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サポートトピックス / Engineer's Studio® 保守・サポートサービス関連情報
多点入力の注意点は?
 
 はじめに

Engineer's Studio® Ver 4.00.00では多点入力の機能が追加されました。本稿では、多点入力と従来の地震波形入力の相違点や注意点を具体的な解析事例をみながら解説します。

 サンプルデータ「MultiPointInput-RCPier.es」

Engineer's Studio®をインストールしたフォルダに上記サンプルデータがあります(図1)。このモデルは、単柱RC橋脚の柱基部をM−φ要素でモデル化した動的解析です。

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■図1 サンプルデータ「MultiPointInput-RCPier.es」モデル図

多点入力で得られる変位は絶対変位なので相対変位を得ることを目的として、柱下端の節点(全固定支点)と柱上端の節点(天端節点)をつなぐダミーのばね要素を設けています。ダミーなので、ばね特性は6成分とも「自由」としています。このばね要素の結果は、柱下端に対する柱上端節点の相対的な変位になります。

3つのラン(一連の解析)があります。

  • ラン1は従来の動的解析方法である「地盤全体」による解析(図2)
  • ラン2は多点入力の「節点加速度」による解析(図3)
  • ラン3は多点入力の「節点強制変位」による解析(図4)
積分時間間隔は計算時間を短縮するために0.01sとしています。

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■図2 ラン1の設定「地盤全体」
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■図3 ラン1の設定「節点加速度」(多点入力)
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■図4 ラン3の設定「節点強制変位」(多点入力)
 注意点1:多点入力とRayleigh減衰

多点入力のうち、時刻歴強制変位による方法と時刻歴加速度による方法では、結果は絶対変位で得られます。絶対変位とは、構造物の変位だけでなく地動自身の変位も含まれていることを意味します。

この場合、質量比例型の減衰マトリクスを動的解析に用いると地動変位による付加的な減衰作用が発生します。その結果、従来の相対変位の結果とは異なる結果が得られます。

したがって、質量比例型(α[K])と剛性比例型(β[K])の和とするRayleigh減衰を用いると、αがゼロでない場合は、「地盤全体」の結果(ここではラン1)と「節点加速度」(ここではラン2)の結果は一致しません。「節点強制変位」(ここではラン3)も同様です。

多点入力と従来の「地盤全体」の結果を同じにするためには、剛性比例型減衰を採用する必要があります。具体的には、Rayleigh減衰のαをゼロとし、βだけに有意な値を与えることや要素別剛性比例型減衰とします。

当サンプルデータでは、要素別剛性比例型減衰を設定しています。

 注意点2:多点入力の「節点強制変位」

多点入力を節点強制変位で与える場合の波形形状は、別途解析して得られた節点の時刻歴変位を与える必要があります。たとえば、地盤解析の結果で得られた節点の時刻歴結果を多点入力の強制変位として与えることが考えられます。

多点入力を節点強制変位で与える場合の波形形状は物理的にあり得る形であることが必要条件です。たとえば、他の解析結果から設定せず、テスト解析の意味でサインカーブ(y=sin(x))の強制変位波形を与えると、過大な応答加速度や過大な反力が得られることがあります。反力の結果も必要以上に振動している場合があります。これは、sin(x)を微分するとcos(x)なので、t=0で最高速度という状態になり、現実的な波形ではないことが原因です。当サンプルデータでは、ラン2の解析結果から得られる柱基部節点の時刻歴応答変位をラン3の節点強制変位として使用しています(図4)。

 注意点3:積分時間間隔

多点入力を節点強制変位で与える場合は、積分時間間隔を細かく設定する必要がよくあります。たとえば、「地盤全体」のときに積分時間間隔が0.01秒として解析した結果と同じ精度を得るには、積分時間間隔を0.001秒とします。場合によっては、0.0005秒や0.0001秒などのようにさらに細かく設定することも検討が必要です。

この理由は、変位分布に3次関数が仮定されているためです。3次関数では、時間の変化Δtに対して変位の変化量が大きいので、十分にΔtを小さくすることにより変位の変化量を抑える必要があります。

当サンプルデータのラン3では、M−φ要素の応答せん断力に解の振動がみられるため、積分時間間隔を0.001sとすることで、解の振動を抑えることができます。ただし、積分時間間隔だけを細かくするだけでは解決しません(後述)。

 節点の応答

■図5 柱天端節点の時刻歴応答グラフ

柱天端節点の時刻歴応答グラフを図5に示します。ラン1が相対変位、ラン2とラン3が絶対変位です。相対変位と絶対変位の違いがみられます。前述のとおり、絶対変位には地動の変位が含まれています。

 ばね要素の応答

ダミーのばね要素の時刻歴応答グラフを図6に示します。ラン1、ラン2、ラン3は全て相対変位の量となるので完全に一致します。ラン2とラン3は地動の変位が除去されて相対変位となり、ラン1と一致していることを意味しています。


■図6 ダミーのばね要素の時刻歴応答グラフ
 M−φ要素のせん断力

柱基部のM−φ要素の時刻歴せん断力応答グラフを図7に示します。ラン1(地盤全体)とラン2(節点加速度)は一致していますが、ラン3(節点強制変位)に解の振動がみられます。この理由は前述「注意点3」で述べたとおりです。

そこで、積分時間間隔を0.001sとすると図8に示すようにラン1、ラン2、ラン3が一致します。注意点は、ラン2の解析を0.001sとして行い、その結果をラン3に用いることです。つまり、別途採取した0.01sの結果を用いて積分時間間隔だけ細かく0.001sに指定しても良好な解が得られないということです。この方法では積分の精度を高めても入力波形の精度が悪いままとなるからです。


■図7 柱基部の時刻歴せん断力応答グラフ(Δt=0.01s)


■図8 柱基部の時刻歴せん断力応答グラフ(Δt=0.001s)


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