フォーラムエイトでは、当社主催のサマーワークショップをはじめとして、会員として所属するCSAJ(一般社団法人コンピュータソフトウェア協会)、マサチューセッツ工科大産学連携プロジェクト(MIT
ILP)に関連する活動など、さまざまな研修に参加し、最新の技術や関連ビジネスについての知見を広めています。新連載の本コーナーでは、これらの研修の内容についてレポートしていきます。第1回の今回は、2016年5月に行われたフォーラムエイトの社内研修旅行について紹介します。
名古屋大学「世界初大型4K5面立体視ドライブシミュレータ」(NIC)と
「3D模型サービスによる3Dビジュアライズ」(減災館)見学 |
2016年5月13日(金) |
フォーラムエイトでは毎年社内研修旅行を行っています。本年は2回に分けての実施となり、第1陣はシステム開発グループおよび東日本地域に所属の社員を中心としたメンバーが、サミットに湧く伊勢および近隣の名古屋を訪れました。
大型シミュレータと一体化した大規模な研究施設を体感
一行は、近年ノーベル賞受賞者を多く輩出し、研究機関としても注目を集めている名古屋大学の東山キャンパスを訪問。まず、当社が2015年6月に納入したUC-win/Roadドライブシミュレータが設置されている同大のNIC(ナショナル・イノベーション・コンプレックス)を見学しました。
名古屋大学は平成25年度の文部科学省「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」に「多様化・個別化社会イノベーションデザイン拠点〜高齢者が元気になるモビリティー社会〜」をテーマとして応募し、全国の中核拠点の1つとして選ばれています。このシミュレータは、産学連携や共同開発によるCOI研究推進における車両性能実証装置として運用されているものです。
まず、名古屋大学特任教授で未来社会創造機構 名古屋COI拠点産学連携リーダーの原口哲之理氏に直接システムをご説明いただいた後、ドライブシミュレータ本体および巨大なCAVEシステム・投影装置などが配置された空間内へ、緊張しながら足を踏み入れました。 |
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コントロールルームで説明を行う原口教授 |
3Dメガネに取り付けたターゲットの位置をダッシュボード上部の「ヘッドトラッキングシステム」が感知し、スクリーンに映される立体映像が視点に合せて自動調整される仕組みとなっており、実際にメガネを装着し運転シミュレーションを初めて体験した社員は、UC-win/Roadによる名古屋の街並みの高精度なVRと臨場感に興奮気味でした。
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前後・左右のスクリーン裏側にそれぞれ映写室がある |
NIC の建物 |
減災館 |
防災・減災への取り組みをわかりやすく展示
次に、フォーラムエイトの3D模型プリンティングで製作された「3Dビジュアライズ」のシステムが展示されている「減災連携研究センター 減災館」を見学。減災館は名古屋大学において減災研究をリードする「減災連携研究センター」の実践的な活動拠点として2014年3月に創設されて以来、
研究成果を可視化し一般に広く公開することを目指しています。
1階フロアの「減災ギャラリー」には、プロジェクションマッピングを利用して地図情報を地形の立体模型に映して表現する「3Dビジュアライズ」を展示。これは、東海地方の地形を高精度に再現した3D模型を、UC-win/Roadの地形データと3D模型出力サービスを活用して製作されたものです。各種の被害想定、統計データや観測データや時代別の変遷、活断層の位置など、投影内容を自分で切り替えて確認することで、空間的・地理的に非常に把握しやすいものとなっていました。
また、同館に関わる教員・研究者が日替わりでテーマを設けレクチャーを行うギャラリートークも併せて聴講。この日は曽根好徳氏(地盤工学者。名古屋大学減災連携研究センター 地域社会減災計画寄附研究部門 教授)による「東日本大震災の苦い経験を教訓に南海トラフ巨大地震を生き抜く!」と題した講演で、フォーラムエイト以外にも地元の方をはじめとした数多くの参加者でほとんどの席が埋まっていました。 |
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模型とマッピングを利用した3D ビジュアライズシステム |
この他にも、防災・減災の必要性について専門家でなくても理解できるようなさまざまなシステムやわかりやすい展示が設置されており、今後もこういった取り組みを3DVRを活用した最先端技術で支えていきたいという目標を一同で新たにした研修旅行となりました。
日本三名橋「錦帯橋」と橋百選・山口県・掲載の橋梁見学 |
2016年5月20日(金) |
VRおよびUC-1開発グループと西日本地域に所属する社員を中心としたメンバーは、本誌Up&Comingの人気ナンバーワン連載でもある「橋百選」の山口県編(2014年秋の107号)に掲載された名橋巡り。2015年5月30日にフォーラムエイトがメインスポンサーとして協賛した岩国・錦帯橋プロジェクションマッピング「時空の架け橋」を思い浮かべながら、一行は快晴のなか山口県に向かい、岩国に到着しました。伝統の岩国寿司で鉄道の長旅の疲れを癒やした後、いよいよ実際に錦帯橋を目にすることができました。
錦帯橋は幅約200mの河川に4つの橋桁を持つ5連の木道橋で、現在ユネスコの世界遺産に登録されている橋梁の中でも、類似の構造を持った木造橋は他に見られません。中央3連がアーチ橋、両側が桁橋構造を持つ反橋となっており、アーチ橋は左右の橋桁の1番桁から11番桁まで勾配をゆるめながら先に突き出るように重ねられ、9番桁鼻間に大棟木、10番桁鼻間に小棟木を入れます。
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このような構造のため、アーチ上を実際に歩いて渡ってみると思いのほか勾配がきつく、特に初めて訪れた社員は足元に注意しながらこわごわと足を進めていましたが、全体的に調和のとれた美しい形状と、部材の数と組み立ての細かさに感銘を受けました。
この橋は、継手や仕口といった組木の技術によって造られ、橋上からの圧力でさらに強度が増す仕組みとなっています。 径間35mを無脚で渡した300年以上前の技術は、現代の橋梁工学から見ても高く評価されています。昔は橋を渡す際に通行料を支払う必要があったため、「せこい橋」とも呼ばれていたそうですが、今回実際に見学してみて「すごい橋」という印象しか残りません。 |
錦帯橋 |
次に、平安橋をゆっくりと見て回りました。とても短い橋で控えめな姿をしていますが、珍しい構造となっています。1652年からまず木橋として開通し、身近な存在として地元住民から親しまれてきましたが、今回数十人が見学に来ることに驚いていた様子でした。
また、翌5月21日(土)には、本州と九州を結ぶ関門橋と関門トンネルを見学。これらが設けられたことで、非常に多くの人々が安心・安全に行き交い、また集うことができるようになったことを実感しました。
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▲平安橋 |
▲関門橋 |
こうして当たり前のように役目を果たしている数百年前の橋や、最新の技術で可能となった現代の橋を訪れたことで、これからの日本のインフラを支えるソリューションの開発と提供を引き続き拡大していかなければならないと改めて実感することができました。
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