設定していない荷重がフレーム計算時に考慮される
U型擁壁に土圧と地盤反力しか作用しない設定の場合、これらは全て分布荷重となるはずですが、フレームへの荷重の載荷状態を確認すると分布荷重の他に集中荷重が作用している場合があります(図1赤枠)。また、地盤反力は鉛直上向きの分布荷重となるはずですが,水平方向の分布荷重として考慮される場合があります(図1青枠)。これらはいずれも設計者が意図して考慮している荷重ではないため、説明を求められるケースが多々あると考えられます。
そこで、今回はこれらの荷重の意味や考え方について解説します。
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図1 フレーム荷重 |
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軸線端部の集中荷重
フレーム計算を行う際は、躯体形状を元に構成される骨組みでモデル化します。
図2はこのモデル化を表したものですが、モデル化すると図のように幅,高さともに小さくなります。また、図に示されている荷重図は地盤反力を表していますが、底版全幅に作用する地盤反力をこの骨組みに載荷させようとすると、載荷できない範囲が発生することになります。
プログラムではこの載荷できない範囲の荷重を軸線外荷重と呼んでいます。この軸線外荷重は、側壁設計時においては結果に影響を与えることはありませんので、側壁設計用のフレーム計算では無視しても問題はありません。
しかしながら、底版設計時のフレーム計算においては無視するべきではありません。通常、底版設計時に考慮する地盤反力は安定計算時に算定されたものを利用します。安定計算時には骨組みモデルという考え方は存在せず、実際の躯体形状をそのまま考慮した荷重計算を行いますので、この状態で算定された地盤反力をフレーム計算に用いる場合は、軸線外荷重も考慮しなければ整合性がなくなります。そのため、軸線外荷重を集中荷重に換算して、図2のように軸線の端部に作用させています。
地盤反力以外でも、衝突荷重,風荷重,土砂高さ>躯体高さの場合の土圧など、躯体に直接作用しない荷重や軸線の範囲内に作用させることのできない範囲が生じる荷重については、全て集中荷重に換算して軸線端部に作用させています。
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図2 モデル化 |
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水平方向の地盤反力
左右側壁の高さが異なる場合など、水平力が釣り合っていない荷重状態では、支点に水平反力が生じ水平方向を拘束する支点位置によって断面力が変化します。
しかしながら、実際には支点は存在しないわけですから、フレーム計算で便宜上設けている支点には支点反力が生じないようにした方が合理的であると考え、支点反力が生じないように左右の水平力の差分を軸線幅で除した値を底版軸線に伝達させています。これを水平方向の地盤反力として表示しています。安定照査上は考慮されません。
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図3 水平方向地盤反力 |
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