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シナリオ機能上級編
 

今回は、シナリオを作成するのに便利な機能の紹介と、それを応用した高度なシナリオ設定について紹介します。

 速度によるキャラクターモデル出現タイミングのずれの解消

車を運転していると路上に止まっているバスの死角から人が飛び出すという危険な状況が発生するという表現を行う場合を例にとります。例えば、自車が50km/hで走行する想定とし、飛び出し発生地点の40m手前に差し掛かったら人が出てくるという設定を行うとします(図1)。

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■図1 想定通りの動き

この場合、50km/hで走行した場合は想定通りのタイミングで人が出てきますが、30km/hや80km/hで走行してしまうと人の飛び出しが早すぎたり遅すぎたりします(図2,図3)。

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■図2 30km/hの場合
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■図3 80km/hの場合

これは、自車が人を出現させる地点を通過してから目の前に出てくる地点まで移動する時間が運転速度によって変化するためです。これでは運転する人によって危険な状況になる場合とならない場合があり、適切な設定とは言えません。この問題を解消する方法として、イベントの遷移条件に「到達時間」を使用する方法があります。この到達時間の設定は、対象物あるいは対象の車両が存在する位置に到達するまでの時間を自車の速度から割り出し、距離に関係なく適切なタイミングでイベントを発生させるものです。

例えば、人の飛び出し地点の真下にモデルを配置し、そのモデルまでの到達時間を3秒に設定した場合、30km/hで走行した場合は対象物の25m手前、80km/hで走行した場合は67m手前でイベントが発生することになり、速度に関わらず同じタイミングで人が飛び出してくることになります(図4)。これにより、速度によってタイミングがずれる問題を解消することができます。

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■図4 到達時間設定のイメージ
 同時並行で複数のシナリオを実行する

シナリオの遷移設定では別のシナリオを呼び出すことができ、呼び出されたシナリオは大元のシナリオと同時並行で進行していきます。また、車両を運転しているシナリオとは別のシナリオにおいても、自車(シミュレーション車両)の動きを遷移条件に設定したり制御したりすることが可能です。そのため、例えば画面にメッセージを表示させるためのシナリオ、車両を制御するためのシナリオ、というように内容ごとに分けておき、それぞれのシナリオをイベント遷移で呼び出す形にすることで、シナリオの遷移条件を簡略化することができます。

また、近いタイミングで複数のイベントを発生させることでイベントの遷移条件同士が影響して予想外の動作を発生させるという事態も防ぐことができます。

 非衝突状態の認識

ベントの遷移条件設定で、自車と別のモデル、あるいは別のモデル同士が衝突するという設定はよく使われますが、逆に衝突しないという条件を指定することも可能です。設定するには、遷移条件で「衝突」を選択し、衝突時Trueを非衝突時Trueに変更します(図5)。
この場合、指定のモデルと衝突していない場合にイベント遷移が発生することになります。

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■図5 非衝突時Trueの遷移設定
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■図6 衝突時Trueの場合の遷移タイミング
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■図7 非衝突時Trueの場合の遷移タイミング

この設定は、例えば何かの操作をした後に特定の地点に差し掛かったらイベントを派生させるという場合などに使用することができます。特定の地点にチェックポイントや衝突用のモデルを配置する方法もありますが、地点通過後に操作が行われた場合、それを判別するのは困難です。走行道路の下に判定用のモデルを配置しておき、非衝突の条件設定を行えば、操作が地点通過前かどうかを容易に判別することができ、それによってその後の動きを変化させることができます。

また、この応用として料金所のETC等のゲートの開閉を正確に表現することも可能となります。衝突・非衝突の判定の対象は自車だけでなく全ての交通流とすることもでき、ゲートの下に長さのあるモデルを埋めておくことで、モデルと2次元的に衝突している交通流が存在した場合はゲートを開ける、衝突する交通流が存在しなくなればゲートを閉じるという条件が設定できます(図8)。これにより、ゲートの開閉タイミングの調整や複数台の車が続けて進入した場合にゲートを開け続けるという動きが表現できるようになります。

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■図8 ETCゲートにおける遷移条件設定
 緊急車両の退避と追越し

狭い道で後方から緊急車両が来た場合に、脇に避けて道を譲るという表現を行う例を紹介します。片側1車線の道では交通流の車両が前にいる車両を追い越すことはできないので、通常は脇に避けても後続の車両は先に行ってくれません。そのため、道路断面の作り方を工夫する必要があります。後続の車両を先に行かせるには、車を路肩に寄せることで車線が空くような構造とします。

例えば図9のように、左の白線の部分を第1車線、通常の車線を第2車線、対向車線を路肩(車道設定における「端」)に設定した特殊な構造の片側2車線の道路とします。このような構造とすれば、第2車線を走る自車が道の左側に寄れば第1車線に車線変更したと認識され、第2車線を走る後続の緊急車両が自車を抜かしていく表現が可能となります。その際、シナリオ機能を使用すれば緊急車両が自車と接触しないように右へオフセットさせることも可能となります。

また、図9の水色で示されたような長いモデルを道路の下に配置し、このモデルと重なった瞬間が道を譲ったタイミングであると認識させ、後続車を加速させる等のイベントを発生させるという表現も考えられます。なお、このような表現を行う場合の車線構成(車線、ギャップ、端の幅)の適正値は道路全体の構造や車両の大きさによって異なります。どこまで寄せれば車線変更したと認識されるか確認しながら、自然な動きになるよう調整するのが良いでしょう。

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■図9 追越し表現が可能な道路構造の例


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(Up&Coming '16 春の号掲載)
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