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2015-No.2

 ■ 理数系人材育成の新たな取り組み

皆さんはSTEM教育という言葉を聞いたことがあるでしょうか。日本ではまだ馴染みが薄いかもしれませんが、Science(科学)、 Technology(技術)、 Engineering(工学)、 Mathematics(数学)の頭文字をとったもので、新たな英才教育の分野として注目されているキーワードです。子どもの科学技術への理解促進・科学技術リテラシー向上を図ることで、長期的にグローバルな舞台でイノベーションを起こすことができる人材を増やすことを目的とし、従来の科学技術および理数系教育を統合・体系化したもので、米オバマ政権では官民連携の国家戦略として位置付けられています。

背景としてはインターネット普及以降の技術革新により、STEM分野の高度人材に対する需要が急増していることや、文系理系問わず幅広い職種で科学・数学的な知識が要請されるようになっていることがあります。実際、最近の米国内の調査では、大卒者(学士)全体の平均給与に対してSTEM分野の卒業生の年収が高いことが統計的にも明らかになっています。


 ■ STEM教育の広がりと動向

米国では、今後の10年間で科学・技術・工学・数学の学位を持つ大卒者を100万人以上増やす計画が立てられており、その方策として年間約30億ドルの予算を、幼稚園から大学院生・社会人までを対象としたSTEM教育に投じています。その結果、STEM関連分野のさまざまなビジネスが創出されています。米国立科学審議会(National Science Board, NSB)によって公開されているWebサイトでは、STEM分野における学生の学力や就労についての定量的なデータがまとめられており、米国および国際的な動向がデータやグラフ、地図などで分かるようになっています。アジアやEU諸国でも、STEM教育への幼児〜初等中等段階からの取り組みが開始されています。

特にSTEM教育熱が世間的にも高まっている米国では、幼稚園から高校を対象として、課外授業やサマースクールなどを中心とした科学・電子工作のプログラムが増加しています。政府や自治体の助成金、財団や地域コミュニティからの寄付、民間企業の支援を主要な資金源とし、理系の大学教育機関がさまざまなカリキュラムを提供するという形をとっており、子ども達がこういったプログラムに無償で参加できる豊富な機会が用意されています。最近の代表的な例としては、NASA(米航空宇宙局)が非営利の教育機関であるカーンアカデミー(Khan Academy)と提携して公開した、STEM分野への興味関心を高めるインタラクティブなオンライン教育コンテンツが挙げられます。


 ■ 関連ビジネスの可能性と今後の展望

STEM関連のプログラムでは、こども達が楽しみながらロボットを制作できる電子工作教室なども注目を集めており、周辺のビジネスも成長しつつあります。例えば、掃除ロボット「ルンバ600シリーズ」をベースに開発された「iRobot Create 2」(アイロボット社、2014年12月発売)は、ルンバから掃除機能を取り除き、ユーザーが動きや音、光などを自由にカスタマイズ可能なキットになっています。マイクロコントローラのArduinoや小型ボードコンピュータのRaspberry Piを使ってプログラミングをすることもでき、理数系の才能育成を図るSTEM市場を意識した教育プラットフォームとして位置づけられています。従来のIT分野はハードウェアとソフトウェアによって二分される市場構成となっていましたが、ここにSTEM教育による人材育成という新たなビジネス分野が開けたといえるでしょう。

フォーラムエイトでも、各種学生プロコンへの協力・後援やワークショップの開催等を積極的に行い、若い世代の優れた人材発掘・育成への貢献を目指しています。また、こういった人材から、新たな発想やアイデア、技術などがもたらされることを期待しています。


米国立科学審議会によるSTEM関連データ
http://www.nsf.gov/nsb/sei/edTool/contents.html

NASAによるSTEM教育コンテンツの紹介
https://www.khanacademy.org/partner-content/nasa/

iRobot-Create 2
http://www.irobot.com/About-iRobot/STEM/Create-2.aspx


■初等・中等教育から学生・社会人までを対象とした統合的な理数系教育への取り組みである「STEM教育」が各国で開始されている

※ 社名・製品名は一般的に各社の登録商標または商標です。


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