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      | ユニバーサル・コミュニケーションデザインの認識と実践
 
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                              | 太田 幸夫 ビジュアル・コミュニケーションデザイナー、太田幸夫デザインアソシエーツ代表
 特定非営利活動法人サインセンター理事長、多摩美術大学 前教授
 LoCoS研究会代表、日本サイン学会理事・元会長、日本デザイン学会評議員
 一般財団法人国際ユニバーサルデザイン協議会評議員
 A.マーカスデザインアソシエーツ日本代表
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      | Vol.2 | 視覚言語の歴史的役割と可能性 
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      | なぜ今、視覚言語なのか 人類は今、技術文明と精神文化のギャップの狭間にあって環境破壊など、最重要な問題の理解と認識を共有し一致協力して解決にあたらなければならない。複合化する都市環境や機器類のブラックボックス化にも悩まされ、インターネットや海外旅行の普及により、言語の違いを思い知らされている。そうした障害を乗り越える可能性を視覚言語は持っている。
 
 視覚言語とはなにか
 文字言語や音声言語と視覚言語を比較すると、視覚言語は文化や経験や学歴の違いを乗り越え、一人の生活者として分かり合える特徴をもつ。理性的、分析的、逐語処理的ではなく、絵画のように感性的、総合的、同時把握的であるため、見ればすぐわかる。教育学習からも自由である。無視することもできるし判断することもないので、見る側の主体が活かされ、偏見なしに伝達できる。
 
 O.ノイラートのアイソタイプ、H.バイヤーの世界地理地図、C.K.ブリスや太田幸夫の視覚言語など、国際的に知られる視覚言語の一部を、本欄でも取り上げる。バーチャルリアリティー(3D・VR)は、その最先端の事例と言える。
 
 視覚情報として視覚言語を捉えてみれば、「情報」が生物の生存にとって、「もの」と「エネルギー」とともに欠かせない三本柱の一つであることに気づく。生物の誕生とともにある情報は、生物が生存を維持していくための、最適行動選択の知らせである。生物としての生活主体が識別し評価し判断した状況関係が情報なのである。「サイン」は情報の素子で、意味を持つ事物や状況のしるし全般ととらえる。自分の必要性や価値基準に従って、特定のサインだけをえらびだす。これを組み合わせて複合的な意味である情報に作り上げていく。
 
 視覚言語の構成要素の中で、視覚的に意味を伝えるピクトグラムは、意味するものの形状をシンボライズして活用するため意思に伴うイメージに合致しやすい。その意味を必要とする人にはピクトグラムによって、そのひとの意思や必要性に環境自体が応えることになるので満足を生む。またシンボルとしてのピクトグラムが有する象徴的イメージは、行動に直結しシグナルとして利用できるので、誰にとっても見取りやすいコミュニケーション環境に近づく。音、触覚なども活かすユニバーサルなコミュニケーション環境の基準については最後に触れる。
 
 視覚言語によるパラダイムシフト
 意味と形の関係を学習して、読解力ならぬ視界力を身に付けることは、学校教育の中で行なわれてこなかった。形や色を扱う美術や工芸の教育は、美の創造や鑑賞、あるいは情操教育の域をでなかった。
 
 知識の大衆化のための情報伝達の新しい方法が必要と考えて、O.ノイラートは視覚教育に力を注いだ。1658年、世界最初の絵本と言われる児童百科全書『絵で見る世界の本"Obris Sensualium  Pictas"』を著作したJ.A.コメニュウスに続く心意気で彼は、"Words divide, Picture unite"というモットーを謳いあげた。視覚イメージを中心に、見れば分かる視知覚特性を重視した教育の開発である。
 
 O.ノイラートの視点には、人々の日常の経験を読解力に活かす狙いがあった。’比較’と’関係’の’中立的’表示によって論理的な認識力を、見る人の中に引き出すのである。アイソタイプではG.アルンツの協力で多数の、形と意味の豊富な関係(セマンティックス)を見せており、形と形の関係(シンタクティックス)についても、まるで風景画を眺めるような絵画的構成を創っている。また、ウイーン市民が自分たちの日常の問題を考える統計パネル展示館を建てて、アイソタイプと市民の日常的、社会的関係(プラグマティックス)を例示している。
 
 人間の知覚、認識力、理解力への訴求性を配慮し、事前の訓練、学習なしに意味・内容の伝達が可能となる視覚言語、言い換えれば、知的複合情報を日常的経験として自覚的に活かす手立てが日常環境として整備できたとする。
 
 それは「伝えたい意思と知りたい意思の出会いの場」の形成にほかならない。自分の家にいるように全てが理解の内にあって、安堵感のある楽しい環境。行動は意のままで軽く、無意識的で透明になり、環境は単なる客体でなく、愛しいものになる。状況認識と行動、精神文化と物質文明のギャップは、創造的に止揚(アウフヘーベン)され、理想と言うべき人々の”自己実現”が見られるようになるかもしれない。
 
 
 
        
          
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            | ■O.ノイラートのアイソタイプ:1933年 南カロライナ州コロンビア市の家族の年収 |  
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        | (Up&Coming '14 春の号掲載) |  
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