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 ●xpswmm 総合情報 Vol.9

●二次元氾濫解析におけるビルのモデリング
 平成17年の水防法一部改正により、浸水想定区域の指定・公表を行う河川が、これまでの洪水予報河川(222河川)から、主要中小河川(約2,200河川)まで拡大、洪水ハザードマップがこれまでの努力目標から義務付けへと位置づけられたのに併せて創設された、平成17年度〜21年度の5箇年に限定された国庫補助制度もいよいよ残り1年間となり、都道府県による洪水ハザードマップの調査・作成がピークを迎えてきている頃と思います。
 今後、国により洪水予報河川(222河川)に対しても、現在進められている主要中小河川(約2,200河川)の洪水ハザードマップと等価な解析精度で行った氾濫シミュレーションにより、洪水ハザードマップの作成が着手され、両者の整合が図られていくことが想定されます。このような背景から、端的に二次元氾濫解析と言っても、一律なモデリングのみでの表現では実現象や他モデルとの整合を図ることは困難であり、実際の建物や水理構造物等とそれに対する水の挙動の表現において、複数のモデリングが望まれます。xpswmmでは、この二次元氾濫解析における現象に対する多様化した表現を行うことができます。例えば、構造物の表現には以下に示すような機能があります。

  (A) 粗度係数により浸入し難さで表現
  (B) 非アクティブエリアによる水が完全に浸入しないとした表現
  (C) フィルエリアによる越流する高さを設けた表現
  (D) 粗度係数とフィルエリアとの双方を設定した高さと粗度とによる表現

▲氾濫解析における構造物のモデリング

 粗度係数によるモデリングでは、非常に遅い流速で氾濫水が通過する構造物の表現に適しています。エリアの高さはGLと同標高になりますが、1階エントランスが広く設計された昨今の高層ビルの表現に適しています。
 非アクティブエリアによるモデリングでは、氾濫水の水深によらず、水が透過することができない構造物を表現でき、不貫通性のビルの表現に適しています。
 フィルエリアによるモデリングでは、構造物天端の越流している氾濫水を表現できます。フィルの高さは、最上階の標高やその他のビルを表現するのに適当な標高を設定します。このフィルエリアには高さのみでなく、粗度係数を設定することもでき、より実現象に即したシミュレーションを行うことができます。


●二次元氾濫解析における貯留施設のモデリング
 計画降雨を上回る昨今の局所集中豪雨の頻発により、従来の排水インフラに依存した雨水排除のみでは対応しきれない現状を踏まえ、雨水の排水経路を長くする雨水貯留施設を組合せた取り組みが推進されてきています。こうした取り組みは、超過洪水等に対して有効に機能し、浸水に対する安全度を相対的に高めていくことになり、貯留方式による浸水対策は今後も増していくものと考えられ、解析モデルにおけるこれらの表現の多様化も求められてきます。
 xpswmmでは、二次元氾濫解析における貯留現象に対する表現として、以下に示すモデリングを選択または組合せたシミュレーションを行うことができます。

 1Dノードでの貯水効果は、貯水容量を水深-表面積曲線を含む様々な貯留関数により表現します。1Dリンクでの表現は、例えば貯留管のような下水道施設の表現に適します。1D/2D解析における貯留施設の設定については、TINにより既に窪地になっている箇所に、1Dノードで貯留効果を表現する際には、ダブルカウントにならないよう、下図▲印で示す1Dノードで表現した貯留施設の実際の周囲を1D/2Dインターフェース(赤線)で囲み、1D/2D接続(桃色線)で囲む入力要領になります。

▲氾濫解析における貯留効果のモデリング

●貯留施設を含む浸水対策施設施策における意思決定
 近年、公共事業全般に、そのあり方の変換期を迎えてきており、その一つに住民参画が挙げられます。河川行政では、平成9年の河川法改定により、河川整備の策定における住民意見の反映等が規定されました。下水道行政では、平成19年に(社)日本下水道協会から住民参画による合意形成手法の一つである下水道PI(パブリック・インボルブメント)が導入されました。
 上記の雨水貯留施設については、公園や学校等の住民の公共施設に対するオンサイト貯留が主となるため、施設の存在の認知、溜まった雨水の活用のみでなく、洪水制御や初期汚濁負荷軽減対策等についての認知度を深めてもらい、安全度の設定や整備箇所についての選択について地域住民の意向も踏まえた施策決定の機会が今後増えてくるものと想定されます。
 特に下水道事業においては、住民に直接経費負担を強いる点から、PI導入においても他の公共事業に比べて情報の質、量の向上が求められます。これまでは事業者中心で行われてきた政策決定過程への、住民の主体的な参画に際してxpswmmのアニメーション機能による施設効果の理解や、Road for xpswmmによるVRによる可視化は、この下水道PIに対する非常に効果的なツールとして機能し、住民との合意形成を図りながらより質の高い施策が策定されることが期待されます。当社FORUM8では、このような解析とVRによる合意形成とを組合せたツールの開発により、行政と住民、企業との連携を支援していきます。

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