錦帯橋プロジェクションマッピング 「時空の架け橋」を実施
歴史ある錦帯橋で初のプロジェクションマッピング
2015年5月30日、表技協は一般社団法人 岩国青年会議所が主催する創立60周年記念事業において、日本三名橋のひとつである山口県岩国市にある錦帯橋へのプロジェクションマッピングを実施しました。
錦帯橋は1637年に錦川に架けられた全長約200mの木造五連アーチ橋で、プロジェクションマッピングは初の試みです。今回は「時空の架け橋」をテーマに、橋という建造物の特徴を活かして、上流の川岸に設置した3台のプロジェクターから3箇所の橋脚部分へ映像を投影。AAIひろしまPlan(代表:泉尾祥子)のメンバーが制作した、白蛇をはじめ岩国にゆかりのある題材を用いたオリジナル映像コンテンツを用いて、19:45 から 21:00まで4回に渡って実施しました。
開催当日は雨模様でしたが、錦川の川岸には多数の地元市民が集まり、投影された映像には喜びや感激の声が聞かれました。記念パーティーの参加者は十隻ほどの屋形船に乗り、船上からプロジェクションマッピングを鑑賞しました。
最先端の技術を活用して地域活性化に貢献
錦帯橋を中心とした風景は、山間部と清流からなる自然と太鼓状の橋が見事なまでのバランスで共存した、稀にみる絶景です。昼間だけでなく夜の暗闇においてもその素晴らしさを伝えることに挑戦したのが今回のプロジェクトでした。橋脚に投影された映像は川面へと映り込み、太鼓橋は雲の明かりによって美しいシルエットとして浮かび上がりました。映像そのものだけではなく、錦帯橋周辺の自然と一体となって初めて作品が完成したといえます。
このように、貴重な歴史的建造物であり地域の宝でもある錦帯橋に、最先端の映像技術であるプロジェクションマッピングをおこなうことで、地域の宝としての価値を高めることに貢献できました。
土木構造物への3Dプロジェクションマッピングを支援する技術
今回の試みは、メインスポンサーとして参画したフォーラムエイトが、投影対象の計測によって得られた点群データを活用して3DVRモデリング・投影シミュレーション等を行い、土木構造物へのプロジェクションマッピングを支援する最新技術で協力することで実現しました。
また、表技協には最先端の表現技術に精通し、豊富な実績を持つ技術者やクリエイターが多数所属しています。今回の経験を活かして、地域活性化を目指す全国各地等でのプロジェクションマッピングに積極的に対応していく方針です。
「超臨場感コミュニケーション」シンポジウムにて プロジェクションマッピングテーブルを展示
超臨場感コミュニケーション産学官フォーラム(URCF)は、独立行政法人 情報通信研究機構(NICT)および関連分野の企業、有識者、総務省によって設立された団体です。映像、音響、触覚などの五感情報を伝達することで、遠隔でも臨場感豊かなコミュニケーションを体験できる技術を研究開発し、戦略的に推進することを目的としています。
表技協では同フォーラムに会員組織として参加し、活動を行っています。2015年6月4日、日本科学未来館にて同フォーラムの定期総会と併せて開催された「超臨場感コミュニケーション」シンポジウムでは、表技協からプロジェクションマッピングテーブルのデモ展示を行いました。
シンポジウムは、2020年の東京オリンピックを視野に入れ超高精細映像(4K,8K)をテーマにした講演や、超高齢社会を題材とした講演・パネルディスカッションを通して、今後の映像技術の研究開発の方向性についての認識を深める内容となりました。
総務省の武井大臣官房総括審議官が表技協コーナーを見学。
町田会長よりプロジェクションマッピングテーブルの説明を行った。
3次元映像のフォーラム第111回研究会レポート
高エネルギー加速器研究機構(KEK)見学
2015年3月31日に開催された三次元映像のフォーラム第111回研究会は、つくば市のKEKつくばキャンパス国際交流センター内に設置された、高エネルギー加速器研究機構(KEK)で実施されました。高エネルギー加速器研究機構(KEK)は、加速器と呼ばれる装置を使って基礎科学を推進する研究所です。高エネルギー加速器は、電子や陽子などの粒子を光の速度近くまで加速して高いエネルギーの状態を作り出す装置です。
▲図1 素粒子の可視化。図2の測定器内部をシミュレーションしている。
中央で電子と陽電子が衝突する様子を示し、そこから発生した素粒子を可視化、反応した検出器を強調表示させている
Bファクトリー実験施設を間近で見学
KEK内のBファクトリー実験施設では、宇宙創成の謎や未知の物理を探索する研究が進められています。当日は施設の地下1階まで降りて、縦横奥行が約8m、重さは1,400トンにもなる巨大な測定器を間近で見学しました。これは、KEKB加速器で光速近くまで加速した電子と陽電子を衝突させることで様々な素粒子を発生させ、その様子を観察するものです。
現在、可視化にはCERNで開発されたオープンソースのソフトウェアが利用されています(図1)。このソフトウェアは実際に実験に用いる装置用に作成されたものでなく、現状の機能は簡易的なものにとどまっており、今後の拡張が予定されているとのことでした。
▲図2 加速器-測定器。
光速まで加速した電子と陽電子を実際に衝突させるもの。
中央の穴部分に検出器をインストールして観察を行う |
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▲図3 加速器-リング。
電子と陽電子が流れるパイプ。
直径は10cm程度で、超伝導電磁石の電磁波に乗せ
電子と陽電子を光速まで加速させる |
■講演内容
「KEKにおける3Dプリンタの活用について」
機械工学センター長 山中将
高エネルギー加速器研究機構(KEK)には機械工学センターという施設があり、大学院大学における教育や、要望に応じた設計・解析の支援、実際の製作や実験作業の代行業務などを行っている。その中で、物理実験の検証用に必要となる道具や部品の作成に3Dプリンタが活用されている。
「放射線シミュレーションにおける3Dグラフィクスの応用」
計算化学センター 村上助教
高エネルギー実験、宇宙工学、医学など幅広い分野で利用されているシミュレーションツールキットである「Geant4」(http://geant4.cern.ch/) を可視化するライブラリを紹介。KEKでは検出器の構造が適切に実装されているかのチェック、粒子の飛跡・相互作用などを確認するために可視化を行っている。
「3Dプリンタを駆使したビジネス/サービスの取組みと活用・提供事例および今後の展開」
凸版印刷 永野武史
凸版印刷では、3Dデータ活用の取り組みとしてデジタルアーカイブ事業を進めている。3Dデータアーカイブは印刷技術の延長線上にあり、従来の紙メディアへの印刷で培ったカラーマネジメント技術と高精細デジタル化技術をもとに、貴重な文化財(空間、文物、構造物)を3Dデータとして保存することで、劣化や消失といった様々なリスクに備えることができる。計測の方法は一般的な非接触光学方式によるものだが、色彩計測にも取り組んでおり、カラーマネジメントにより色管理をされたテクスチャ用の写真を別途撮影することで、より高精細な記録方法を実践している。
「小型3Dプリンタへの取り組み」
武藤工業 足立幸雄
武藤工業では大型印刷機やCAD用プロッタに加えて、3Dプリンタも扱っている。最近では紫外線を照射することで固まる特殊な樹脂を利用して造形を行う3Dプリンタを販売しており、材料費が安価かつ高速で造形が行えるという特徴を持つ。 現在の3Dプリンタで成果物を得るためには、使用者がパラメータを微調整して試行錯誤を繰り返さなければならず、ノウハウが必要となっている。今後は誰でも利用できる装置を開発することが、メーカとしての目標となっている。 |
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