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Vol.2
黒部川 
黒部川は、その源を長野県境の鷲羽岳(わしばだけ)(標高2,924m)に発し、立山連峰と後立山連峰の間に峡谷を刻み北流し、黒薙川等の支川を合わせ黒部市愛本に至り、その後は扇状地を流下し、黒部市・入善町において日本海に注ぐ、幹川流路延長85km、流域面積682km2の一級河川です。
画像をクリックすると大きな画像が表示されます。
NPO法人 シビルまちづくりステーション  http://www.itstation.jp/
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治水(河川改修・砂防・海岸)の歴史

黒部川の治水事業の歴史は古く、常願寺川と同様越中守護職の佐々成正が築堤を命じたのが最初だと言われています。 その後江戸時代になり領主前田利家が治山・治水政策を立て、 黒部の奥山廻り役人による森林管理や黒部川両岸の堤防工事等が実施されました。
1689(元禄2年)8月、黒部川を渡った松尾芭蕉は、 前日親不知を越え、市振で宿泊し、「一つ家に遊女も寝たり萩と月」の句を残していますが、「くろべ四十八か瀬とかや、数しらぬ川をわたりて那古 (現在の新湊市)という浦に出ず。」と「奥の細道」に書かれていますように、当時の黒部川は幾筋もの河川に分れて扇状地を流れ、 橋も架っていなかったようです。

本格的な治水事業は、1882年(明治17年)から富山県による改修工事が実施され、 明治29年にはオランダ人技師ヨハネス・デ・レーケの設計による霞堤が沿川各地に施工されたことにより、 河道が現在の位置に定まったとされています。

写真1

写真2

その後昭和9年7月の大洪水を契機に、扇頂部の愛本下流が同12年に直轄河川となり、常願寺川と同様、 堤防、護岸、巨大水制等が施工され、タワーエキスカベータ―による河床掘削が実施されました。

その後1975年(昭和50年)代からは、 河床洗堀による破堤対策としての護岸の根継ぎや水衝部の河岸侵食対策として高水敷となった寄洲に堤防補強機能をもつ「縦工」の整備が進められています写真1高水敷川側の縦工と根固工。

また平成13年には洪水調節や水道用水供給等を目的とした宇奈月ダム写真2が完成し、上流の出し平(だしだいら)ダムとの連携排砂を実施しています。

砂防事業については昭和36年から、海岸事業は高波被害や侵食防止のため昭和35年から、直轄事業に着手しており、海岸から上流荒廃地まで水系一貫しての国直轄事業を実施しています。



利水・発電等

利水については、農業用水として約8、300haの農地のかんがいおよび水道用水・消流雪用水等として利用されています。また発電用水としての利用も盛んで、黒部第四発電所をはじめとする18箇所の発電所で最大約97万kWの発電が行われています。 その他名水百選に選ばれた扇状地の湧水群や豊富な地下水も生活用水や工業用水等に利用されています。
写真3は黒部ダム:高さ186m、総貯水容量199百万m2のアーチダム

写真3

見どころ寄りどころ

扇頂部の愛本橋は黒部川で初めて架けられた橋で、寛文2年(1662年)に第5代藩主前田綱紀が命じて造らせたといわれています。 当時刎橋と言われその構造の奇抜さから日本三奇橋の一つに数えられました。何回も架け替えられており写真4は明治23年頃のもので、 写真5は鋼ニールセン橋です。

なお愛本橋の近くには宇奈月温泉があり、その上流黒部渓谷沿いに黒薙温泉、鐘釣温泉等数か所の温泉があり、 これらの温泉を結ぶのが黒部溪谷鉄道(通称 トロッコ電車:宇奈月〜欅平(けやきだいら)間の約20km2)です。 これより上流渓谷沿いには関電黒部専用鉄道(約7km)がありますが、 現在一般公開されていません。 黒部ダム建設のための延伸部のトンネルは、 吉村 昭の小説「高熱隧道」でも有名です。

黒部峡谷は立山連峰と 後立山連峰を分断する極めて大規模な峡谷で、国の特別天然記念物及び特別名勝に指定されており、中部山岳国立公園に含まれています。新潟県の清津峡谷、三重県の大杉谷と共に日本三大峡谷の一つです。

写真4
写真5 写真6

未曽有の災害発生を踏まえて
令和元年は、災害対策基本法制定のきっかけとなった伊勢湾台風から60年の年でしたが、東日本では台風15号、19号による未曽有の風水害の年となりました。 被害者の皆様に心からお見舞い申し上げます。 平成27年には鬼怒川等での関東・東北豪雨、30年には岡山・愛媛等での西日本豪雨等と線状降水帯による浸水・土砂災害等の災害も発生しています。 これらを踏まえて今後の治水のあり方はどうあるべきか、次回以降の「河川余話」でも触れてみたいと思います。

<参考文献>
1) 国土交通省HP http://www.mlit.go.jp/river/toukei_chousa/kasen/jiten/nihon_kawa/index.html
2) 「富山工事事務所六十年史」 建設省北陸地方建設局富山工事事務所 平成8年2月発行(非売品)
3) 吉村昭「高熱隧道」新潮文庫
4) 萩原井泉水「奥の細道ノート」 新潮文庫

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