等流・不等流の計算 Ver.2、および等流の計算 Ver.2の新機能について紹介します。Ver.2では『土地改良事業計画設計基準「水路工」基準書 平成13年2月』への対応を主な内容としており、損失水頭の計算、余裕高の計算、および各種の照査機能を追加しました。これ以外に、操作性を向上させるために、等流断面の一括入力機能、不等流流路の自動作成機能も追加しています。さらに、土砂混入率を考慮した等流計算機能も追加しました。ここではこれらの機能についてご紹介します。
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不等流で計算可能な損失水頭の計算式として、水路工基準書の「6.5 損失水頭及び水位の変化量」で挙げられている損失水頭のうち、開水路の漸縮・漸拡、急縮、段上げ、急拡、管水路の漸縮・漸拡、およびスクリーン、湾曲、屈折の式に対応しました(表1)。
損失水頭の種類 |
損失水頭の算出方法 |
開断面 |
漸縮 |
トランジションの長さ、損失係数を入力値として算出します。 |
漸拡 |
急縮 |
水路工基準書の表から損失係数を自動計算して算出します。 |
段上げ |
急拡 |
損失係数を自動計算して算出します。 |
管断面 |
漸縮 |
損失係数を入力値として算出します。 |
漸拡 |
損失係数を入力値として、またはfge=0.011 θ 1.22 式により漸拡角θを入力値として算出します。 |
スクリーン |
格子の形状情報を入力値として計算します。ごみの流入を考慮した式にも対応しています。 |
湾曲 |
損失係数を入力するか、簡易式により計算するかを選択することが可能です。
簡易式により計算する場合は、計算に必要な各パラメータを入力します。 |
屈折 |
損失係数を入力値として算出します。 |
▲表1
これらの損失水頭の入力は、上流側断面、下流側断面、損失水頭の3つの要素を1つの入力画面で定義します。その後の削除、移動、修正などの編集時に、この3要素は一体として扱われます。これにより、たとえば損失水頭の流路における縦断距離を変更した場合でも、上流側断面と下流側断面間の距離は一定に保たれます。損失水頭の断面には、内挿断面を定義することも可能です。
結果画面および計算書では、計算に関する詳細な内容を出力することが可能です。詳細出力では、各損失水頭の計算式を含めた水位の計算式と、収束時の各計算パラメータの値を明記します。これにより、計算式の確認、および収束が成立していることの確認を容易に行うことができます。また、結果画面では収束曲線の表示を行うことができます。収束曲線は、不等流計算の各断面間の計算について、終端側の水位の変化に対する水頭の差の変化の様子をグラフ形式で表したもので、水頭差が0m
となる水位が収束時となります。収束曲線グラフにより、収束へ至るまでの過程や、収束しなかった場合の状況を確認できます。
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▲図1 損失水頭入力画面 |
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▲図2 損失水頭の結果詳細 |
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▲図3 収束曲線画面 |
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水路工基準書の「6.6.3 水路余裕高の算定方法」を参考として、余裕高の計算を行う機能を追加しました。算定方法として、下記の3つを用意しています。
- 余裕高を直接指定する。
- 計算式Fb = α・d + β・hv + hw により計算する。
ここに、
Fb:余裕高(m)
α:粗度係数の変動を考慮した余裕高算出係数
β:速度水頭による水面上昇を考慮した余裕高算出係数
d:水深(m)、hv:速度水頭(m)
hw:水面動揺に対する余裕(m)
- トンネル並びに暗渠としての計算式(d1/D1を指定)
ここに、
d1:水深(m)
D1:断面高さ(m)
3、の式を選択した場合は、以下のオプションを指定することができます。
・(D1- d1)< 0. 3m のとき、余裕高は0. 3m とする。
・D1≦ 0.6m のとき、余裕高はD1/2 とする。
余裕高の計算結果は、表形式、または計算式を含めた詳細形式で、結果画面および計算書に出力されます。
▲図4 余裕高、照査の設定画面
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水路工基準書で挙げられている流れの検討内容について、「OK」または「NG」で判定する照査機能を追加しました。照査の設定は、「照査する」、「照査しない」の選択、および照査にあたっての許容値の指定を、断面ごとに行います。「照査する」とした場合は、その断面の等流計算結果、または不等流計算結果を照査し、結果画面・計算書でOK、NG
の判定が出力されます。
オプションの設定により、NG の判定を警告として表示できます。警告は結果画面の下側に表示されます。この項目をダブルクリックすることで、その詳細内容を画面に表示することが可能です。
照査結果は、表形式および詳細形式で結果画面・計算書に出力されます。詳細出力では、照査式と照査に使った各パラメータの値が明記されます。照査可能な項目は、下記の4つです。
■流速の照査
水路工基準書の「6.1 許容流速」を参考として追加した機能です。
等流計算または不等流計算により算出された流速が、指定した最小許容流速以上かつ最大許容流速以下であることを照査します。最小許容流速のみ、または最大許容流速のみ照査することも可能です。
■流れの安定性の照査
水路工基準書の「6.1.3 流速決定にあたっての留意事項−(1)用水路−3」を参考として追加した機能です。フルード数による照査、または限界流速比による照査のいずれかを選択できます。
フルード数で照査する場合は、計算結果のフルード数が、指定した最大許容フルード数以下であることを照査します。
限界流速比で照査する場合は、「計算結果の流速÷同流量における限界流速」の値が指定した限界流速比以下であることを照査します。限界流速は、計算結果(または入力値)の流量を使って内部計算されます。照査の詳細出力では、内部計算された限界流速の算出過程も出力されます。
■余裕高の照査
等流計算または不等流計算により算出された水位が、余裕高を確保しているかを照査します。
■通水可能量と設計流量の比
この照査は等流計算のみ可能です。水路工基準書の「6.6.1 水路余裕高決定のための要因−(4)流量比率による余裕高」を参考として追加した機能です。「満流水位の流量(余裕高を含んだ断面での通水可能量)÷計算結果の流量」が指定した最小許容流量比以上であることを照査します。満流水位の流量は内部で自動計算され、照査の詳細出力では、内部計算された満流水位の流量の算出過程も出力されます。
▲図5 照査結果画面(表形式) |
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▲図6 照査結果画面(詳細) |
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Ver.1 では、断面の基本条件を、それぞれの断面の入力画面で定義していました。Ver.2
ではすべての断面を表形式により一括して入力できる機能を追加しました。これにより煩雑になりがちな断面定義を一括して定義でき、入力値を一覧形式で確認することも可能となりました。
この機能は、エネルギー補正係数、重力加速度など、全断面で共通している可能性が高い項目に対しては全断面共通値として設定できるようにしています。名称や平均流速公式など、各断面で異なる値となる項目については1断面1行の表形式として、各断面ごとの値を設定するようにしています。
▲図7 等流断面一括入力画面
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最初に不等流流路を作成する場合、その作業を補助するツールとして追加しました。不等流流路の測点断面が、下記のいずれかの方法で定義できる場合、この自動配置機能を利用することができます。
- 測点断面を、断面の定義順に配置する。
- 測点断面を、断面名の順(降順または昇順)に配置する。
- 1つの断面を複数個配置する。
また、自動配置後は通常の編集操作を行うことが可能なので、測点断面の縦断位置の変更や、測点断面の追加、削除などの調整を行うことができます。
▲図8 不等流測点断面自動配置画面
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本機能は等流計算のみ有効となります。土砂混入率を考慮した流速、流量を、下記のワングの式を使って計算します。
Q = A・U'
ここに、
U':土砂混入率を考慮した流速(m/s)
U:平均流速公式による流速(m/s)
γw:水の単位体積重量(kN/m3)
d:砂石の単位体積重量(kN/m3)
α:土砂混入率
土砂混入率αは計算ケースごとに指定するため、同一断面で異なる土砂混入率の計算が可能です。 |
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