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vol.4
スポーツ文化評論家 玉木 正之 (たまき まさゆき)
プロフィール
 1952年京都市生。東京大学教養学部中退。在籍中よりスポーツ、音楽、演劇、
映画に関する評論執筆活動を開始。小説も発表。『京都祇園遁走曲』はNHKでドラマ化。静岡文化芸術大学、石巻専修大学、日本福祉大学で客員教授、神奈川大学、立教大学大学院、筑波大学大学院で非常勤講師を務める。主著は『スポーツとは何か』『ベートーヴェンの交響曲』『マーラーの交響曲』(講談社現代新書)『彼らの奇蹟−傑作スポーツ・アンソロジー』『9回裏2死満塁−素晴らしき日本野球』(新潮文庫)など。今年9月に最新刊R・ホワイティング著『ふたつのオリンピック』(KADOKAWA)を翻訳出版。TBS『ひるおび!』テレビ朝日『ワイドスクランブル』BSフジ『プライム・ニュース』フジテレビ『グッディ!』NHK『ニュース深読み』など数多くのテレビ・ラジオの番組でコメンテイターも務めるほか、毎週月曜午後5-6時ネットTV『ニューズ・オプエド』のMCを務める。
公式ホームページは『Camerata de Tamaki(カメラータ・ディ・タマキ)
〈eスポーツ〉は、はたしてスポーツと言えるのか?
テレビ画面を見つめてコントローラーをカチャカチャと動かすコンピューターゲーム。それがオリンピックの正式競技(オフィシャル・スポーツ)になるかもしれない、という動きを貴方はどう思いますか?

冗談でしょ!と思わず口に出して叫んでみたくなった事件が、スポーツ界に起きている……といっても、日本の女子体操の暴力問題やパワハラ問題のことではない。

その問題も、日本のスポーツによくある構造的欠陥と言えるので、いずれ取りあげたいと思う(朝日生命体操クラブという一クラブが日本の女子体操界を支配しているという構図は、読売巨人軍という一球団が日本のプロ野球界を動かしているという構造とそっくりですからね)。

しかしそれ以上に、最近のスポーツ・ニュースで私が驚いたのは、“eスポーツ”が世界的に大流行し、再来年の東京オリンピックの4年後、2024年オリンピック・パリ大会では正式競技に採用される可能性が高まった、という報道である。

eスポーツとは、エレクトロニック・スポーツ electronic sports の略で、電子工学(エレクトロニクス) electronicsを利用した競技のこと。早い話が、コンピューター・ゲームのことだ。つまり、テレビ画面に現れる動画を見つめながら、リモコン(リモート・コントローラー)をカチャカチャ動かし、画面上に現れる敵(対戦相手)を倒したり、対戦相手よりも先に宝物を見つけ出したりするゲームのことで、それをオリンピックの正式競技に採用しようというのである。

コンピューター・ゲームが、はたしてスポーツと言えるのか? と首を傾げる人は少なくないだろう。が、スポーツ sports という言葉の原義(本来の意味)に従えば、それはけっしておかしなことではない。

スポーツとは、もともとラテン語のデポルターレ deportare から生まれた言葉で、それは「日常の労働や仕事から離れた遊びや祭りの非日常的時空間」を意味していた。その言葉が中性フランス語でディスポルト disport と変化した。 ディス dis もポルト port も「離れる」という意味で、そこから port は、離れてゆく場所=港という意味にもなった。
そこで何から「離れる」のかというと、やはり労働や仕事の日常生活から離れることで、だから今でも英和辞典で SPORTS という言葉を調べてみると「運動、競技、体育」といった意味のほかに、「娯楽、遊び、冗談、おふざけ、非日常、祭り……」といった言葉も並んでいる。

ということは、テレビ画面を見つめてコントローラーをカチャカチャと動かすeゲームも、労働や仕事のように何かを創り出したり産み出したりする作業ではなく、立派なスポーツの一種と言えるのだ。

今年インドネシアで開催されたアジア大会ではボウリングや競技ダンス(社交ダンス)のほかに、コントラクト・ブリッジ(4人でテーブルを囲んで行うトランプのゲーム)が正式競技として実施され、日本からは72歳の女性選手(中尾共栄(なかおともえ)さん)が代表選手として参加した。

またアジア大会では、チェスやビリヤードのほか、囲碁や象棋(シャンッチー)=中国将棋が正式競技として実施されたこともあった。

2年後の東京五輪では、サーフィン、スポーツクライミング、ダイヤモンドゲーム(野球・ソフトボール)、空手、ローラーボードの5競技が特別正式採用競技に選ばれたが、そのとき惜しくも落選はしたが、コントラクトブリッジのほかに、チェスやダーツなども立候補し、スポーツの一種として採用の可否が審査されたのだった。

だからテレビ画面に集中しながらリモコンをカチャカチャと動かすeスポーツも、疑いなく立派なスポーツの一種としてオリンピック競技に選ばれてもオカシクナイ……などという書き方は、eスポーツの競技者(ゲーマー)に対して失礼極まりない表現といえるかもしれない。何しろ彼らは、インターネットでつながった相手と、延々数時間(4〜5時間も!)対戦するのだ。

そのため一流のゲーマーたちは常日頃からランニングなどでスタミナを身につけ、指先や腕や腰を強くする筋力トレーニングにも励んでいるという。けっしてソファに寝転んでポテトチップスをツマミながら行える競技ではない(らしい)のだ。

本コラムをここまで読まれた人のなかには、だったら麻雀(マージャン)だってオリンピックの正式競技にできるじゃないか、と思われた(昭和生まれの)方もおられるかもしれない。なるほどスポーツの原義に照らせば、麻雀も立派なスポーツの一種で、オリンピック大会の決勝に進んだ日中米韓の雀士(じゃんし)が卓を囲み、長時間の闘いの最後に、「サア、ここでニッポン聴牌(テンパイ)です! 壱四七(イースーチー)どれかを積もれば逆転金メダル!」などとなれば(麻雀ファンは)相当興奮するだろう。が、麻雀にオリンピックの呼び声がかからず、eスポーツが話題になるのは、ひとえに市場(マーケット)の問題、つまりはカネの問題だ。

現在、世界のeゲーム界にはプロのゲーマーが千人以上も存在し、賞金総額が20億円を超す世界大会も開催され、そのような大会には一流のプロ競技者が多数集まり、1万人以上の観客も押し寄せ、体育館のような広い会場に設置された大型スクリーンに、競技の模様が映し出される。そして素晴らしい技が飛び出したときには−画面のなかの競技者の分身(アヴァター)が高得点を叩き出すような見事な動きをしたときには−会場はサッカーや野球の観客席と同様の大歓声と大拍手が湧き起こるという(麻雀には1万人の観衆など集まりませんからね)。

これほど世界的に人気のある−しかもIOC(国際オリンピック委員会)が最もアピールしたい若者たちに人気の高いeスポーツを、正式競技に取り入れようとしているのはオリンピックだけではない。FIFA(国際サッカー連盟)も「eサッカー大会」の開催を考え、日本のプロ野球も「eプロ野球リーグ」の開催に着手するという。

そんなeスポーツ人気が広まれば、いずれ 学校の部活(課外活動)にもeスポーツ部が生まれ、中高生は放課後コンピューターゲームに励んで「eスポーツ甲子園大会」を目指し、大学生や社会人はプロを目指して毎日コントローラーをカチャカチャ……。はたして、これでいいのか?と首を捻る小生は、確かに古臭い年寄りになってしまったようだ。

しかし……最近アメリカ・フロリダ州のeスポーツ大会で、トーナメントに敗れたゲーマーによる銃の乱射事件が起きた。通常のスポーツ大会では起きたことのない凄惨な事件とeスポーツとのあいだに、因果関係があるのかどうかは知らない。が、eスポーツもスポーツならば、それに打ち込むゲーマーたちにも相手をリスペクトするスポーツマンシップが自然に備わることを信じたい。

 
 

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