船舶の排水量等計算に使われるMaxsurf Stabilityは、タンクや区画の定義を容易に行えるため、フローティングドックなどの詳細な沈降シミュレーションを行えます。
フローティングドックによりケーソンなどの設置を行う場合、注水の手順がクリティカルとなり、不安定な状態をできるだけ避け、安定した沈降を行わなければなりません。Maxsurf
Stabilityによるシミュレーションは、安全な注水手順を検証することを容易に行うのみならず、実際の沈降作業中にリアルタイムのオンボード解析が可能で、不測の事態が起きフローティングドックが不安定な状態となっても、即座に安定度対策を講じることができます。
多くのフローティングドックは平面から成り立っているため、MaxsurfModelerの出番はそれほど多くありません。アウトラン形状をMaxsurf
Modelerで決めてしまえば、タンク割りから安定度計算までの残りの作業はStabilityで行います。このアウトラインを決めるのも、フローティングドックの外側の枠を定義するためのサーフェイスを張るだけで、実際の区画やケーソン自体のモデリングも省略できます(ケーソンが単純な形状をしているとして)。Maxsurf
Stabilityには、タンクや区画の定義に加え、非浮力容積区画(浮力を持たない区画)やネガティブリンク区画(区画内に別の容積域が重なっているような場合の削除分)などの設定ができるため、フローティングドックにケーソンが搭載されているような場合に沈降が進むに従い、バラストタンクへの注水ならびに、ケーソン周りへ海水が浸入し、ケーソンが浮力を持つ様子をシミュレートすることができるのです。
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■図1 |
Maxsurf Modelerによるフローティングドックのモデリング。バラストタンクやケーソン自体のモデリングはほぼ省略し、Stabilityが持つ区画機能を使って複雑なタンクレイアウトや搭載物の定義を行う。
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■図2 バラストタンクの配置をMaxsurf Stabilityで行った状態。 |
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■図3 |
フローティングドックデッキ上にケーソンを搭載した場合の海水の浸入や浮力の有り無し箇所をStability上で定義した様子。絵は2基のケーソンがデッキに搭載されている状態で、空洞に見える部分がケーソン内部を表している。フローティングドックが沈降するに従い、デッキが水に浸かり、ケーソン周りも海水で満たされる様子をシミュレートできる。
バラストタンクに注水を行うと沈降が始まり、重量重心と浮力が釣り合った状態が求められる。そのときのGMの大きさにより安定性が評価され、GMの値が小さく不安定と判断されると、注水の手順を変えるなりの手段で改善が検討される。
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■図4 |
開発元:Bentley Systems(Formation Design SystemsはBentley Systemsに吸収合併)
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