究室におけるWCOMD開発の経緯や背景、今後の研究について簡単に紹介させて頂きます。

▲東京大学教授 
 岡村 甫 先生
前川先生のメールから(抜粋):
「フランス原子力研究所で国際解析コンペが企画され、この9月にシンポジウムが開催されます。これは、多層のRC耐震壁を実際に動的に振動台を使用して揺すって破壊させたものです。この実験結果は事前には公表されず、実験条件と入力波のみで構造物の応答を解析予測せよ、というものです。WCOMDの解析結果は参加機関の中で最も実験結果を忠実に予測していることが速報で知らされました。最大応答近辺の動的応答は、線が重なるぐらいの精度を得ています。嬉しかったとともに私がWCOMDの買いとおもったのは、最大応答以後の残留を正しく評価している点です。今後、大地震で破壊しない構造物を設計するのみならず、地震作用以後の残存機能を確保することが求められます。耐震設計の要点は、破壊の安全確保から損傷制御にまで広がってきたということでしょうか。最大応答のみならず残留変形を評価できることが大きなセールスポイントとなることです。」('98年7月末受領)
 WCOMDは、1980年から岡村甫教授の構想と指導のもとに、前川教授らによって開発が進められ、まず1987年に静的解析バージョンWCOMRが開発されました。そして構成モデルの改良と適用範囲の拡大が進められ、動的問題までをカバーするWCOMDが1990年に報告されました。当時2方向非直交ひび割れの開閉とずれを直接的に考慮し、交番繰り返し応力履歴にも適用できる構成モデルとしては唯一のものでした。その後も地盤も含めた動的解析法として改良が鋭意進められ、構成モデルも独立4方向ひび割れまでを包含できるように、高性能化が図られました。(関連記事を「改訂製品のご紹介:UC-1 WCOMD(Up & Coming '98 秋の号掲載)(1999年9月にUC-win/WCOMDとして改訂)」ページに掲載)
 今回WCOMDが好成績を収めましたが、その前身であるWCOMRも国際コンペで優秀な成績を収めています。WCOMRによるRC板のせん断解析結果は、1982年のトロント国際解析コンペでは、33の研究機関が参加した中で、Dr.Cervenkaに次いだ成績を収めました。
 WCOMR、WCOMDの開発には過去15年間で25名以上の研究者が参加されており、韓国 成均館大学 申教授、関東学院大学 出雲教授、スイス連邦工科大学 宋博士、高知工科大学 島教授、大成建設 福浦氏、前田建設工業 三島氏、Li氏、Bujadham氏、Dr.Shawky、Dr.Irawan他の皆さんがおられます。東京大学コンクリート研究室には大学院留学生の方々も多く所属されています。理論・解析的な側面から主として研究していますが、必ず要素および構造実験による検証が指導教官から求められます。したがって全員、実験テーマも同時にもって研究開発が進められているのが開発における特徴の一つです。
 現在は、3次元化する研究開発--COM3計画--が進められています。そしてこれらの延長に、熱・物質移動・水和・環境作用・電場まで一括して取り込んだDuCOMプロジェクトが1990年以降進行しており、コンクリート材料・構造の統合ソフトとして展開しています。将来的に構造物および材料の総合的な性能判定に適用されるものと期待されています。研究途上ですが、これまでの中間報告として、向こう半年以内に英国の出版社から『Modeling of Concrete Performance』と題する本が出版される予定です。



▲東京大学工学部1号館の
外観と教室内部

▲構造実験の様子

▲ソフトウェア開発に携わっている
学生の皆さん

▲コンクリート研究室内の様子
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