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Users Report ユーザ紹介/第101回
株式会社 国土開発センター
BCPにウェート、先進のICTを効果的に活用
平成8年道示改訂以降増すFORUM8製品へのシフト
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フォーラムエイトは7月1日、金沢事務所を開設いたします。同事務所は、富山・石川・福井の北陸3県をカバー。当該地域のユーザーの皆様に対する営業および技術サポートの拠点としてはもちろん、各種セミナーの開催などを通じ地域に密着した幅広いサービスを展開してまいります。
そこで今回の本コーナー(「ユーザー紹介」)は「北陸ユーザー特集」と題し、3県にまたがる4ユーザーを取材。地域の特性も反映し、それぞれユニークな事業や研究活動を進める各ユーザーによる最新の取り組みについてご紹介します。 |
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フォーラムエイト 金沢事務所(リファーレ) 金沢駅徒歩3 分 |
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金沢市と小松市のほぼ中間に位置する「石川ソフトリサーチパーク」。のどかな田園地帯に囲まれた一角に、その、研究・開発を行う企業や大学、あるいはそうした業務を担う部門が集まるエリアはありました。
これは、頭脳立地法(1988年施行)に基づき、1991年から旧地域振興整備公団と旧松任市(現白山市)により中核的業務用地として整備されてきたもの。地域産業の発展と高度情報化に資する、自然科学研究やソフトウェア、機械設計、デザインなど企業の頭脳機能を集積させ、「頭脳立県石川」を確立することが意図されました。約23ヘクタールの敷地には、これまでに12の企業・大学の施設が立地しています。
今回2番目にご紹介するユーザーは、同リサーチパーク内に技術開発研究所を構える株式会社国土開発センター(本社:金沢市寺町)です。石川県を代表する総合建設コンサルタント企業である同社は、広範な分野を対象とした建設コンサルタント業務、測量業務、補償コンサルタント業務を大きな柱に活動。県内はもとより北陸地域を中心とする全国各地に拠点を展開しています。
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▲「石川ソフトリサーチパーク」内に位置する株式会社国土開発センター
技術開発研究所 社屋外観 |
そのような同社の現在志向する一つが、BCP(事業継続計画)へのアプローチ、そしてそれを具体化する情報通信技術(ICT)の効果的活用です。同社常務取締役の金子慶一氏はそこに通底する、業界を取り巻く環境の変化に対応しつつ、さまざまな新しい技術を採り入れるのに前向きなスタンスに触れます。
同社は、四半世紀にわたり多様な当社製品を利用されています。その間、とくに道路橋示方書の平成8年(1996年)改訂を機に、橋梁関連の複数ソフトウェアを連動させて使うことが求められた際、各社製品の比較検討を経て当社製品を選定。以降、利用するソフトウェアに占めるフォーラムエイト製のウェートが増してくる中で、近年の動的非線形解析ソフトや3次元リアルタイムVRソフト「UC-win/Road」などの導入に繋がっています。
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▲株式会社国土開発センター 設計事業部の皆さん |
▲株式会社国土開発センター
技術開発研究所
常務取締役 金子 慶一 氏 |
株式会社国土開発センターが設立されたのは、1964年。来年で創業50年目を迎えます。
同社は多様な社会基盤の設計をはじめ、調査・計画、測量・計測、用地補償に至るまで幅広い業務をカバー。それに対し、設計事業部、環境事業部、計測事業部、用地補償事業部および業務推進事業部の5事業部に加え、東日本復興対策室、総務本部および営業本部を設置。併せて、富山支店(東部・西部・高岡・射水・長野の5営業所を管轄)、新潟支店(上越・長岡の2営業所を管轄)、福井支店(嶺南営業所を管轄)、大阪支店(京都・京滋・姫路・和歌山の4営業所を管轄)、および営業本部が管轄する能登・輪島・東京・名古屋・東北の5営業所を拠点に活動を展開。それらに約220名の従業員が配置されています。
「技術開発研究所という名称になっていますが、(実質的には一般的な意味での)本社(の機能を成しているところ)というように思っていただければと思います」
白山のふもと、広大な田園地帯が続く中に整備されている「石川ソフトリサーチパーク」は、空路・鉄路・道路からのアクセスにめぐまれた立地条件にあります。加えて、企業や大学など地域の頭脳機能を集積するという同リサーチパークのコンセプトを体現。その域内では、それぞれ参加企業・大学の核となる個性的かつ近代的なビルが、緑地を配したゆとりある空間にレイアウトされています。
同社の誇る「専門技術者集団」はもともと、本社社屋にすべて収容する体制が取られていました。それが、ICT化対応へのニーズの高まりとともに、本社ビル自体の老朽化の問題が顕在化。インテリジェントビルへの建て替えが検討されていたちょうどその頃、同リサーチパークの構想が浮上したことから、そこへの参画を決定。今回訪れた技術開発研究所の設置に至っています。そして、実質的にこの施設が現在は同社にとって企業活動の基盤になっている、と金子慶一氏は位置づけを述べます。
前述のように、とくにICTに関して良いものを積極的に採り入れていこうという考え方は、同社の近年の取り組みにも色濃く反映されています。
例えば、「お客様のデータが財産」との観点から、同社ではBCP対策の一環として、データのバックアップ体制を重視。二重三重のバックアップに努める中、各支店が保有するサーバで相互にデータをレプリケーションし、各支店間で持ち合う仕組みを4年ほど前から構築しています。
それと並行して同社が積極的に進めてきたのは、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の認証取得です。これは、顧客の情報資産を安全に取り扱っていることを自社の売りにしたい(金子慶一氏)との狙いによるもので、他社に先駆けて対応。2009年に初めて取得した後、昨年は再認証を取得しています。
今年になってからは、万一の事態にもデータを迅速に復旧できるよう、サーバの高速化などネットワーク強化に注力。併せて、技術開発研究所の建物内をすべて無線LAN化。そこでは、将来的なタブレット端末やスマートフォンの活用機会増大も視野に入れています。
それとは別に、同社では現在、特定の役職者が出張先からでもモバイル機器を通じてリアルタイムに電子決済できるようシステム化しています。今後はその対象を広げていく考えで、その面からもタブレット端末もしくはスマートフォンの利用ニーズが増してくるものと想定されます。
また、自社で保有するメールサーバを活用。ISMSに基づくセキュリティ強化を目的に、メールに添付されるファイルを自動的に暗号化するシステムも新たに導入しています。
株式会社国土開発センターにおいて当社製品を主に使用されているのが、橋梁など道路関連を中心とした設計事業部です。
同事業部は昨年まで、分野別に独立した部門構成でした。ただ、近年は道路や橋梁などを新規に建設する事業が減少する一方で、既設の多様な構造物や施設の維持管理あるいは長寿命化、耐震補強といった業務に関わるウェートが増大。そのような中、従来型のカテゴリで必ずしも分けられず、複数の部が連携して対応するケースが多くなってきたことから、組織を再編。分野名を冠した部門名を改め、設計1部が道路や橋梁などを、設計2部が河川や砂防、港湾などを、設計3部が農業土木を、設計4部が上下水道を、それぞれ基本的に担当しつつ、状況に応じて柔軟に対処できる新たな体制としました。
そうした環境の変化を受け、先進技術を採り入れた独自技術の開発も推進。例えば、アルカリ骨材反応(ASR)により劣化したRC橋脚の補強に関連し、金沢大学とさまざまなテーマを設けて共同研究。また、構造物のひび割れを3次元で計測し、それを基に定量的な評価を行う手法については、石川県や金沢大学などと共同研究を行っています。
そのほか、赤外線を使い建築物の表面の劣化を調査する手法を実用化。さらに、同社が石川県や金沢大学、地元の建設会社や地質調査会社、繊維会社などと共同開発したバサルトネット(玄武岩繊維製のネット)を用いたコンクリートの剥落防止工法「バサルトネット工法」は今年3月、NETIS(新技術情報提供システム)に登録されています。
加えて、能登半島地震(2007年)後は、地元の建設コンサルタントとして復旧事業に注力。その傍ら、同社が設計した大乗寺丘陵公園での継続的なボランティア活動に対して今年、「金沢都市美文化賞」が贈られています。
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▲「金沢都市美文化賞」が贈られた寺丘陵公園でのボランティア活動風景 |
同社がフォーラムエイト製品を利用され始めて、20年以上を経過。それ以前も含め、同社ではさまざまな会社が提供するソフトウェアを使用しています。
そうした中で、とくに橋梁に関して、一つの転機になったのが道路橋示方書の平成8年(1996年)改訂でした。それを契機に、橋梁関連の複数ソフトウェアを連動させて使う必要性を生じ、ソフト会社を統一する方が使いやすいとの観点から、同改訂を反映してリリースされた複数社の製品を比較検討。当社製品の使いやすさを実感したのに加え、地域の同業他社との情報交換を通じてそのメリットを確信。当社製品が選ばれた、と設計事業部部門長の笹谷輝彦氏は経緯を振り返ります。
次いで、動的非線形解析ソフトの利用が求められた際、当該ソフト自体の機能や使いやすさとともに、一連の橋梁関係のソフトとの連携も考慮してUC-win/FRAME(3D)を導入。その後、ソフトの使いやすさがさらに向上してきた中で、設計ミスを防ぐ意味からもその中身を正しく理解することがいっそう重要になっていると言います。
これと関連し、実際に当社ソフトを使用してきている同事業部設計1部グループリーダーの亀田浩昭氏はその使いやすさを認めつつも、アウトプットのあり方やその煩雑さに関する課題に言及。同事業部設計3部主席技師の土谷功氏は、入力条件と結果のアウトプットの改善によるミス防止の可能性を説きます。
また、同事業部設計1部リーダーの濱田康行氏は当社製品のヘルプ機能に注目。道路橋示方書の改訂内容などは同機能を使って調べるのが最も効率的と語ります。
UC-win/Roadの導入は当社のデモを目にし、説明ツールとしての可能性を認識したのがきっかけでした。ただ、設計が主体でVR作成に専属の担当者を置けない制約から、見栄えに十分な手間をかけられないのが現状、と同事業部の転正智明氏は述懐。それでも、着実に熟度を上げながら、マイクロシミュレーションと連携した交差点解析を可視化し説明する資料向けなどに活用。今後は設計成果を基に完成後の姿を高精度に表現していきたい考えを述べます。
CIM(Construction Information Modeling)の導入に向けた検討が進む中、3次元データ化への対応が今後益々求められる流れにあります。笹谷輝彦氏はその前段としてクリアすべきさまざまな課題にも触れつつ、先進の各種3次元ソフトの開発動向に注視していく考えを示します。
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▲UC-win/FRAME(3D)を用いた
橋梁の耐震補強設計 |
▲UC-win/Road を用いた、交差点形状の変化によるミクロシミュレーション |
(執筆/取材:池野 隆) |
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