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Users Report ユーザ紹介/第97回
沖縄ユーザ特集 3

株式会社 中央建設コンサルタント


土質調査からスタート、近年は交通解析で独自の展開
橋梁の設計、点検、補修・補強を中心に広範なF8製品活用

 User Information
株式会社中央建設コンサルタント
URL● http://www.cyuo.co.jp
所在地● 沖縄県浦添市
事業内容● 測量/地質・土質調査/土木計画・設計/施工管理/交通調査・計画
 「交通解析をメインにやっている部署があるのは、沖縄ではよそ(の会社)にない一つの特色かなと思います」

 豊かな自然環境に恵まれた世界有数の観光地である沖縄は、その半面、自動車に大きく依存した地域としても知られます。その結果、都市部を中心とする慢性的な交通渋滞や、公共交通機関の利用率低下、自動車の排気ガスによる環境への影響など、さまざまな交通問題をもたらしてきているのが実情です。

 そこで同県は、自動車利用者の増加に対応して交通容量を確保するため、道路整備を推進。併せて、地域性を踏まえて交通需要を管理しつつ、適切な交通体系の構築を目指すなどさまざまな取り組みに努めています。

 そうしたプロセスで求められるのが、ニーズに応じて交通容量や交通需要などの変動を考慮し、効果的な施策の策定や対策の検討に資する交通解析です。

 沖縄特集の最後にご紹介するユーザーは、株式会社中央建設コンサルタント。同社は土質調査から始め、その後、設計や測量、施工管理、交通調査などと業務機能を順次拡充してきました。同社代表取締役社長の砂川秀樹氏はそのうち、沖縄の地域性や交通上の課題、交通政策の展開方向などを視野に、交通調査や交通解析を専門に担う部門(調査部)を組織した独自の観点に触れます。

 同社は20年以上前から、土留め工や橋梁下部工関連のフォーラムエイト製品を導入。現在は構造解析や断面計算、上部工、下部工をはじめとする橋梁関係および道路土工のソフトウェアを中心に利用されています。今後はニーズの増している補修・補強向けに当社製品の更なる活用を図っていきたいとしています。

▲株式会社中央建設コンサルタント
代表取締役社長 砂川秀樹 氏
▲社屋外観


 半世紀にわたり土質から設計、調査へと展開

 浦添市は、沖縄本島南部の西岸、東シナ海に面した一角を占め、南は那覇市と、北は宜野湾市とそれぞれ隣接。那覇空港からは車で30分程度というアクセスの良さもあって、商業都市として発展してきました。

 株式会社中央建設コンサルタントの本社社屋は、市の沿岸寄りを走る国道58号から400mほど東に入った市街地に立地していました。

 同社の前身、合名会社中央土質調査所が設立されたのは1963年。来年7月で、50周年を迎えます。

 1966年には会社形態を合資会社に変更。次いで、1969年に合併を経て、それまでの土質・地質の調査、試験、解析を主業務とする体制に設計部および測量部を加えた、現行の株式会社中央建設コンサルタントとして再スタート。その後、1972年には施工管理部が、1977年には調査部が順次設置されています。

 「当初は(当時の『中央土質調査所』の社名通り)土質関係を主にやっていて、それから道路設計および橋梁設計へと展開してきました」

 そうした中、同社は交通解析にいち早く注目し、ノウハウを蓄積。それが近年、道路の概略設計に当たって費用便益比(B/C)の算定などが求められる際、独自の強みとなり、自社内における交通解析のウェートが高まってきている、と砂川秀樹氏は解説します。

 現在、同社は(1)営業部、(2)総務部、(3)測量部、(4)土質部、(5)調査部、(6)(橋梁を担当する)設計第1部、(7)(道路を担当する)設計第2部、(8)施工管理部 ― の8部門より構成。それらに44名の従業員を配置しています。


 高度化するニーズに新技術を積極導入

 もともと土質・地質関連の業務からスタートした同社は、道路や港湾施設を対象にボーリング調査や各種原位置試験、各種室内土質試験を組み合わせた総合的な地盤解析に取り組んできました。近年は既設構造物の点検・補修に対応した地盤調査、自然災害を受けた地盤調査、不発弾に対する磁気探査、建設工事における土壌環境調査などを主に実施しています。

 また、測量部は幅広い測量業務に対応。とくに近年、より高度な専門性や技術力を求められる中で、最新の機器や技術を積極的に導入し、測量成果の高精度化や作業の効率化に努めています。

 同社を特徴づける調査部では、創業以来蓄積してきた調査データや先進の情報通信技術(ICT)を駆使し、各種道路の交通量予測や整備効果分析、公共交通計画、維持交通管理計画、道路計画(概略設計・予備設計)を実施。測量部と連携した交通量観測の企画や解析支援も行っています。

 さらに、同社の設計部門は前述のように、橋梁を担当する設計第1部と、道路を担当する設計第2部により構成されています。

 そのうち道路および付帯施設の設計は、自動車専用道路や国道から市町村道まで数多くの事業に携わってきました。近年は自転車走行に配慮した道路、沿道のまちづくりと連動した道路および付帯施設などの設計にも取り組んでいます。

 また橋梁に関しては、浜比嘉(はまひが)大橋、平安座海中(へんざかいちゅう)大橋、ワルミ大橋、伊良部大橋などの離島架橋、あるいは沖縄都市モノレールの軌道桁など県内主要橋梁の設計に、県外建設コンサルタントとのJVの形で参加。とくに、株式会社建設技術研究所とのJVにより設計したワルミ大橋(沖縄県北部土木事務所)は平成22年度PC技術協会賞・作品賞、2011年日本コンクリート工学会賞・作品賞を受賞しています。

 近年は予防保全型や環境に配慮した橋梁設計、歩行者の動線に配慮した人道橋の設計などにも対応。併せて、橋梁を含む土木構造物の点検・診断、補修・補強などに力を入れています。

 「交通量にしても、橋梁の設計にしても、とくに最近は(そこで扱われる)データ容量が大きくなっています」

 しかも、そのデータを複数の関係者で活用することを考えると、それを一ヵ所にまとめて管理するというアプローチが求められました。ただ、それまで使用していたファイルサーバの容量にあまり余裕がなくなってきたことから、今年3月、新たにブレードサーバを導入。既に構築済みの社内LANとリンクさせ、社内のデータ管理とその活用に関する当面の課題はクリアした、と社内のICT関連の管理を担う同社CALS/ECエキスパートの亀川太氏はその現状を述べます。


 橋梁関係を中心に多彩なF8製品を効果的に利用

 「(フォーラムエイトがリリースしている)橋梁関係のソフトは、(必要な分野については)ほとんどあるのではないかと思っています」

 同社が土留め工、次いで橋梁下部工関連と、フォーラムエイト製品を導入し始めたのは20年以上前に遡ります。導入に当たって他社製品と比較検討した際、入力がしやすそうで、アウトプットがニーズに合っていた点が選定の大きな要因になった、と同社取締役設計第1部部長の多和田伸氏は振り返ります。

 中でも使用頻度が多いのは、「橋台の設計」「橋脚の設計」「震度算出(支承設計)」をはじめとする橋梁下部工関連。そのほか「RC断面計算」、基礎工関連では「杭基礎の設計」「基礎の設計計算」「深礎フレーム」、仮設工では「土留め工の設計」「仮設構台の設計」、橋梁上部工では「任意形格子桁の計算」「落橋防止システムの設計計算」など。道路土工では「BOXカルバートの設計」「擁壁の設計」をはじめ多岐にわたります。

 また、立体骨組み構造の3次元解析プログラム「UC-win/FRAME(3D)」は、土質調査の一環として極めて短期間での櫓の設置が求められ、急遽3次元の動的解析をする必要が生じた際に導入しています。

 社内で個々のソフトを含むICTに関する問題を一元的に管理する亀川太氏は、扱うソフトの数が多いため、それらのバージョンが更新されたりすると、保守が大変になる、と苦労の一端を明かします。その意味で、同氏はライセンスユーザー専用の「ユーザ情報ページ」を頻繁にチェックしており、これまで遭遇した課題の多くはこれを参考にすることで解決に繋がっているといいます。

 一方、まさに新設橋梁のプロジェクトで予備設計向けに「橋脚の設計」や「橋台の設計」と併せ、「震度算出」を使用しているところという同社設計第1部主任の島村泰之氏。作業の過程で、バージョンの更新に絡む不都合などを来した場合は、亀川太氏を通じフォーラムエイトのサポートを得つつ進めているため、とくに問題は感じないと語ります。

▲CALS/ECエキスパート
亀川太 氏
▲取締役設計第1部部長
多和田伸 氏
▲設計第1部主任
島村泰之 氏
▲調査部
宮国敏秋 氏
画像をクリックすると大きな画像が表示されます。
▲橋脚の設計やUC-win/FRAME(3D)などフォーラムエイト製品を多数活用


 変化する環境への対応と期待

 沖縄でも公共事業を取り巻く環境が変化。道路や橋梁を新設するプロジェクトが減少し、代わって点検や補修・補強への対応のウェートが増しています。多和田伸氏はそうした推移を視野に、当社ソフトのより効果的な活用に言及します。

 また、同社が現在営業的に軸として展開しているのが交通解析。その契機となったのが、1977年に実施された「第1回沖縄本島中南部都市圏パーソントリップ調査」でした。これは、当該地域の人の動きを把握し、将来に向けた総合都市交通計画の策定を狙いとするもの。その後、1989年に第2回、2006年に第3回の同調査が実施されています。同都市圏はとくに、人口増や交通混雑、米軍基地跡地利用などさまざまな課題を内包。そのため、同調査に基づき、これまで幹線道路網やモノレールの整備が進められてきたほか、新たな交通計画の策定に向けた作業が続けられています。

 同社はその第1回調査の受託を機に、調査部を設置。以来、県内のさまざまな交通計画や道路計画関連事業に参加。そうしたプロセスを通じ体制強化を図りつつ、交通量予測や道路整備効果分析、費用便益分析、多様な道路・都市計画に関するノウハウを蓄積してきました。

 とくに同社は、蓄積した調査データを基に、都市圏レベルの広域的な路線ネットワーク計画、あるいは地区レベルの交通計画などに関わる多様な交通事象を再現・予測。その交通シミュレーションを通じ、B/Cや交通量の変化、渋滞損失時間、アクセス所要時間、CO2排出削減効果など当該プロジェクトの整備効果について定量的な評価を実現しています。

 さらに同社はその延長上で、整備計画が検討されているプロジェクト向けにVR(バーチャルリアリティ)・CG(コンピュータグラフィックス)の作成を進めています。現在は別のツールを使ってその作業を担当しているという同社調査部の宮国敏秋氏は、3次元でより分かりやすい説明を実現する当社の3DリアルタイムVR「UC-win/Road」の可能性にも注目します。

 「新しい道路の予備設計や概略設計では(今後)、VR(を利用した説明や合意形成)の要望が出てくるのではと思っています」。
砂川秀樹氏はその分野での自社の強みを発揮できるチャンスの到来に期待を示します。

▲砂川氏と弊社代表取締役社長 伊藤裕二 ▲株式会社中央建設コンサルタントの皆さん

(取材/執筆● 池野 隆)


     
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