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北陸ユーザー特集 1
Users Report ユーザ紹介/第101回

金沢大学
理工研究域 環境デザイン学系 構造研究室/都市計画研究室


計算科学重視の伝統、多様な分野の解析にも力
橋梁構造の問題や都市計画支援に先進の解析・VR技術活用

 User Information
金沢大学 理工研究域 環境デザイン学系 構造研究室/都市計画研究室
URL● http://www.ce.t.kanazawa-u.ac.jp/env_home/
所在地● 石川県金沢市
研究内容● 橋梁構造における動的作用、構造部材の動的挙動・破壊挙動/地域・都市計画支援システム


フォーラムエイトは7月1日、金沢事務所を開設いたします。同事務所は、富山・石川・福井の北陸3県をカバー。当該地域のユーザーの皆様に対する営業および技術サポートの拠点としてはもちろん、各種セミナーの開催などを通じ地域に密着した幅広いサービスを展開してまいります。
そこで今回の本コーナー(「ユーザー紹介」)は「北陸ユーザー特集」と題し、3県にまたがる4ユーザーを取材。地域の特性も反映し、それぞれユニークな事業や研究活動を進める各ユーザーによる最新の取り組みについてご紹介します。
フォーラムエイト 金沢事務所(リファーレ) 金沢駅徒歩3 分


 昨年「創基150年」を迎えた(国立大学では3番目に当たる)歴史を誇る金沢大学。その、角間および宝町・鶴間を合わせ約267万平方メートルに及ぶキャンパスも国内大学屈指の広さとされます。

 今回訪れた角間キャンパスは、金沢市南東部の自然豊かな丘陵地に、先進の複数教育施設を大胆にレイアウト。その多分野にわたる高度な研究機能の集積が、「地域と世界に開かれた教育重視の研究大学」(金沢大学憲章)を標榜する同校に、地域産業社会との連携を可能にさせ、国内外から数多くの研究者や学生をひき付けている実情が窺われました。

▲金沢市南東部の自然豊かな丘陵地に立地する、金沢大学 角間キャンパス  ▲自然科学本館

 今回の北陸特集で最初にご紹介するユーザーは、金沢大学理工研究域環境デザイン学系。その中で、構造研究室の深田宰司准教授と都市計画研究室の沈振江教授を中心とする取り組みに焦点を当てます。

 深田宰司准教授は車両走行時の橋梁構造への動的作用やその影響などの研究を進める中で、フォーラムエイトの動的非線形解析ソフトを早くから導入。その一方で、朝日エンヂニヤリング株式会社(金沢市)とともにイージースラブ橋およびイージーラーメン橋の施工法について研究開発。その成果は、フォーラムエイトとの共同開発により「イージースラブ・ラーメン橋の設計」プログラムとして製品化されています。

 また沈振江教授はもともと、地域・都市計画プロセスへの住民参加を支援するシステムの開発や適用について研究。その新たなアプローチとして、フォーラムエイトの3次元リアルタイムVRソフト「UC-win/Road」やクラウドサーバ上で3D・VRを利用する「VR-Cloud®」の可能性に着目し、導入されています。

▲金沢大学 理工研究域
環境デザイン学専攻
都市計画研究室 沈 振江 教授
▲金沢大学 理工研究域
環境デザイン学専攻
構造研究室 深田 宰司 准教授

 戦略的研究を促す体制への進化

 「実は、日本で最初に計算科学科(現・理工学域数物科学類計算科学コース)を設置したのが、金沢大学なのです」

 「強いところをさらに強く」との方針の下、金沢大学では重点的かつ戦略的に研究を推進する体制が取られてきました。そうした学際的で産学官が連携して取り組む研究を、学内研究の活性化と社会貢献に繋げることを目的に「先端科学・イノベーション推進機構」は組織されています。その機構長を務める山崎光悦・理事(研究・国際担当)は同校の強みの一端として、計算科学分野への早くからの取り組みと、それをベースとするシミュレーション、構造物から生命科学まで広範にわたる解析など多様な応用展開を挙げます。

 また、国際交流に力を入れているのも同校の特徴の一つ。バンドン工科大学(インドネシア)などと二重学位プログラムを実施しているのをはじめ、大学間・部局間で総計(34ヵ国1地域)156機関と交流協定を締結。各種交流事業にも積極的に参加しています。

 金沢大学はその起源を、加賀藩種痘所が創設された1862年に遡ることが出来ます。その後、それぞれ異なる系譜を辿りつつ発展した旧制諸学校を母体とし、学制改革を受けて1949年、法文学、教育学、理学、医学、薬学、工学の6学部を擁する金沢大学としてスタートしました。

 以来、学内組織の改組・拡充を重ねる中で、2008年にそれまでの8学部(文学、法学、経済学、教育学、理学、工学、医学、薬学)から現在の3学域(人間社会、理工、医薬保健)へと再編。そのうち理工学域は、数物科学、物質化学、機械工学、電子情報学、環境デザイン学、自然システム学の6学類により構成。また大学院には現在、教育学、人間社会環境、自然科学、医薬保健学総合、法務の6研究科が設置されています。

 さらに戦後、金沢城址の旧丸の内キャンパスを中心としてきたキャンパス構成も改め、1989年に角間キャンパスをオープン。各旧キャンパスからの移転が段階的に進み、大学本部を含め、ほとんどの学域・研究科(医薬保健学関連は一部)が同キャンパスに集まる形になっています。

▲金沢大学
先端科学・イノベーション推進機構
機構長を務める山崎光悦理事
(研究・国際担当)
▲金沢大学
理工研究域 機械工学系
坂本 二郎 教授

 環境デザイン学系の位置づけ
 構造研究室と都市計画研究室の取り組み

 理工研究域が対象とするのは、「自然界の挙動を探求するサイエンスと、その原理・法則を利用して人間社会に役立つ技術や製品を開発するテクノロジーとを融合した」分野。その中で環境デザイン学系は、地球環境から生活環境まで幅広くカバー。自然と調和し、持続的発展が可能な国土創造、社会基盤整備、まちづくりなどのデザインをターゲットとしています。

 同学系において構造研究室では、車両の走行荷重や人の歩行荷重、風荷重、地震荷重、雪荷重などさまざまな動的外力を受けた際の橋梁構造の挙動や周辺環境への影響にフォーカス。それらを載荷実験や振動実験により把握し、そうした影響の軽減策を解析的手法により研究しています。また、落石防護工などの構造物が衝撃を受けた際の破壊挙動やエネルギー吸収性能、衝撃現象の危険度評価法や設計法などの研究も行っています。

 一方、都市計画研究室では、生活環境について都市や地域、あるいは建築空間などさまざまなレベルで捉え、それらの計画やアーキテクチャ(構成)、デザインに関する研究を行っています。具体的には、地域や都市の計画支援システムの開発とその適用性を探る研究、地域や都市の歴史的・文化的コンテクスト(背景)を考慮した生活空間の計画、デザイン、マネジメントに関する研究などが含まれます。

▲論文:「求められる住民参加支援システム」
(資料提供:沈 振江 教授)
▲論文:「高架橋周辺の環境振動問題に対する
桁端ダンパーの適用」
(資料提供:深田 宰司 准教授)

 構造研では動的非線形解析を長く利用、新たな活用展開も
 ESB/ERB開発に加え、独自プログラムで当社との連携期待

 深田宰司准教授が構造研究室で主に取り組む研究の一つは、車両走行時における橋梁の振動や周辺環境への影響、それらの対策。もう一つが、橋梁を中心とした動的解析です。

 自身がまだ助手を務めていた10年ほど前、限られた予算の中で「梁要素で非線形解析でき、プレポストがしっかりしているソフトウェアはないか」と、いろいろ調べるうちに出会ったのが、フォーラムエイトの動的非線形解析ソフトだったと言います。以来、能登半島地震(2007年)時の橋梁の地震応答解析をはじめ、さまざまな研究に同ソフトが利用されてきました。

 数年前からは冒頭で触れたように、朝日エンヂニヤリング株式会社と共同研究。同社が設計したイージースラブ橋やイージーラーメン橋に対し、同氏らがその安全性について検証実験を行っています。その成果を基に、フォーラムエイトと共同開発する形で概略設計プログラム「イージースラブ・ラーメン橋の設計(ESB/ERB)」が製品化。同ソフトを用いた橋梁構造や施工法に関連する取り組みに対し、朝日エンヂニヤリング株式会社は「特許庁長官表彰(平成25年度 産業財産権制度活用優良企業等表彰)」を受賞されています。

 また、近年は従来製品に加え、学生向け3次元プレート動的非線形解析「Engineer’s Studio® for Students」を導入。それについては極めて低価格な上に、プレポスト処理などの機能面を高く評価。その発展的な活用を進めていきたいとしています。

 さらに同氏は、車両走行時における橋梁の振動に関連して独自にプログラムを作成。それをUC-win/Roadと連携できないかというのがかねてから懸案になっていることもあり、今後の具体化に期待を述べます。

▲左:「Seismic Response Analysis and Damage Verifi cation of Notojima Bridge during Noto Peninsula Earthquake」
  右:「Structural Behavior of Reinforced Concrete Slab Rigid Frame Bridge with H-Shaped Steels」
  (資料提供:深田 宰司 准教授)

 都市計画研では住民参加支援システムの開発・適用に焦点
 VR-Cloud®をベースに新システムの構築目指す

 これに対し沈振江教授は、都市計画研究室において、主に地域や都市の計画プロセスに住民が参加できるよう支援するシステムの開発を進めるとともに、その適用性について検討しています。

 そうした取り組みの中で、例えば、建築規制など専門的で一般住民には分かりにくいような問題がある場合、同氏らは以前からゲームエンジンなどを使い3次元CGにより建物形状や景観を可視化。それらの成果は実際に、住民参加によるまちづくりに向けたワークショップで視覚的資料などとして提供されてきました。

 その後、住民がそれぞれ自宅に居ながらにして必要な資料にアクセスできるようにしたいとの観点から、マルチユーザー環境で使えるシステム化を模索。ちょうどその頃、フォーラムエイトが主催する「第1回 学生BIM&VRデザインコンテスト オン クラウド」(2011年)への参加募集を知り、当時の学生に紹介。それを受けてコンテストに参加した学生が定められた期間、無償貸与されるフォーラムエイトの各種BIM/VR製品を駆使して制作した作品は見事、その年のグランプリを受賞するに至っています。

 これを契機にその多彩な機能と可能性に着目した研究室では、UC-win/RoadとVR-Cloud®を導入。沈振江教授は次なるステップとして、これらをベースに自治体の住民参加による計画プロセスで関係者がそれぞれのパソコンからインターネットを介してサーバにアクセスし、可視化したデータで確認しつつ学習できるシステムの開発を描きます。

▲システム都市計画研究室 沈研究室では、UC-win/Road、VR-Cloud®を用いた
住民参加型の地域・都市計画支援システムの開発を行なっている

PDF  ポスター(A1)
 VR-Cloud®
▲第1回 学生BIM & VR デザインコンテスト オン クラウド
グランプリ ワールドカップ賞「The Oasis」 (金沢大学 金大都市研チーム)

VR-Cloud®の閲覧には、クライアントのインストールが必要になります。
VR-Cloud® クライアントページより、インストールをお願いします。

 日本機械学会 2012年度年次大会、金沢大で成功裏に開催

 一般社団法人 日本機械学会は2012年9月9日〜12日、金沢大学角間キャンパスを主会場に「2012年度年次大会」を開催しました。「日本再生に向け新たな未来を切り拓く機械工学」をテーマに掲げた大会は、約1,500件の学術講演のほか、東日本大震災特別企画をはじめ、一般の人々や小中高生を対象とした企画などさまざまなプログラムを展開。機械工学の研究者や技術者、学生ら約2,800名が参加しました。

 今回年次大会の運営を中心になって支えたのが、金沢大学理工研究域機械工学系の皆さん。大会委員長を務めた山崎光悦理事は、講演発表数は歴代最多に迫るほどで、成功裏に実施することが出来たと振り返ります。

 また、同年次大会に併設する形で、「KSME-JSME Joint Symposium on CM & CAE 2012」も開催されています。これは日本と韓国の機械学会が計算力学(CM)およびCAEに関するシンポジウムを共同で行っているもので、今回は理工研究域機械工学系の坂本二郎教授らを中心に運営。国内はもとよりアジア各国からの参加者が、バイオメカニクスをはじめ当該分野で注目される最新の話題について熱い議論を交わしました。

 なお、シミュレーション・システムに関するワークショップでは、フォーラムエイトも企画およびセッションに参加。3次元VR技術の最新の活用事例が複数紹介されました。


(執筆/取材:池野 隆)


     
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