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ハプティック技術 |
IT TERMS INFORMATION
2016-No.2 |
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「ハプティクス(ハプティック技術)」(haptics:ギリシャ語の「haptesthai」が語源)とは、人間の感覚の中でも「力覚」「触覚」を通じて情報を伝達する技術・学問分野のことを指し、人間とコンピュータとの間の情報交換に、ネットワーク技術や機械技術を活用してこの「触覚」を導入した科学といえます。
スマートフォンのタッチインターフェースの普及などを背景として、最近特に注目されつつあり、一般的にはハプティック・インタフェースやフォース・フィードバック・システムなどとも呼ばれます。現在、音声と映像の情報に次いで、触覚情報を新しい要素として次世代マルチメディアサービスのコンテンツに取り入れることが高く期待されています。
例えば、振動や衝撃といったものをユーザーインターフェースの一部として使用した、ゲーム機のコントローラや携帯電話のバイブレーション機能などもハプティック技術のひとつと言えるでしょう。 分かりやすい例としては、タッチインターフェースを通して入力が行われたことを振動で伝えたり、ゲームの中での動きの衝撃などをコントローラーの振動で表現したりといった形で使用されています。
人間は、視覚、聴覚、触覚、力覚などといったさまざまな感覚情報を現実世界から受け取り、総合的に処理・判断することによって、現実の世界を認識・理解し、現実感を得ています。このような、実世界で得られる種々の感覚情報を人工的に再現することによって、現実の世界を仮想的に表現した「バーチャルリアリティ(仮想現実感)」が得られるのです。また、視覚・聴覚による仮想空間を操作・体験する際に、触覚および力覚の情報も加えることで、現実世界により近い、優れた操作性持った環境を構築することができます。
前述のような現実に近い力感・触感を、バーチャルリアリティ技術によって操作者に提示する装置のことを、一般的に「ハプティックデバイス」と呼びます。コンピュータの仮想空間内でオブジェクトに接触した際、その触角をあたかも現実世界で起こったかのように、操作者に伝える仕組みです。
すでに市販されているハプティックデバイスもいくつかあります。最も著名なSensAble technologies社のPHANTOMは、ペン形状のデバイスを通して、仮想空間内の物体を触ることができるものです。その他、yberGlove Systems社のCyberGraspや、東京工業大学佐藤研究室によるSPIDARなどがあります。
ハプティック技術の応用分野としては、遠隔医療や外科手術ロボット、災害救援用ロボットなどの操縦、遠隔でのインタラクティブ通信といったコミュニケーション、視覚障害者のための視触覚変換といった「感覚変換」、歩行誘導などのナビゲーション等が挙げられます。特に、医療等でのハプティックインターフェースを活用した診断・手術トレーニングにおける展開が、注目されています。
World16のメンバーでもある、ニュージャージー工科大学建築デザイン学部 准教授の楢原太郎氏は、ゲーム制作やインタラクション・デザインの教育等で使用してきたUNITYを医療分野に展開し、ハプティック技術を活用してリハビリ目的用ゲームを構築する取り組みを行っており、この内容については、「フォーラムエイトデザインフェスティバル2015」の国際VRシンポジウムでも紹介されました。
フォーラムエイトでは、UC-win/RoadのVRと連携したさまざまなシステムを構築しています。今後は最先端の表現技術のひとつとしてVRにハプティックスの考え方も取り入れ、より現実の再現性や操作性の優れたシステムの研究・開発を進めて行く予定です。
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■Oculusとハプティック
インターフェースを組み合わせた
テニスゲーム |
■糸でつられたボールを使ってVR上の
積み木の重さを感じながら操作するゲーム |
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■医療分野における診断や手術等の研修・訓練などで
ハプティック技術を利用したシステムが検討されている |
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