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北陸ユーザー特集 4 富山県
Users Report ユーザ紹介/第101回

北建コンサル 株式会社


深浅測量で豊富な実績、現在は構造物の長寿命化に注力
橋梁設計から耐震・補修設計へ、推移するソフト利用シーン

 User Information
北建コンサル株式会社
URL ● http://www.kitaken.co.jp
所在地●富山県高岡市
事業内容●測量/設計/調査/補償


フォーラムエイトは7月1日、金沢事務所を開設いたします。同事務所は、富山・石川・福井の北陸3県をカバー。当該地域のユーザーの皆様に対する営業および技術サポートの拠点としてはもちろん、各種セミナーの開催などを通じ地域に密着した幅広いサービスを展開してまいります。
そこで今回の本コーナー(「ユーザー紹介」)は「北陸ユーザー特集」と題し、3県にまたがる4ユーザーを取材。地域の特性も反映し、それぞれユニークな事業や研究活動を進める各ユーザーによる最新の取り組みについてご紹介します。
フォーラムエイト 金沢事務所(リファーレ) 金沢駅徒歩3 分


 「深浅測量は(測量機器を搭載した)船を使って海底(あるいは湖底など)の地形を見ていくのですが、(とくにそれを)海で行っているのは、呉西(ごせい:富山県西部)は当社ぐらいでしょうか」

 北建コンサル株式会社はもともと測量業務を中心にスタート。その後、建設コンサルタント業務、補償コンサルタント業務と段階的に業容を拡充してきた経緯があります。そうした背景を受けた自社の特徴を成す一端として、同社代表取締役社長の鷲北慎一氏は深浅測量のユニークな位置づけに触れます。その一方で、同社は現在、橋梁や各種コンクリート構造物の長寿命化に向けた取り組みの強化を図っているといいます。

 今回北陸特集の最後にご紹介するユーザーは、北建コンサル株式会社です。同社は富山県を基盤とする有力な総合建設コンサルタント企業で、昨年、創業50周年を迎えています。

 これまで設計業務を本格的に展開させてきた過程で、同社は橋梁の設計に関連するフォーラムエイトのさまざまなソフトウェアを使用。その後、3次元リアルタイムVR ソフト「UC-win/Road」や動的非線形解析ソフトも導入し、それらを含む先進の情報通信技術(ICT)のいっそう効果的な活用を通じた、地域の業界を取り巻く近年の新たなニーズへの対応を進めています。
▲北建コンサル株式会社 社屋外観 ▲北建コンサル株式会社
代表取締役社長
鷲北 慎一 氏
▲同社パンフレット

 創業半世紀の概観と現在の体制

 富山平野の中ほどに位置する呉羽丘陵を境とし、富山県東側の呉東(ごとう)に対して、西側が呉西と呼ばれています。呉西の中核となるのが、西は石川県との県境に接し、北は富山湾に面する富山県第2の都市、高岡市です。

 東海北陸自動車道および北陸自動車道と連絡する能越自動車道の高岡インターチェンジから北東へ、直線距離で約5km。北建コンサル株式会社が本社を構える4階建ての北建ビルは、国道156号線に沿った高岡市街の一角にありました。

 同社の創業は、高岡駅前を拠点に、全6名でスタートした1962年に遡ります。その後、北日本建設コンサルタント株式会社として法人化し、1964年に測量業者登録。次いで、1968年に建設コンサルタント登録、1984年に補償コンサルタント登録も行っています。

 その間、1983年には新たな拠点となった鷲北ビルを竣工して移転。1992年、現行の北建コンサル株式会社に社名を変更。さらに、1994年には鷲北ビルに隣接する形で北建ビルを竣工し、総務部および設計部がそこに移されました。

 同社は大きく、営業部、総務部および事業部により構成。その中で事業部は設計部と調査部から成り、さらに前者にはプロジェクト班、後者には補償班がそれぞれ設置されています。

 現在、本社のほか射水、南砺、東部、小矢部(以上富山県内4 支店)および金沢支店(石川県)の計5 支店に、36名(2013年4月時点)の従業員が配置されています。

 深浅測量に先進技術を積極活用
 ウェート増す構造物長寿命化へのアプローチ

 北建コンサル株式会社にとって、創業時からコアとなってきたのが調査・測量業務。そのうち、測量業務は基準点測量から地形測量、路線測量、河川測量、深浅測量など広範にカバー。調査業務は流量観測、地下水調査、交通量調査、各種台帳作成を含みます。

 とくに深浅測量は、同社が以前から力を入れてきた分野の一つ。これは観測船を使い、海や河川、ダムなどの水上から位置と水深を同時に測量するもの。水上構造物の維持管理、建設や浚渫、埋め立てなどの工事、航路の水深確認などを目的に実施され、さまざまな手法が用いられます。

 同社では、以前、観測船の誘導および測位のいずれにもトランシットを使用していたのに対し、1999年からはGPS(全地球測位システム)を利用しています。最近はさらに、GPS衛星とともにGLONASS衛星にも対応する高精度な受信機を導入。これにより、RTK-GPS受信機を搭載した観測船(移動局)に地上の基準局からデータを携帯電話で送信。観測船は得られたデータを基に、測線をパソコンで誘導しながら等速で航行し、測位を決定。同時に、船に搭載した音響測深機を使って測深する、といった方法が取られています。

▲GPS 受信機を搭載した観測船による調査の様子

 また、同社は設計業務にも早くから取り組んできました。その対象は、道路や河川、港湾、下水道、農業土木施設など多様な分野に及びます。

 加えて、土地調査や営業補償、物件調査算定などの補償業務、あるいは劣化調査や損傷原因診断などの診断業務にも広く対応してきています。

 とくに近年、同社は構造物の点検や診断、そこからさらに、補修設計や耐震補強設計への対応に力を入れています。これに関しては、同地域で補修設計の対象となるのは小規模な橋梁が多く、件数的には同社の手掛ける業務が高いシェアを占めるといいます。そこでは地元業者ならではの、発注者の意向への迅速かつ的確な対応と、現場の施工性に対する考慮が重要になる、と設計照査関係を主に担当する設計部参与の木村善一氏は解説します。

 この2年ほどの間にそうした業務の受注は着実に増えてきており、橋梁や各種コンクリート構造物の長寿命化に向けたアプローチは今後益々求められるはず、と同社技術顧問の古村崇氏は見方を示します。

 高度化する当社製品の利用、新たなニーズや要望も

 「橋梁(の設計)で実際に使ってみて、フォーラムエイトのソフトウェアは橋台や基礎、杭基礎といった各種ソフト間で、計算や配筋図などが連動していて使いやすかったということがあります」

 もともと道路設計や河川設計を主に担当し、現在は補修設計に関する部門を取りまとめている同社設計部次長の日南田修市氏は、初期の当社製品に対する評価ポイントを挙げ、その後の継続的な利用に繋がってきていると語ります。

 同じく設計部課長の清水幹州氏は複数の橋梁関連業務での利用を通じ、当社製品の使い勝手の良さを実感。とくに、そのソフト間の連動により、個々のソフトを一つひとつ立ち上げることなく、一括した形で成果品を作成。加えて、例えば、設計水平震度も一連のソフトの中で出来てくるなど、そのために別途時間を要せず、効率的に作業を進められたと振り返ります。

 また、補修設計や耐震補強設計では、橋梁のみならず地盤や解析関連のソフトも、併せて使用されます。そのような場合にも、動的非線形解析ソフトをはじめ一連の当社製ソフトを組み合わせて利用するケースが増しているといいます。

 そうした実際の利用を通じ、古村崇氏は当社ソフトのアウトプットに関する改善要望や問い合わせに対する対応の良さを評価。その上で、予備設計を複数案提出するようなケースを想定した積算機能向上などへの期待に触れます。

 一方、他社製も含め構造解析用のソフトが確実に進化してきていることを認めつつ、「数字の羅列」になりがちな解析の過程に関して実は発注者から説明を求められるケースが多い、と木村善一氏は明かします。それに対し、「どういう理論解析がなされているか」「どこが計算過程のチェックポイントか」をアピールするような新たな機能への関心を述べます。

 さらに、同社はUC-win/Road も早くから導入。さまざまな事業の概略設計などに適用しています。

▲UC-win/Road を使った深浅測量のイメージ図

 データの重要性とセキュリティ
 求められる技術者の意識

 「(自社のような)地方の建設コンサルタントにおいてもデータのバックアップ(への対応)は(益々)重要になってくると思います。

 そこでは、必ずしもいきなり高いコストをかけなくても、まずはデータの重要性を考慮。危険を回避するという観点に立って、可能な範囲で具体化することが大事 ― 。とくに大手企業は別として、地方の中小事業者ではそうした対応が遅れているケースも少なくないものと推定。近年、自身らが検討を重ね、ハードディスクを利用して支店間でデータを持ち合う体制を構築した経緯を踏まえ、鷲北慎一氏はこう語ります。

 それに関連し、木村善一氏はクラウド化への関心を示しつつ、そのハード・ソフト両面でのセキュリティをどう担保するか、といった課題に言及。その半面、発注者とのやり取りの中から、ペーパーレスへの展開の必要性も実感されるため、クラウドを含めた新たなアプローチについて継続的に検討していきたいとしています。

 「IT(情報技術)化が進んでくると、どうしても理論が抜けていく」。つまり、インプットをすれば、アウトプットが得られ、その間はすべてブラックボックスのままといった形でソフトウェアを使ってしまいがちなのが現状では、と木村善一氏は懸念。そうした問題を防ぐためには、ソフトを使う技術者が自ら技術力を維持し、品質を確保できるよう常に意識しながら使いこなしていく姿勢が求められてくる、と自戒を込めるように説きます。

▲左から、計部参与 木村 善一 氏、技術顧問 古村 崇 氏、
設計部次長 日南田 修市 氏、設計部課長 清水 基州 氏
▲50周年祝賀パーティー 集合写真


(執筆/取材:池野 隆)


     
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