Users Report ユーザ紹介/第103回
株式会社フローベル
応用システム開発グループ
映像や画像に関わる先進技術を駆使、多様な応用開発で実績
バーチャルサイクリングシステムの機能強化にUC-win/Road 導入
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User Information
株式会社フローベル
URL ● http://www.flovel.co.jp/
所在地●東京都立川市
事業内容●高画素、超高感度、放射線可視化など各種カメラ/放送、バイオ、医療、スポーツ、エンターテインメント向け各種応用システム
「大手のメーカーさんなどから(試行錯誤の末に)何とか出来ないか、といった案件が最終的に回ってくることがよくあります。それらに対して、カメラ(をはじめ映像や画像に関わる各種ハードウェアやソフトウェア)などをいろいろ組み合わせ、何かを生み出していくことが(自社の)得意とするところであり、強みだと思います」
今回ご紹介するユーザーは、業務用特殊デジタルカメラやその応用システムなど高度に専門的で多様な製品を開発・提供している株式会社フローベルです。そのうち、同社で扱うさまざまな製品向けソフトウェアやそれらの技術を応用したシステムの開発を担う、「応用システム開発グループ」に焦点を当てます。
工場の生産ラインに組み込まれる計測用カメラなどの開発・製造からスタートした同社は、以来、「見る」という機能を敷衍し、科学や産業をはじめスポーツ、エンターテインメントに至るさまざまな分野向けにユニークな各種製品を具体化してきています。とくに、OEM(相手先ブランドによる生産)やODM(相手先ブランドによる設計製造)のような業務では豊富な実績を誇るとともに、その蓄積したノウハウや技術に基づく独自製品の開発にも力を入れている、と株式会社フローベル応用システム開発グループのエンジニア、具志大輔氏は述べます。
そのような自社製品として応用システム開発グループが開発してきた一つに、バーチャルサイクリングシステム「cycleStreetシリーズ」があります。
▲UC-win/Road を導入したcycleStreet シリーズ「City Edition」
同シリーズ向け新製品の開発に当たり、同グループでは今年、当社の3次元リアルタイムVR「UC-win/Road」を導入。同社がこれまで構築してきた同シリーズ関連技術やUC-win/Roadを融合して開発した成果は、「第21回
3D & バーチャルリアリティ展(IVR)」(2013年6月19日〜21日、東京ビッグサイト)に出展されています。
株式会社フローベルは1975年、計測用ビデオ機器の開発・製造・販売を行うフローベルエンジニアリング株式会社(東京都杉並区)として創立。その後、移転(同中野区)および増資を経て、1985年に現在の社名に改称。また、1994年に現在のオフィス(同立川市)に拠点を移設。本社には、営業所と研究所が併設されています。
創業当初、超小型シリコンビジコンカメラ(1975年)を皮切りに、画像処理による寸法測定器(1977年)、顕微鏡用カラービデオカメラ(1980年)など、計測用を中心とした各種映像および画像関連機器を開発。その後、徐々に対象分野を広げながら、単体の各種カメラ、およびそれらを組み込んだシステムの開発・製造へと展開してきました。
そうした間に、ICメモリ採用の陸上競技ゴール判定装置(1982年)、文字認識装置(1984年)、超高感度カラーカメラ(1987年)、高性能画像処理装置(1991年)、ハイビジョン画像処理(1996年)、各種高画素デジタルカラーカメラ(1998年以降、段階的に)、3次元万能微小画像測定システム(2001年)、デジタルカメラ用オートフォーカス(2003年以降、段階的に)、手術顕微鏡等対応3CCDカラーカメラ(2006年)、超高画質フルスペックハイビジョン立体カメラ撮影システム(2007年)、高精細医療フルスペックハイビジョンカメラ(2008年)、ゴルフラウンドシミュレーター(2009年)―
などを開発。
近年では、ピエゾ方式1億4500万画素デジタルカメラ(2010年)、EM-CCDハイビジョンカメラ(2011年)、ゴルフシミュレーター(2012年)なども製品化されてきています。
宇宙や深海向け超高感度カメラの撮影成果はTV で話題に放射線可視化やバイオ関連製品の開発にも力
▲株式会社フローベル 応用事業部
応用システム開発グループ エンジニア 具志大輔氏
▲ショールームにて、応用システム開発グループの皆様
そのような株式会社フローベルで、このところ注目を浴びている分野として具志大輔氏がまず挙げるのは、超高感度カメラです。
例えば、同社の超高感度ハイビジョンカメラは、国際宇宙ステーション(ISS)に搭載され、既にさまざまな撮影を実現しています。
また、NHKが同社とともに開発した深海用超高感度カメラは、深海にすむダイオウイカの撮影に世界で初めて成功。今年5月、NHKの番組で紹介されています。さらに、福島第一原発事故の後は、当該施設に向けた遠距離からの撮影や夜間監視用にも活用されています。
同じく福島第一原発事故を受け、同社は放射線を撮影してその強度を可視化するカメラ(「RadiCam」)を開発。その簡単操作で高感度な測定に加え、優れた機動性により、除染作業の効率化に資することが期待されています。
そのほか、顕微鏡に取り付け、長時間撮影や自由にフォーカス変更しての再生が可能な「3次元オートフォーカス(AF)機能搭載タイムラプスシステム」は、医療やバイオ系の分野で活躍しています。これについては、同社は今年9月、新たに「フローベルBIOショールーム」(東京都文京区)を開設。ユーザーに自社の各種バイオ関連製品を体験してもらい、ソリューションの提供に繋げることを目指しています。
同社の事業体制は現在、1)主にカメラを担当し、近年は前述の宇宙や深海での撮影に実績のある超高感度カメラの開発にウェートを置く「映像機器開発グループ」、2)AF装置や自動アライメント装置などを担当し、スクリーン印刷機メーカー向けに多くの実績を有する「制御システムグループ」、3)ゴルフ関連機器や陸上の着順判定装置などを担当する「運動解析システムグループ」、4)ユーザーのさまざまなニーズに応じたファクトリーオートメーション(FA)向けシステムを提案・開発する「FAシステムグループ」、5)バイオ関連製品の販売を担当し、「フローベルBIOショールーム」を運営する「営業システムグループ」、6)同社製品関連のソフトウェアやそれらの応用システムを開発する「応用システム開発グループ」、7)上記以外のハードウェアを主に開発する「特機開発グループ」
― の7グループにより構成。これらの部署に約30名のエンジニアを配置し、それぞれの分野で先進技術を駆使した開発・製品化が展開されています。
バーチャルサイクリングシステムの新版開発へUC-win/Road 活用で臨場感の向上を実現
今回取材した応用システム開発グループは以前、「ソフト開発グループ」の名称で、自社製品向けプログラミングをメインとする組織でした。それが次第に、応用システムの開発やセールスエンジニアリング的な比重が増してきたことから、2年前に現行の体制に再編。前述の放射線可視化カメラ「RadiCam」やバーチャルサイクリングシステム「cycleStreetシリーズ」といった応用システムの開発に繋がっています。
▲cycleStreet シリーズ(同社ショールーム) 「City Edition」ではUC-win/Road で渋谷の街並みが再現されている
具志大輔氏自身はその中で、オートフォーカスシステム向けソフトウェアやゴルフシミュレーター「School Coder」向けCGの作成、および今回フォーカスするバーチャルサイクリングシステムなどの開発を担当してきました。
もともと、前述の陸上競技ゴール判定装置を手掛けていた関係で、競艇や競輪のゴール判定に関わるOEM業務に従事。その延長上で自転車シミュレーターを応用したシステムの開発依頼を受けたのがきっかけとなり、実在する競輪場をモデリングしたバーチャルなコース上で2台のロードバイクを使って競争するcycleStreetシリーズ「Sprint
Edition」、および単調になりがちなエアロバイクでのトレーニング中に臨場感豊かなCGで街並みをサイクリングしているような雰囲気を味わえる同シリーズ「City
Edition」の製品化が取り組まれました。
「もともとこの(『City Edition』の)システムと(そこに使われた)CGは自分が(ゲームエンジン『Unity』を使って)簡単に作成したもので、もう少し本格的なものを開発できないかと探っていました」
そのような中、今年5月に開催された「第23回 ソフトウェア開発環境展」(東京ビッグサイト)に出展していた当社のUC-win/Roadドライブ・シミュレータを見て、同氏はその可能性に着目。とくに、「道路のリアリティをうまく出すためにはどうしたら良いかと(いう点で従来手法では)行き詰っていたところがあり」、UC-win/Roadの利用によりそうした制約をクリアできるものと期待。初期モデルで1画面だったものを3画面化し、コースづくりに関しても細かく作り込むとともに、実際の道路を走行しているような臨場感を追求していきたいとの構想が描かれました。
そこで早速、UC-win/Roadの導入を決定。冒頭で触れた翌月開催の「IVR」出展に向け、3画面パノラマ映像を備えた「City Edition」新バージョンの開発に着手。公開間際まで続けられた微調整を経て、完成に至っています。
同システムは、市販のエアロバイクを用いて、その中に独自に開発した速度センサーを組み込み、そこから回転数を読み取るDLL(ダイナミックリンクライブラリ)を接続。これに、UC-win/Roadで作成したVR・CGの3画面パノラマ表示がリンクします。出展用システムのコースは、フォーラムエイトが作成した渋谷駅を中心に一周する内容のデータを活用。体験者がエアロバイクのペダルを漕ぐと、速度に応じてCGが動き、都心のサイクリングをゲーム感覚で楽しみながらエクササイズできる仕組みを実現しています。
UC-win/Road 導入のメリットと今後の展開
「IVR」への出展を機に、複数の来場者から今回システムをベースとするカスタマイズ対応への問い合わせが寄せられました。そうした中からは、例えば、高齢者の徘徊衝動に悩む介護施設における予防対策としてのシステム利用、自転車初心者に対する教習目的のシステム利用、郊外などコースの多様化などへのニーズが窺われました。これに対し、具志大輔氏はUC-win/Roadの機能のいっそう効果的な活用の必要性に言及。その一方で、メガネ型3Dディスプレイなど他の先進技術との連携による更なる可能性に注目します。
「Unityなどを使う(従来の)手法では自分でプログラムを組んだりしなければならないけれど、(UC-win/Roadの場合は)使い方さえ覚えれば、(一定レベルの動画まで作成)出来るというのは素晴らしいと思います」
つまり、これまで苦労していたプロセスが効率化することで、さまざまなハードウェアとソフトウェアを組み合わせて新しいシステムを開発するという、本来得意とする業務に集中できる、と同氏はそのメリットを説きます。
(執筆/取材:池野 隆)
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