はじめに
「建築基礎構造設計指針」が2001年改定版(第2版)より、実に18年ぶりの大幅な改定が行われ、2019年11月に発刊されました。序章に示される主な改定内容は、下記の通りです。
- 建物の重要度を考慮した基礎構造の性能グレードの設定
- 常時からレベル2荷重時に対する安全性や検証方法、検証に用いる荷重・耐力係数法の安全係数や限界値の明確化
- 直接基礎の鉛直支持力における地下階部分の排土荷重の考え方、荷重傾斜による支持力低減の考え方について、最近の知見の反映
- 章立ての再編と鋼管杭の変形性能に関する知見を付録に追加
「建築杭基礎の設計計算 Ver.6」では、現在サポートしている建築杭基礎の<支持力の検討>および<水平力の検討>機能に関して、新指針への対応を行います。以降に、対応内容の一部をご紹介いたします。
荷重のレベル
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性能グレード
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要求性能レベル
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常時荷重
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−
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使用限界状態
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レベル1荷重
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−
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損傷限界状態
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レベル2荷重
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S
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A
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終局限界状態
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地震時地盤変位を考慮した応力評価(応答変位法)への対応
新指針においては、地盤ばねを介して地盤変位を杭に作用させる手法(以後、応答変位法)を用いる事が原則とされています。※レベル1荷重に対して、影響が小さい場合には地盤変位を無視した検討を行う事も可能。
Ver.6では、応答変位法への対応を行います。
<解析モデル>
・群杭フレームモデル
・地盤の変位と上部構造の慣性力は同時載荷
・地盤、杭体の非線形(終局時のみ)を考慮
・建物の固有周期と地盤の固有周期比による低減を考慮
※ただし、固有周期は直接指定
極限先端支持力度qpおよび極限周面抵抗力度の算定方法の変更
極限先端支持力度および極限周面抵抗力度(旧指針:周面摩擦力度)算定における係数および上限値等が変更になりました。また、施工方法として「回転貫入杭」が追加となり、新たに算定方法が定義されています。
杭種(施工方法)
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極限先端支持力度qp
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極限周面抵抗力度
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場所打ち
コンクリート杭
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[砂質土] qp=120N(≦7500)
[粘性土] qp=6cu(≦7500)
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[砂質土] τs=3.3Ns(≦165)
[粘性土] τc=cu(≦100)
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埋込み杭
(プレボーリング)
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[砂質土] qp=150N(≦9000)
[粘性土] qp=150N(≦9000)
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[砂質土] τs=2.5Ns(≦125)
[粘性土] τc=cu(≦125)
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埋込み杭
(中掘り)
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[砂質土] qp=150N(≦9000)
[粘性土] qp=6cu(≦9000)
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[砂質土] τs=1.5Ns(≦75)
[粘性土] τc=0.4cu(≦50)
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回転貫入杭
(追加)
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[砂質土] qp=150ηN(≦9000η)
[粘性土] qp=150ηN(≦9000η)
先端径dは羽径
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[砂質土] τs=2.0Ns(≦100)
[粘性土] τc=0.5cu(≦62.5)
杭先端から1d間を除く
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打込み杭
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[砂質土] qp=300ηN または qp=0.7qc(≦18000)
[粘性土] qp=6cu または qp=0.7qc(≦18000)
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[砂質土] τs=2.0Ns(≦100)
[粘性土] τc=0.8・cu(≦100)
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「鉄筋コンクリート基礎構造部材の耐震設計指針(案)・同解説」への対応
新指針では、コンクリート系杭(場所打ちコンクリート杭、場所打ち鋼管コンクリート杭、PHC杭、PRC杭)においては、損傷限界状態および終局限界状態の限界値の算定式および低減係数は、「鉄筋コンクリート基礎構造部材の耐震設計指針(案)・同解説(以下、RC基礎部材指針)」(日本建築学会2017年3月)によるものとしています。Ver.6では、この記述に従い、記載されている杭については、RC基礎部材指針に基づいて、照査を行います。記載のないSC杭、RC杭については、従来方法のままとします。
その他の対応項目
その他の対応項目として、評定法定数αの設定の変更やPS検層から求めた地盤の変形係数EPSからの地盤変形係数E0の算定の対応を行います。また、雪荷重の設定追加などの拡張も予定しております。