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株式会社 沖縄構造設計
橋梁を中心とする構造物の設計、補修・補強で豊富な実績
多様なF8製品を駆使、FEMの活用やVR導入も視野 |
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「沖縄は地域が非常に狭いものですから、構造物の設計のほか、場合によってはCG(コンピュータグラフィックス)の世界に入ったり、(自社開発の技術や製品に関する)ちょっとした実験を行ったりしています」
沖縄特集で次にご紹介するユーザーは、株式会社沖縄構造設計です。20年以上遡る設立当初、同社は下請の形で、その後、次第に元請として橋梁関係を中心とする構造物の設計に従事。併せて、早くから塩害問題に対応した構造物の補修・補強にも力を入れてきました。
その傍ら、同社は沖縄県内の他の企業に先駆け、PC(プレストレスト・コンクリート)橋梁に注目し、その検討・開発に着手。また、環境関連の業務の延長上で漁礁ブロックの開発に関する研究も手掛けています。さらに、進取の考え方はICT利用の面にも反映。住民説明用のフォトモンタージュの作成に、いち早くCG技術を採り入れてきました。
同社代表取締役の伊波禮司氏は、そのような多岐にわたる分野に取り組む自社のスタンスを、沖縄の地域特性に根ざすものと説明します。
そうした過程で同社は、20年ほど前から導入し始めた当社製品を逐次拡充。豊富なラインナップを構成する中でとくに、
- 震度法・保耐法による橋脚の耐震設計や補強設計、図面作成を行うプログラム「橋脚の設計」
- 複数振動系を有する橋梁の静的フレーム法による震度算出プログラム「震度算出(支承設計)」
- 逆T式橋台や重力式橋台の設計計算、図面作成を行うプログラム「橋台の設計」
- 杭基礎、鋼管矢板基礎、ケーソン基礎、地中連続壁基礎、直接基礎および液状化に対応する耐震設計プログラム「基礎の設計計算」
をはじめ橋梁関係の製品が主として活用されています。
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▲株式会社 沖縄構造設計 代表取締役 伊波禮司氏 |
▲伊波氏(左)と取締役設計部長 岡嶋末生氏(右) |
県内でいち早く塩害問題に着目。補修・補強対策や新技術の検討を推進 |
沖縄本島の中部、その最もくびれた辺りから東に臨む金武(きん)湾に沿って湾の南縁を、勝連半島、次いで海中道路および複数の橋梁により結ばれた島々が弧を描くように連なる「うるま市」。同市は、それまでの具志川市、石川市、勝連町、与那城町が合併し、2005年に誕生しました。.
株式会社沖縄構造設計の本社は、市の東南端に位置する中城(なかぐすく)湾沿岸部に設けられた、中城湾港新港地区工業団地の一角にあります。
同社は1988年、浦添市仲間に「有限会社沖縄構造設計」として創立。沖縄に建設される橋梁の設計を下請する形でスタートしました。
それ以降、段階的な増資を経、1994年に本社を宜野湾市伊佐へと移転。その頃から、沖縄県内の事業者としてはいち早く塩害の問題に着目し、橋梁をはじめ構造物の補修・補強に取り組んできています。
実は、「沖縄構造設計」という社名には創業当時、いずれ補修・補強への対応が求められるだろうとの狙いが込められたといいます。ただ、初めの3年間ほどは専ら下請による橋梁関連の設計に従事。それが、次第に元請として多様な構造物の設計に当たる機会が増すようになるのと併せ、補修・補強業務のウェートも高まってきました。
とくに、塩害の問題をどう扱っていくかの判断を迫られる中で、社内にイオン濃度の測定や塩分の分析などを行う担当部署を設置。これは後に、調査・分析の対象が拡大してきたのを受け、「有限会社環境リサーチ」として分社化されました。現在は両社が連携しつつ、構造物の長寿命化に資するべく努めています。
一方、RC(鉄筋コンクリート)橋梁主体からPC橋梁が多用される時代になっても、沖縄県内の事業者ではPC桁の製作が技術的に難しく、地域への経済波及効果に制約のあるのが実情でした。そこで同社は、当時まださほど普及していなかった、塩害に強いエポキシ樹脂塗装鉄筋を用いるRCプレキャスト桁橋を開発。1997年にはその耐荷力に関する実験を、県内のコンクリートメーカーと共同で実施しました。
「その後、沖縄にもPC(桁)の工場が出来たこともあり、それ(同社が開発したRCプレキャスト桁橋)がとくに流通することはありませんでした」。しかし、塩害対策は依然重要な課題であることから、伊波禮司氏はエポキシ樹脂塗装鉄筋などを利用し、高耐久の構造物を実現する独自の手法を継続的に検討していく考えといいます。
1998年には現行の「株式会社沖縄構造設計」として再編。さらに2002年、現在の場所(当時は旧具志川市)に本社が移されています。
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▲株式会社 沖縄構造設計 社屋外観 |
▲伊波氏と弊社代表取締役社長 伊藤裕二 |
同社は設計部と、営業機能を含む総務部より構成。そこに現在、15名の従業員を配置しています。前述のグループ企業、環境リサーチ(所在地は沖縄構造設計本社ビル内、従業員7名)とは人事交流などしながら、協力して業務に当たる体制が取られています。
創業以来、同社の柱となる業務が、県内の橋梁を中心とした構造物の設計です。沖縄ではとくに、橋梁に関しては塩害や腐食への対策が求められるほか、その豊かな自然に恵まれた島嶼性や観光面への影響も踏まえ、さまざまな公共事業において環境や景観への配慮が重要にな
ります。
そのため同社は、各種構造物の設計と連動し、パブリック・インボルブメント(住民参画)関連のサービスを提供しています。ラジコンヘリで撮影した俯瞰写真を基にフォトモンタージュを作成。1995年からはそこへCGを利用した景観シミュレーションにも着手。美術専攻のスタッフがアニメ化まで手掛けようとしましたが、その際は作業量が膨大となったこともあり、一旦は断念を余儀なくされた経緯がある、と伊波禮司氏は語ります。
また、コンクリート構造物や鋼構造物に対する劣化調査および診断、それらを受けた補修・補強設計も同社が県内でパイオニアとして取り組んできた分野の一つ。早くから自社で専用機器を揃え、非破壊検査や実載荷試験、応力頻度測定、塩化物含有量試験などを行っています。
さらに環境関連では、紫外可視分光光度計や原子吸光光度計、ガスクロマトグラフ質量分析計、高速液体クロマトグラフィーなどの機器を自ら装備。主に水質調査や土壌調査を実施してきました。
現在、とくにニーズの多いのが、構造物の劣化につながる塩分の分析。駐留米軍基地を抱え、琉球石灰岩の地層が広く分布する沖縄地域に特有の、土壌・水質汚染や赤土流出などの調査・対策にも力を入れています。
加えて、同社が参加した地域新生コンソーシアム研究開発事業(経済産業省)でフライアッシュを配合したコンクリート漁礁の効果について研究。その延長上で、サトウキビの搾りかす(バカス)を活用した漁礁ブロックの開発も進めています。
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▲株式会社 沖縄構造設計の皆さん |
同社がフォーラムエイト製品を初めて導入したのは、本土の建設コンサルタント企業で段階的なコンピュータ化のプロセスを自ら経験してきていた同社取締役設計部長の岡嶋末生氏が入社した20年ほど前に遡ります。それは同社にとって、ちょうど手計算による作業からコンピュータベースのそれに切り替わろうとする時期でもありました。
当初は、発電所の建設プロジェクト受注を機に「プラント基礎の設計計算」を導入。次いで、新橋建設が多数発注された時代を背景に作業を効率化するため、深礎基礎の設計計算を行う「深礎フレーム」、橋梁下部工およびRC構造物の設計計算を行う「RC下部工の設計計算」などを導入。それらを通じてとくに入力のしやすさと、アウトプットの良さを実感したことから、それ以降もずっとフォーラムエイト製品を使ってきた、と同氏は述べます。
橋梁に関しては近年、新設から補修・補強へと業務のウェートが推移してきた中で、同社は冒頭で挙げた「橋脚の設計」「震度算出(支承設計)」「橋台の設計」「基礎の設計計算」をメインに利用。その半面、「連続合成桁の概略自動設計」などは保有していたものの、鋼桁橋に対応するプログラムをこれまで十分活用してこなかったことから、今後は受注状況を睨みつつそれらの利用・拡充を展開。併せて、「橋梁点検支援システム」など補修・補強に関わるプログラムも取り込みながら、いっそうの効率化を図りたいとしています。
また最近、水環境における耐震照査のニーズが県や那覇市などを中心に増えてきたのを受け、水道施設耐震工法指針に準拠して配水池の耐震設計計算を行う「配水池の耐震設計計算」を導入。この分野でも、県内の他の業者に先駆けて取り組んでいるといいます。
一方、沖縄市内に延長約2kmの2車線道路を整備する「市道国税庁西側線」プロジェクト(事業期間:1995〜2013年度)において当初の事業案がコスト縮減を求められた際、同社は立体骨組み構造の3次元解析プログラム「UC-win/FRAME(3D)」を2009年に導入。橋梁の幅員および構造形式を見直すための最終照査でこれを利用しています。
ただ、同プロジェクトで利用したのみで、その後のUC-win/FRAME(3D)活用は進んでいないのが実情です。そこで伊波禮司氏はこれを有効活用。例えば、築堤河川よりも掘込河道が大半を占め、河川管理施設等構造令に定められた地震動に対する問題なども本土とは異なる沖縄の実態に即して、橋梁の下部工を設計。それをコスト縮減ニーズへの対応に繋げていきたいとの意向を示します。
さらに前述のように、景観シミュレーションに早くから着目。CG利用に続き、一旦はそのアニメーション化を目指した経緯もあり、伊波禮司氏は3次元リアルタイムVRソフト「UC-win/Road」にも注目します。
「これからは環境と絡めた景観設計が非常に重要になってきます」。それだけに、従来のフォトモンタージュに留まらず、交通シミュレーションも可能なコミュニケーションツールによる沖縄での新たなサービスの可能性を説きます。
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▲橋脚の設計による解析の様子。橋梁関係の製品を主として、多くのフォーラムエイト製品が活用されている |
(取材/執筆● 池野 隆) |
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